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【2022.03.05】定例オンラインセミナー講演会No. 109「ポストコロナ第3フェーズ第4回 「学校休業」からの2年間をどう総括するか ―地域・学校・社会を「教育」でつなごう―」を開催しました

公開日:2022年03月14日 カテゴリー:開催報告

.開催報告

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2022年3月5日(土)に,第109回定例オンラインセミナー「ポストコロナ第3フェーズ第4回 「学校休業」からの2年間をどう総括するか ―地域・学校・社会を「教育」でつなごう―」」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に58名の皆様にご参加いただきました。

「ポストコロナ第3フェーズ」シリーズは,「「コロナ」から学校教育をリデザインする学術知共創の可能性と課題」と称する共同研究プロジェクトの一環で開催される連続セミナーです。今年度は,「コロナと教育」に関する国内外の文献調査および「コロナと教育」に関する大規模アンケート調査等を実施するとともに,教育学以外の分野とも連携することで学術知を共創し,その成果を6月・9月・12月・3月の計4回のセミナーで報告してまいりました。

シリーズ第4回となる本セミナーでは,全国一斉の「学校休業」から2年間経ったいま,子どもたちがいない学校で何ができるのか,コロナで人と物理的に距離を取ることになったなか,人と地域と社会の「交流」はどのように変化してきたのか,何をどのように支援することが未来に繋がるのかを明らかにすることに焦点を当てました。そのため,法曹界や教育行政に関わる方や地元の新聞記者の方といったような,一見教育現場から離れた立場にいる人々との「対談」を通して,コロナ禍の2年間を振り返っての働き方の変化や悩み,教育に関わって考えたことに関して報告が行われました。

はじめに,吉田成章准教授(広島大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。学校を介しての地域と社会の「交流」が希薄になってきているという問題意識が述べられました。それぞれの対談者の紹介と,多様な立場からコロナ禍の2年をどのように振り返り意見を交わしていくかという会の方向性がセミナーの参加者全体で確認されました。

次に,濱本信成氏(福山正剛法律事務所),前田有紀氏(前田法律事務所)と岩田昌太郎准教授桑山尚司講師(広島大学)と「対談1」が行われました。まず岩田・桑山より,対談者同士で事前に行われていたミーティング(2/19)の中から,濱本氏と前田氏とのミーティングで出てきた印象的な3つの言葉「法曹界のオンライン利活用」「合理性」「教育の機会均等と格差」が取り上げられ,それらの言葉をめぐって対談が進んでいきました。オンライン化により移動に係る時間の削減などメリットもある一方,対面であれば可能なちょっとしたやり取り(「ごにょごにょタイム」)が制限されたことや,相手の表情や様子を十分に見取れないなどの難しさがあることが挙げられました。また,人の意思決定や行動には感情の影響が大きく,効率や合理性だけでは物事を進められないこと,画一的な正解はなく,その人その人にとって解決方法は異なることも紹介され,教育と繋がる点が多いと感じました。その他,学校の授業に講師として関わられたご経験をもとに,学校内の規則について外部の立場から関わる難しさがあるとされながらも,生徒と教師が一緒に対話を繰り返していくことの重要性などを示していただきました。

 

 

 

続いて,松村智由氏(湯本豪一記念日本妖怪博物館館長,前・三次市教育長)と滝沢潤准教授棚橋健治教授(広島大学)と「対談2」が行われました。まず,滝沢より,教育長としてコロナ禍の2年間はどのような方針をもって教育行政の仕事をすすめていたのかについて問いかけられました。これに対し松村氏より,コロナ禍で教育を止めないための予算の確保,ICT化への対応や「学校現場での子どもの生存確認」ということを教育現場と一体感をもって取り組んできたことが述べられました。続いて,コロナ禍での三次市における教育の強みや課題で浮かび上がったことは何かという質問がなされました。松村氏より,通常の教育活動が難しかった中でも,学校と教育委員会がお互いを頼りにしあう体制づくりをすることを通して,子どもの学習・生存の保障を最大限意思疎通しながら考えていくことができた経緯が述べられました。最後に,学校の統廃合が進む動向と小規模の学校の可能性と展望をいかに描けるかについて問いが出されました。松村氏より,三次市として育んできたICT活用の促進や教育の土壌が,コロナ禍では困難さではなく良さとして発揮されたということが回答されました。棚橋からは,コロナが収まってもICT化は進み,今後も学校にどのようにICTを取り入れていくかはいつでも問われること,さらに今回の対談で,学校規模が小さく人員に限りがあってもオンラインの利活用を教育活動とうまく組み合わせながら進めるための示唆を得たことが述べられました。最後に松村氏より将来子どもたちが三次に帰ってきたい,という気持ちになるためには地域を知ることが重要であり,そのために様々な施設を活用して体験的に三次を知ったり,三次市と交流のある海外都市とICTを活用して交流したりという取り組みを続けることで,子どもたちが成長し,将来,三次を盛り上げていく大人になってほしい,という願いが述べられました。

 

 

さらに,新本恭子氏(中国新聞社)と吉田成章,川口隆行教授(広島大学)とによる「対談3」が行われました。取材形式が対面からオンライン形式になったことから議論が始まり, オンラインを用いることによって距離を超えてつながれることが可能になるといったメリットがある一方で,オンライン取材ゆえの難しさも指摘されました。例えば,対面取材では存在した,本題の取材が終わった後のちょっとした雑談の時間が取りにくくなったこと,取材先の建物の雰囲気などから取材相手を理解したり,掘り下げる間合いなどをつかみ取ったりすることが難しいといった具体的な体験談が紹介され,対談1の法曹界の実態と重なる点が多いことが示されました。また,たとえ対面取材であっても,マスク着用の影響が大きく,表情から得られる情報が少なく分かりにくくなってきたことが述べられ,吉田,川口からも,言葉が持つ力が大きくなってきているのではないか,という点が指摘されました。その後,新本氏が担当された記事を時系列に振り返り,コロナ禍の学校の戸惑いや挑戦,課題などが紹介されました。それらの記事を出発点に,オンラインでの取組の良さと見えてきた難しさ,超えられないもの等が複数の場面を取り上げて議論されました。複雑さを抱えた現実を,多様な切り口から毎日伝えていく「新聞」の立場についても新本氏のお考えを紹介していただきました。

 

また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「夫婦関係の紛争解決において,子どもの教育に関してどのような点が争点となるのか,どのような点が考慮されるのか」,「子ども,保護者,働く教員など,それぞれの立場にバランスのとれた決定を各学校で行っていくためにどのようにすればよいか」といった質問や,「主権者教育という側面から法教育を進めるべきであり,校則を教材として,ルールは自分たちでコントロールするという生徒を育成して行く必要がある」といった意見も出されました。子どもたちが経験したことをセンシティブに捉えながら,大人自身が経験したことを整理し,教育活動を構想していかなければならないこと,またそのためには,関わり,つまりネットワーク構築が求められ,その責務をどう果たしていくのかについて参加者全体で理解が深まりました。

以上の発表を受けて,棚橋からは,これまでの社会の価値観や考え方,つまり社会の在り方を社会全体で考えていく変革期に差し掛かっているとの指摘がなされました。それは新たな価値観,新たなコミュニケーション,新たな人間関係といった正解のない価値観についての論議や葛藤を経験していることを意味しており,このような議論を続けることを通して新たな社会を作っていく必要性があると,議論を締めくくりました。

今回のセミナーを踏まえ,EVRIは以下のような政策提言を構想してします。

 

    ①「教育」に関わる仕事の多様性と多層性を踏まえて,公共圏における教育に関する議論を活性化していくことの重要性の提起

 

    ②子どもの社会における教育的経験の多様性と多層性を踏まえて,地域・家庭・学校をつないでいく「教育」を模索することの重要性の提起

 

今後もEVRIでは,学校教育のリデザインから教育そのもののあり方を検討することをテーマに引き続き検討してまいります。

 

Ⅱ.アンケートにご協力ください
Ask for your opinions

多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。

Thank you for participating, we are kindly ask you to answer few questions regarding this semianar.
please click here so that you will find the page for questionary.


*定例オンラインセミナー講演会No. 109の告知ポスターはコチラです。


教育学研究科HPにも掲載されています


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