【2021.01.23】第64回定例オンラインセミナー「ポスト・コロナの学校教育(7)ポスト・コロナの学校教育に要請される数理的思考」を開催しました
Ⅰ.開催報告
広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2021年1⽉23⽇(土),第64回定例オンラインセミナー「ポスト・コロナの学校教育(7):ポスト・コロナの学校教育に要請される数理的思考」を開催しました。⼤学院⽣や学校教員など47名の皆様にご参加いただきました。
「ポスト・コロナの学校教育」セミナーシリーズ第7回,今回のテーマは数理的思考でした。新型コロナ禍をあえて教材としてみて,卒業後においても生きて働く能力や態度の形成を促すことは取り組まれてもよいでしょう。本報告を書いている時点(令和3年2月頭)でもこの感染症拡大は地球規模で収まりを見せていません。だからこそ,結末を知っている題材だけを取り上げて後世の者たちが教訓として学ぶだけではなく,「現象を理解しようと努め」「現象の展開を予測し」「個人レベル・集団レベルでできる裏付けのある対処は何かを問う」ことを当事者として行うことは,数理に関わる知識・技能を駆使することの意味と意義を知る絶好の機会と言えます。
このセミナーでは,数理的思考を次のように規定しました【指標等の意味や意義をある程度以上に利活用でき,判断の根拠にできること。】そして,このような思考力等を養う機関として学校は機能しているのか?という漠然とした問いにアプローチするために,現行の確率教育の刷新を図ろうとする石橋一昴氏(岡山大学)と,諸外国学校教育のパラダイム転換に関心のある早田透氏(鳴門教育大学)の二人を専門家として招きました。
同セミナーはオンライン開催であり,小山正孝教授,影山和也准教授の2名の主催者から今回セミナーの主旨と上記の問いの概説,ならびに日本学術会議による数学教育への「提言」が説明されました。次いで専門家からそれぞれの立場からの講演があり,フロアからの質問を糸口にして講演の理解を深めたり上記問いへの解答の可能性を考えたりしました。
石橋氏の講演では,医療検査の結果を確率的に理解することから話題を起こし(いわゆる精度の問題),その結果がメディアでは数理的とは言いがたい仕方で扱われている様に触れながら,ポスト・コロナにおいて我々が覚悟するべき事柄が次の二つにまとめられました:(i)適切とは言えない数学活用は増加しているがそれらを絶対視できないこと,(ii)メディア等で目にする数値やメッセージに批判的に対処すること。早田先生からは,学校にある制約を改めて問いながら,変わらず学校数学は重要でありながらもその枠組みを変えてみることを恐れない態度の大切さが求められました。したがって,我々は学校数学の限界に向き合うべきであるし,そのためには“学校外”では自然な活動(たとえばインターネット検索によって情報収集したり,その情報の信憑性を色々な仕方で疑ったりすること)にも取り組むべきであることが言われました。
講演後のフロアからは,本セミナーのテーマに沿った興味深い問いが出されました:ある都市の一斉検査は有効な仕方か,そして市民は数理的に考える場合,どう対処するべきか。数学科だけにとどまらない教科の形が問われているように感じられるが,教科の融合等はどのように考えたらよいか。前者の問いなどは典型的ですが,意思決定のためには数理的思考は大きく働くが,現実的に行動する場合には,勘案したほうがよい要因が多くあるためこれらを列挙し重みづけたりすることが求められることが確認されました。また教科の融合についても,やはり“学校内”に収まる限り,そこで得られる知識・技能,共に培う知恵すらも学校という場に根ざしてしまうので,意図的に融合・連携を図るにしても如何にして自分事として問題を仕立て直していくかが鍵になることが言われました。
現実的に我々が突きつけられ直面する問題はあまりに大きく,一人で対処するだけの能力を培うべきなのか,あるいはそれぞれの得意領域を磨いて分業して事に当たる術,すなわち問題解決のための広義のコミュニケーション能力をも育成の射程に入れねばならないのか,学校教育には常に転換が迫られています。これからの学校教育では,ポスト・コロナに関わらず「探究」は一つの鍵言葉ですが,ポスト・コロナだからこそ「探究」として具体に為すべき事や論点が見えやすくなったと言えるでしょう。これまで異領域とされてきた人たちが関わり合うことで新規の知恵が生まれることは,協同することの醍醐味であることが再認識されました。
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。
*第64回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。
同セミナーに関連するプロジェクトページを以下のバナーからご覧いただけます
教育学研究科HPにも掲載されています
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