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PELSTE 2023のテーマ 

“Can we universalize the localized peace education?”

 


0. ご挨拶

PELSTEについて

2019年に広島大学大学院教育学研究科(当時)が、国際的な教育学部のネットワークであるInternational Network of Educational Institutes(INEI)に加盟しました。これを承けて、教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は2020年1月にINEI加盟大学の研究者と連携を深めるべく、新規プログラムとしてPeace Education and Lesson Study for Teacher Educator(PELSTE)を開始しました。このプログラムは、広島大学が強みとする「平和教育」と「授業研究」そして「教師教育者の養成」に焦点をあてて最新成果を共に学び世界に発信する取組です。初回のPELSTE2020では加盟大学の参加希望者の中から5名(イギリス、カナダ、アメリカ、ブラジル、シンガポール)を招聘し、10日間に渡り集中して研修を行いました。

2回目となるPELSTE2021は、COVID-19のために参加者の招聘が叶わず、2021年3月にオンラインで開催しました。オンデマンドのオンラインコンテンツを充実させると共に定期的にオンラインミーティングを開いて、カナダ、アメリカ、ブラジル、韓国、シンガポールからの遠隔参加が可能な枠組みを作りました。また、研修の成果として、これからの「平和教育」と「授業研究」のあり方を国際的な視野から提案するオンラインセミナーを開催し、内外から多くのオーディエンスを得ました。

3回目のPELSTE2022は「教師教育者のための授業研究」にテーマを絞り、引き続きオンライン研修の枠組みを利用して2022年3月に開催しました。

PELSTE2023の開催にあたって

2020年から始まったPELSTEも今年度で4回目を迎えることなります。

広島大学が国際的に先導すべき二つの教育学研究分野として「授業研究」と「平和教育」を取り上げ、海外の教師教育者を招いて研修の機会を集中的に提供するプログラムとして始まったPELSTEですが、過去2回はCOVID-19のためにオンラインで開催せざるを得ませんでした。パンデミックの終息はいまだ見通せませんが、国境を越えた移動も可能となったことから、再び広島の地でPELSTEを開催する決断をいたしました。

PELSTE2023は「教師教育者のための平和教育」にテーマを絞ります。2回にわたるオンライン開催で得ることのできた技術と方法を活かし、まずはオンラインで事前研修行い、来日後に対面だからこそ得られる経験を成果に繋げます。これらの成果はオンラインセミナーとして発信され世界中の方々と共有します。

ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月に始まりました。PELSTE2023を開催予定の2023年2月をもって、侵攻から一年が経つことなります。戦争が終わっていることを願うばかりですが、平和教育には戦時も戦後も重要な役割があります。広島で行われるPELSTE2023の成果が、もたらされてしまった悲惨と不幸を克服し少しでも人々の幸福に寄与するものであることを希望しています。

広島大学教育ヴィジョン研究センター長 丸山恭司

 

1. 目的

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)では、2020年から毎年冬に広島独自のセミナーとして「教師教育者のための平和教育・授業研究会」を開催しています。PELSTE2020は広島でオンサイト開催でしたが、PELSTE2021、2022はパンデミックの影響でオンライン開催となりました。このような困難な状況下で交流を継続できたことは、私たちにとって大変光栄なことでした。

ご存知のように、パンデミックの状況は徐々に落ち着いてきており、海外渡航の制限や条件も徐々に緩和されつつあります。PELSTE2022では授業研究を中心に行いましたので、PELSTE2023では平和教育に焦点を当て、”Can we universalize the localized peace education?” というテーマで実施する予定です。地域の様々な文脈で実施される平和志向の教育活動が、社会に平和を構築する可能性を持っていることを議論します。プログラム中には、博物館見学、戦争遺跡でのフィールドワーク、被爆者・平和教育関係者との対話、授業参観などを予定しています。

 

2. 参加メンバー

PELSTE2023には,INEI加盟の各国の大学より,以下の2名が参加します。

  • Lina Rangel Díaz
    University of Wisconsin-Madison (米国)
    Graduate Student (Ph.D.)
  • Timothy Mark Bush
    University of Melbourne(オーストラリア)
    Lecturer

3. スケジュール

PELSTE2023は,以下の行程で実施されます。

2023年2月20日(月)

「ヒロシマ平和教育者アーカイブ」特設ページはこちら

オリエンテーション・教育学部長への表敬訪問・人間社会科学研究科長への表敬訪問

PELSTE初日となる20日は,まず参加者オリエンテーションを行いました。1週間の行動を共にする参加者やスタッフがランチを囲んで親睦を深めています。その後,松見法男教育学部長,小林信一人間社会科学研究科長にそれぞれ表敬訪問を行いました。松見学部長とは,Díaz氏・Bush氏の出身国や研究内容に関して意見交換が行われました。小林研究科長とは,広島の平和教育の特性や世界各国の教育制度について議論を深めました。

「世界の平和教育者・ヒロシマの平和教育者」事前課題報告会

課題報告会では,来日前に事前視聴した「平和教育者アーカイブ」に基づいて議論が行われました。丸山先生からは今回のテーマである“Can we universalize the localized peace education?”が改めて示され,Díaz氏・Bush氏それぞれの出身国の文脈や専門分野を踏まえた意見交流が行われました。それぞれのもつ平和教育の視点から,記憶の時代ごと・世代ごとのギャップや,若い世代の継承をどのように進めていくのか,その際に教室空間の精神的なジレンマとどのようにして向き合っていくのか,といった一般化された話題・問いも導かれました。

東広島市内の案内・歓迎会

課題報告会の後は,車にて広大な広島大学の構内を案内しました。その後,夕食会場に移動をし,歓迎会を行いました。お刺身や天ぷらなどの和食を楽しみながら,日本の好きなところや明日以降のスケジュールについて語り合いました。Bush氏は日本のビールが気に入ったようです!全員が打ち解け合う非常に充実した時間を過ごすことができました。

 

 

2023年2月21日(火)

平和記念資料館の訪問・被爆証言の聞き取り

21日は,まず広島平和記念資料館・広島平和記念公園を訪ねました。展示品やモニュメントの観覧を通じて,2名は広島における原爆投下の悲惨と向き合いました。午後には,八幡照子さんからご自身の被爆体験についての証言を伺いました。お話を受けて,参加者からは「なぜ証言者になろうと思ったのか」「証言活動を通じて子どもたちに何を伝えたいか」「平和実現に向けて教育に何ができるのか」について質疑応答がなされました。

平和教育実践の観察と意見交換(広島大学附属小学校,広島大学附属中・高等学校)

その後,会場を広島大学附属小学校,広島大学附属中・高等学校へと会場を移しました。ここでは両校の平和教育実践に関する実践について協議しています。間瀬茂夫小学校長からは,PELSTE2020の際に浮かび上がった課題を受けて,社会科や総合的な学習の時間を活用した平和教育カリキュラムデザインが行っていることが説明されました。同校の実践報告を受けて,ローカライズされた平和教育をいかに普遍的なものへ高めるのか/高めるべきなのかについて参加者らは意見を交し合いました。

 

2023年2月22日(水)

広域交流型オンライン社会科地域学習の観察

21日午前は,EVRIが東広島市と連携して実施している「広域交流型オンライン社会科地域学習」の見学を行いました。参加者は日本の学校風土を肌で感じるとともに,先進的な遠隔教育実践を直接目にすることができました。今月の学習テーマは「東広島市を外国人市民にとって暮らしやすいまちにするには?」。参加者も,自国の施策を子どもたちに提示することを通じて,彼ら彼女らの探究活動・政策提言をサポートしました。

「日本の平和教育の歴史と特色」講演会

午後は,村上登司文氏(京都教育大学名誉教授)をお招きし,History and Features Peace Education in Japanと題してご講演いただきました。社会調査で得られたデータを基に日本の平和教育の特質(反戦教育・原爆教育的性格)についてお話しいただきました。参加者は,昨日の平和祈念資料館の展示も振り返りながら,凄惨な原爆の記憶をいかに記憶・継承していけばよいかについて議論を深めました。

2023年2月23日(木)

平和教育者との対話・意見交換会

23日は,ヒロシマの平和教育者アーカイブに登場した10名の先生方と参加者の対話からスタートしました。平和教育では何をこそ教える・伝えるべきか。平和教育のなかで子どもの主体性や心理的安全性をいかにして保証すれば良いか。各々の平和教育観の共有を通じて,参加者は,自国とヒロシマにおける問題意識や悩みの重なりを見出しました。また,アーカイブ発案者の草原教授からは,ヒロシマの平和教育を「切り取る」ことの暴力性に葛藤していること,一方で次世代にアーカイブを残すことの意義を感じていることが述べられました。

多賀先生によるフィールドワーク

午後は,アーカイブの語り手のひとり・多賀俊介先生のご案内のもとフィールドワークを行いました。一行は袋町小学校平和資料館,広島城,放射線影響研究所,陸軍墓地,陸軍被服支廠を訪ね,参加者は多賀先生の解説に耳を傾けました。また,巡見には同じく語り手の梶矢文昭先生,牧岡宏明先生も参加されました。両先生からの補足や対話によって見学はいっそう豊かなものとなりました。自ら足を運んで自分の目でヒロシマを見つめることは,地理を専門にされていた多賀先生のこだわりです。その重要性を,各所を巡るなかで参加者は肌で感じました。

 

2023年2月24日(金)

平和教育実践の報告「戦争と平和の教育学」(日韓博物館学習)

あっという間にPELSTE2023も最終日を迎えました。午前は,教育学部開講授業「戦争と平和の教育学Ⅱ」の報告会が行われました。受講生は,日韓歴史問題に関する映画や博物館の批判的吟味を行った成果を報告しました。具体的には,韓国の歴史博物館のLast 10 Feetのリデザイン案が提示されました。いずれのアイデアも,集合的記憶が衝突し,同じ歴史でもそれが国家間で異なる語りとして表出することを如実に表していました。さらに,PELSTE参加者も交えた議論を通じて,歴史認識だけではなく,謝罪や責任,正義といった概念に対する捉えもまた各国家間で違っていることが確認されました。

お別れ会

最終日の夕方にはお別れ会が行われました。Díaz氏・Bush氏、そして先生方から一言ずつ振り返りが行われ、会の途中には1週間を振り返るムービーも流されました。広島名物のお好み焼きも振る舞われ、別れを惜しみつつ、1週間を懐かしむ歓談、そして今後の展望についても花の咲くひとときとなりました。

PELSTE2023オンライン成果発表会・平和教育者アーカイブお披露目会

Program Information

 

 EVRI-HU PELSTE 2023:
“Can We Universalize the Localized Peace Education?”

目的
本シンポジウムでは、ローカライズされた平和教育の普遍性について議論します。広島の平和教育は、反戦教育、より具体的には反核教育として展開されてきました。確かに私たちは、「ヒロシマの平和教育」から原爆の残酷さを学ぶことができます。しかし、平和教育の適用可能性は限られているとされます。様々な地域の文脈で実施される平和志向の教育活動が、いかに社会に平和を構築する可能性を持っているかを議論します。

■ 日時
2023年2月24日(金曜日)22:00-24:00(JST)

  会場
オンライン会議 Zoom を使用します

  内容
開会:松見 法男 (広島大学教育学部・学部長)
イントロダクション:丸山恭司(広島大学教育ビジョン研究センター・センター長)
草原和博(広島大学)
発表1:Lina Rangel Díaz(ウィスコンシン大学マディソン校)
発表2:Timothy Mark Bush(メルボルン大学)
コメント1:Diana Rodríguez-Gómez(ウィスコンシン大学マディソン校)
コメント2:Kevin Kester(ソウル大学校)
ディスカッション
会場との質疑応答
閉会:丸山恭司(広島大学教育ヴィジョン研究センター・センター長)

  主催
広島大学INEI委員会
広島大学教育ヴィジョン研究センター

  共催
広島大学大学院人間社会科学研究科
令和4年度広島大学教育学部共同研究プロジェクト「INEI加盟大学と連携した 授業研究・平和教育セミナーの開催(1)」(研究代表者:草原和博)

  申込
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本セミナーは,Zoom接続にて開催をいたします。
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4. 昨年までの実施内容

これまでのPELSTEプログラムの取り組みと成果は,以下からご確認いただけます。

PELSTE2020

5. Contact

PELSTEについてお気軽にお問い合わせください
e-mail :evri-info@hiroshima-u.ac.jp
Tel & Fax: 082-424-5265
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