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2019.12.12 更新
2020.03.19 更新
本ページでは、広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)が、広島県立広島叡智学園中学校・高等学校との研究協力協定に基づき進めている様々な事業について紹介します。
広島大学インキュベーション研究拠点教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は、平成30年4月24日に広島県教育委員会教育長室にて、広島県立広島叡智学園中学校・高等学校(以下「叡智学園」)と研究協力に関する覚書を締結しました。この覚書に基づき、EVRIと叡智学園は、双方の教育・研究の充実を図ることを目的に研究協力を推進していくこととなりました。教育カリキュラム等の研究について相互に連携を行い、その成果を広島大学における教育学・心理学・教科教育学等の研究拠点形成のための諸活動に活かすとともに、叡智学園をはじめとする広島県における学校教育の発展に貢献していくことを目指します。
叡智学園は、“社会の持続的な平和と発展に向け世界中のどこにおいても地域や世界の「よりよい未来」を創造できるリーダーを育成すること”と“「学びの変革」の目指すべきモデルとなること”をヴィジョンとして掲げ、2019年4月に県立の併設型中高一貫教育校として開校されました。
2019年度より、教育の専門家ユニット・IB教育クラスタの活動に関連して、冒頭で紹介した本プロジェクトの目的の一つである「1.教育カリキュラムとその指導法・評価法の開発・改善」のために、叡智学園未来創造科の一領域「Global Justice」において、カリキュラムの共同開発・共同実践に取り組むこととなりました。
本プロジェクトでは、金鍾成の単元理論(金鍾成(2016)「対話型」国際理解教育への試み―日韓の子どもを主体とした「より良い教科書づくり」実践を事例に―、 社会科研究、84巻、 pp. 49-60等参照)に基づき、日米の子どもたちが「より良いヒロシマ教科書」を作成しています。
叡智学園の中学生は、 【奇数】ラウンドの担当です。Round1・3・5を通して米国側へ教科書の方向性・教科書の具体を提案していきます。米国の小学生は、【偶数】ラウンドの担当です。Round2・4・6を通して日本へ教科書の方向性・教科書の具体を提案していきます。
これ以降、叡智学園が担当した奇数ラウンドを詳細に見ていきます。これらの実践は、プロジェクト代表者である草原和博が行いました。
2019年11月2日と16日に、【Round1】を行いました。【Round1】では、叡智学園の中学生が「より良いヒロシマ教科書」を提案します。
第1回目は、新たな教科書を提案するための準備として、日米の歴史教科書に組み込まれたjusticeの論理を読み解く3時間の授業が行いました。
1時間目では、未来創造科「Global Justice」の単元開きとして、本単元の目標でもある「Peace Makerになる」ことについて考えました。これまで学んできたヒロシマについて振り返る活動や日本人留学生として話題となった古賀野々華さんの新聞記事を読む活動を通して「Peace Makerってどんなひと、どんなこと」なのかを問いました。
2時間目では、日米の歴史教科書に書かれた「ヒロシマ」と「第二次世界大戦」の記述を読み比べて記述内容をウェビングマップ化していき、どのような違いがあるのかを話し合いました。
3時間目では、2時間目の違いが「なぜ起きるのか?」について話し合い今後教科書を執筆していく上での方向性を検討しました。さらに「教科書」が国民形成で果たす役割を追究し、集合的記憶と教科書との関係をまとめていきました。
第2回目は、「ヒロシマ」をテーマにした歴史教科書を叡智学園の中学生自ら作成する3時間の授業が行いました。
1時間目でまず、班別に絶対に教科書を入れたい事項を8個から10個挙げて、その事項の関係性をウェビングマップ化していきました。その後、クラス全体にグループ学習での成果を共有し、教科書執筆の方向性を探っていきました。
2時間目では、教科書に入れたい事項を絞り込んでいきました。草原和博ファシリテートのもと見出しとストーリーを練り上げていき、学習課題に関する合意もしまし、教科書執筆の方向性を決定しました。
3時間目では、前時までに決まった学習課題・ストーリーラインに基づいて、班で担当箇所を決めて分担執筆していきました。文章だけではなく、文章の周りに位置づく写真や資料も自分たちで決定していき、Text book1を完成させていきました。
今回、作成した教科書は英語に翻訳され、米国カリフォルニア州の小学校に手渡されます。米国の小学生は、【Round2】として叡智学園が作成した教科書を徹底的に批評していきます。
*レターも合わせてご覧ください。
【EVRIレターNo.64】
この実践については、叡智学園のHPにも掲載していただきました。
2019.12.13. 広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)と連携して授業を実施しました
2020年12月に米国の小学生が【Round2】として叡智学園が作成した教科書を徹底的に批評し、新たな教科書(Textbook2)を提案しました。それを受け、2020年1月11日に、【Round3】を行いました。【Round3】では、叡智学園の中学生が米国より送られてきた新たな「より良いヒロシマ教科書」を読み、意見書を書きます。
1月11日 :「日米教科書プロジェクト(3)」
広島叡智学園中学校・高等学校の生徒に授業をする草原和博
1時間⽬は、⽶国側の教科書を読んで、「それを受け⼊れることができるか」をめぐってTake a stand (自分の立場を表明)し、みんなで米国の教科書を分析していきました。
2時間⽬は、叡智学園が提案した教科書と⽶国の⼩学⽣が提案した共同教科書を⽐較しながら、類似点と相違点をカードに書きだし、違いが⽣じた理由を考察しました。
3時間⽬は、類似点や相違点をもとに⽶国の⼩学⽣が提案した教科書のPROS(参考にしたいところ)とCONS(改善してほしいところ)を話し合いました。その後、⽶国の⼩学⽣に伝えるべきPROSとCONSを計10個選び取り、それに基づいて意⾒書を執筆しました。
今回作成した意⾒書は英語に翻訳され、⽶国カリフォルニア州の⼩学校に⼿渡されます。米国の小学生は、【Round4】として意⾒書を読み、教科書の修正・改善を行います。
*レターも合わせてご覧ください。
【EVRIレターNo.66】
【Round4】では、叡智学園の中学生が送った意見書に対して米国の小学生が返事を書いてくれました。それを受け取り、2020年2月8日に【Round5】として「日米教科書プロジェクト(4)」を行いました。
2月8日 :「日米教科書プロジェクト(4)」
今回は,⽶国カリフォルニア州グレンドラ学校区からレベッカ(Rebecca Valbuena)先⽣をお招きし「⽇⽶教科書プロジェクト(4)」と題して授業を⾏いました。レベッカ先⽣はこれまで叡智学園と⽶国の⼩学校が共同作成してきた「ヒロシマ教科書」の⽶国側の⼩学校にて勤務される先⽣です。
広島叡智学園中学校・高等学校の生徒に米国の小学生からの意見書を渡すレベッカ先生
レベッカ先⽣から叡智学園が構想した「ヒロシマ教科書」に対して⽶国の⼩学⽣から出された8つの意⾒が話されました。その後,⽶国の⼩学⽣の8つの意⾒に対して,「同意します」「反論します」という⽴場性を⽰した上で,意⾒書を書きました。最後に,⽶国側の意⾒に基づいて⾃分たちが作成した教科書を⾒直し,実際に修正・追記していくことで、Textbook3が完成しました。
今回で、叡智学園の中学生が執筆する⽇⽶共同「より良いヒロシマ教科書」は最後となります。作成した意⾒書・教科書は英語に翻訳され、⽶国の⼩学校に⼿渡されます。米国の小学生は【Round6】として教科書(Textbook4)を完成させます。
*レターも合わせてご覧ください。
【EVRIレターNo.75】
EVRIは、引き続きGlobal Justice「B:概念プロジェクト」「C:資料館プロジェクト」単元の指導法・評価法の開発に協⼒して参ります。
2019年度の取組が冊子になりました。
EVRI研究プロジェクト叢書 No.1【平和教育研究拠点形成企画】
「より良い教科書づくり」プロジェクト-広島県立広島叡智学園の未来創造科との連携-が完成いたしました。(2020年3月31日)
EVRIは、自らのミッションとヴィジョンを達成するために、共同事業、共同研究、受託研究および講演等をお引き受けいたします。
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