記事公開日:2021年xx月xx日
「STEAM・IB教育」ユニットは,2020年度にリニューアルされたEVRIの研究ユニットの1つであり、STEAM教育サブユニットとIB教育サブユニットから構成される。
このユニットでは、EVRIのミッションとヴィジョンを実現するために、知識を生成し社会を形成する「子ども」に着目し、知識を生み出し多様な知識を使いこなすプロセスと環境をデザインする研究を推進している。
近年の社会は以前にもまして目まぐるしく変化・多様化している。経済・産業のグローバル化、高度情報化などを背景に、公教育の役割も変わりつつある。「SDGs」「Society 5.0」など新しい概念や用語が続々と登場し、学校では教える内容も領域も増大している。国際的な留学やインターナショナルスクールの増加など、国や言語・文化を越えた教育を志向する動きも強まっており、国家や企業もこのような動きを後押ししている。
この変化する社会と教育制度に対して、また国際化・多様化する子どもたちに対して、我々はどのようなカリキュラムや授業実践で応えていかなければならないのだろうか。EVRI創設以前から関連する複数の研究プロジェクトを推進してきた、ユニットリーダーの棚橋健治教授(以下、継承略)にお話を伺った。
本ユニットリーダーである棚橋は、長年、社会科教育学において評価論や歴史教育論をリードしてきた研究者である。旧・IB教育クラスタでもリーダーを務め、EVRI創設以来5年にわたって、専門とする歴史教育のほか、言語教育、自然科学教育、芸術教育と連携しながら、とりわけIB教育に注目し研究を行ってきた。その蓄積をもとにユニットとしてSTEAM教育へと研究の射程が拡がった現在、その意義と取り組みを語っていただいた。
2019年度までの旧「カリキュラムユニット・IB教育クラスタ」の説明はこちら(画像をクリックしてください)。
引き続き、棚橋にIB教育サブユニットの話を伺っていく。IB教育の研究を通して、これからの日本の教育をどのように変革することができるのか。
棚橋をリーダーとするIBサブユニットのメンバーは、旧・IBクラスタ時代から大学院生らとともにIBカリキュラムの研究・開発を行ってきた。これまでに、以下のような成果を生み出している。
〇歴史教育研究について
①「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム歴史教育研究グループ編『IBDP「歴史」教師用ガイド 指定学習項目3・世界規模の戦争への動き:事例研究1 東アジアにおける日本の拡張政策』,2020年.
②「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム歴史教育研究グループ編『IBDP「歴史」教師用ガイド/生徒用資料集 世界史トピック11・20世紀の戦争の原因と結果【原因編】』,2018年.
③棚橋健治・兒玉泰輔・茂松郁弥・山本稜・吉川友則「国際バカロレアDP日本語科目「歴史」の授業開発ー世界史トピック「20世紀の独裁主義的国家」ー」, 全国社会科教育学会第65回全国研究大会(於:兵庫教育大学),2016年.
④玉井慎也・高松尚平・真崎将弥・渡邉竜平・奥村尚・孫玉珂・荒木詩織・田中亮太・原田歩・ 藤岡柚衣・棚橋健治「史資料の批判的研究方法の獲得に焦点化した探究型歴史学習(1) ―IBDP「歴史」における「指定学習項目」単元の開発原理―」,全国社会科教育学会第68回全国研究大会(於:島根大学),2019年.
⑤玉井慎也・高松尚平・真崎将弥・渡邉竜平・奥村尚・孫玉珂・荒木詩織・田中亮太・原田歩・ 藤岡柚衣・棚橋健治「史資料の批判的研究方法の獲得に焦点化した探究型歴史学習(2) ―IBDP 単元「東アジアにおける日本の拡張政策」のレッスンプラン―」,全国社会科教育学会第68回全国研究大会(於:島根大学),2019年.⑥青本和樹・植野裕行・久保美奈・篠田裕文・山田夏子・棚橋健治「IBDP「歴史」における「指定学習項目」の授業開発-歴史学習における史資料の読解・分析の一例として-」, 全国社会科教育学会第67回全国研究大会(於:山梨大学),2018年.
〇科学教育研究について
①「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム理科教育研究グループ編『理科教育研究グループ資料集(2019)』,2020年.
②「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム理科教育研究グループ編『理科教育研究グループ資料集(2018)』,2019年.
③西村洸,木下博義「中学校理科におけるスキルの活用に関する研究−国際バカロレア中等教育プログラムに着目して−」,日本教科教育学会第45回全国大会(於:愛知教育大学),2019年.
④靑木理恵,木下博義「中学校理科における資質・能力の育成に関する研究−国際バカロレアの視点を取り入れて−」日本教科教育学会第45回全国大会(於:愛知教育大学),2019年.⑤浦田拓弥・三好美織「理科学習におけるSelf-Directed Learningの成立要件-国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(DP)の分析を通して-」,日本理科教育学会第68回全国大会(於:岩手大学),2018年.
⑥西村洸・佐伯貴昭・木下博義「中学校理科における思考スキルの活用に関する研究ー国際バカロレア中等教育プログラムに着目してー」,日本理科教育学会第67回中国支部大会(於:島根大学),2018年.
〇言語教育研究について
①「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム言語教育研究グループ編『言語教育研究グループ資料集Ⅰ(2018) TOKと「言語と文学」編』2019年.②「IBの理念を踏まえたカリキュラム・授業・評価の開発的研究」チーム言語教育研究グループ編『言語教育研究グループ資料集Ⅱ(2018) 新しい宇高国語科学力評価問題・解説編』2019年.
③木寺祐貴・水田遼介・林藤成美・山元隆春「IBDP「言語A:文学」に関する一考察―学習評価を中心に―」『国語教育研究(広島大学国語教育会)』第60号,pp.10-21, 2019年.
④木寺祐貴・水田遼介・林藤成美・山元隆春「IB(国際バカロレア)「文学」に関する一考察」第59回広島大学教育学部国語教育学会(於:広島大学),2018年.
ユニットメンバーが開発してきた教師用ガイドと生徒用資料集は、EVRI主催のフォーラム等で発表するのにあわせて参加者に配布されてきた。フォーラムはIB校関係者のみならず、IB校でない学校教員も数多く来場したことから、IBのプログラムやそれに基づく実践が教育現場で関心が高いことが伺える。
IB教育サブユニットの活動は、これらの教材を作成し配布したのちにも、現場の教師のあいだで徐々に広まってきているようだ。配布した教材やレッスンプランをどこかから聞きつけたり見たりして、実際に「やってみました」という連絡をくれる教師も多いという。
「コロナ渦であっても、実際にIB教育を担っている先生方が独自に使ってくださっているし、そのなかには色々と気づいたことをメールで教えてくださる先生もいらっしゃる。これからも子どもたちが純粋に「面白い」と思う授業づくりに貢献できる研究をしたいですね。」(棚橋)
また、IB認定校である広島県立広島叡智学園中学校・高等学校との共同研究プロジェクトの一環として、MYP歴史教育分野で平和教育に関する実践を行った。
EVRIが広島叡智学園と取り組んでいる共同研究プロジェクトの紹介ページはこちら(画像をクリックしてください)。
本サブユニットの取り組みがIB校やIB教育に関心のある教師に少しずつ認知され、EVRIがIB研究の拠点となることで、教師が自身の現場で変革を起こす存在となることを支援したい。棚橋の話からは、そのような意気込みを伺うことができた。
※準備中
ここには、本ユニットに関連して開催されたセミナーやイベント等の成果を掲載する。
科学技術振興機構(JST)によって運営されている,STEAM教育の魅力を発信する学習者・教育関係者向けウェブサイト「ScienceTEAM(サイエンスティーム)」にて,STEAM・IB教育ユニットの取り組みが紹介されました。「STEAM教育に取り組む大学等」のなかで紹介されています。
EVRIは、自らのミッションとヴィジョンを達成するために、共同事業、共同研究、受託研究および講演等をお引き受けいたします。
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