【2021.03.21】EVRI Forum No.25 PELSTE 2021 Lesson Study Sectionのシンポジウムを開催しました
JP/EN
Ⅰ.開催報告
2021年3月21日,広島大学教育ヴィジョン研究センターは,広島大学INEI学内委員会との共催で,「Peace Education and Lesson Study for Teacher Educator (PELSTE)」の授業研究部門のシンポジウムを開催しました。PELSTE2021は,2024年に予定されているINEI年次総会・広島開催にむけて,広島大学教育学部が「平和教育」と「授業研究」の国際的な(東アジアの)拠点となるべく,研究交流のプラットフォームを提供することを目的としています。「授業研究」に焦点を当てたPELSTE2日目のシンポジウムは,三名の参加者とともに,86名の参観者を迎えて「授業研究」の意義と課題を議論しました。
はじめにEVRIセンター長の草原和博より挨拶がなされ,PELSTE2021の目的とプログラムが説明されました。続けてPELSTE2021授業研究部門のコーディネーターである吉田成章が,授業研究部門では,「レッスンスタディを誰とどのように共有したいか」という共通の問いの下で,参加者それぞれの個人的・文化的・社会的文脈を視点としながら,授業研究の意義と課題を意見交換したいとの趣旨を述べました。
続けて,三名の参加者による提案がなされました。
ブラジルのサンパウロ大学のアグナルド・アロイオ氏(発表資料)は,PELSTE2020に参加した際の授業研究に関する議論や学校訪問を踏まえ,日本の授業研究の伝統に「教師の自立性とオーナーシップ」,「自給自活者(Prosumer)」,「多くのアクターを含みこむ教育的コミュニティとしての学校づくり」を見出し,そこからブラジルへの示唆を導きました。とくに氏はブラジルのピアウイ州の人々に授業研究を伝えたいと提案しました。当地が文化的・社会的に「傷付きやすい(vulnerable)」状況に置かれた学校・教師・子どもが多い地域であることを踏まえ,現職教育プログラムの変革と学校コミュニティの形成を通して,教師をエンパワーする道筋を提案しました。
シンガポールの南洋理工大学のインディラ・ズブラマニアン氏(発表資料)は,はじめに自身のインドでの教員経験を紹介したうえで,授業研究が,インドの教師教育システムの構造的・体系的課題に対して持続可能な形で応答しうることを指摘しました。とくに氏は新しい地で授業研究を始める際に経るべき「6つの問い」を提案し,教師の民主的な協調と協働の重要性を強調しました。最後に,こうした問いを経ることで,日本の遺産としての授業研究をそれぞれの地域的・文化的・社会的要求の中に再文脈化していくことの重要性を提起し,これらの文脈を無視した「教育借用」を乗り越えていく必要を提起しました。
アメリカのウィスコンシン大学メディソン校のケイシー・ロジャース氏(発表資料)は,米国の教員養成の現状を踏まえ授業研究についての意義と課題を論じました。氏も,学習者中心の授業論に関心を寄せてきた教員経験と研究経験に基づき,授業の実践・批評・改善のサイクルを繰り返すことの重要性を提起しました。氏は授業研究の意義を,大学教員,指導教員,実習生の三人組で進められる従来の教員養成の枠にとらわれない,多様なステークホルダーとの連携を可能とすること,そしてグループでの相互観察と相互批評を通じて授業を反省的に改善できることを指摘しました。特に教科横断的な教員の交流に力点を置き,学習者の学びを多層的多角的に捉える可能性を指摘しました。
ディスカッションでは,ブレット・ウォルターと金鍾成が進行を務めました。ここでは,授業研究が一つの「educational formula(教育の(成功)方程式)」となっていることをめぐって議論が展開されました。成功の物語となりやすい授業研究に批判的な対話をもたらすために,成功の「尺度」をどのように捉えるかが議論されるとともに,三名の提案に色濃く反映されていた文化的な「再文脈化」の重要性とその具体的方途が議論されました。
ディスカッションの後半では,平和教育部門のセシリア・チャロ氏,ケヴィン・ケスター氏,マユリ・コマラギリ氏も議論に参加しました。彼ら彼女らは,授業研究には,教師の教育経験を「体系化」する力があること,ブラックボックスだった教室内の授業実践を教師の共同探究の対象へと転換していくこと,さらには,探究を通して子どもと教師が持ち込む教室「内」の多様な文化の存在を「発見」し授業づくりへと「結び合わせていく力」があるとコメントしました。他方で授業研究の国際展開の中で避けることのできない「文脈」への配慮について,さらなる問いが提起されました。具体的には,授業研究の「借用」が,その体系性ゆえに異文化の複雑性を縮減しないようにするにはどうすればいいか,授業研究に新たに取り組むアクターへの動機づけをいかに構想するのか,そして授業研究が教師のウェルビーイングとどうつながるのかなどの問いが提起され,しばしば授業研究で約束される「成功」物語を批判的に問うことの重要性が確認されました。
最後に開催大学学部長の松見法男先生より,閉会の言葉をいただきました。参加者三名には参加証がオンライン授与され,盛会のうちに会が終了しました。PELSTE2021を主催するEVRIは,来年度以降も平和教育と授業研究のフロントラインを切り拓いてまいります。
EVRIは、今後も本シンポジウムのような国家を超えて記憶とその教育に関して語り合える公共圏を創造し、歴史和解を追求する平和・市民性教育ユニットの拠点形成を目指します。
Ⅱ.発表資料
Ⅱ.アンケートにご協力ください
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多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。
Thank you for participating, we are kindly ask you to answer few questions regarding this semianar.
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*EVRI Forum No.25の告知ポスターはコチラです。
PELSTE 2021授業研究部門のプログラム詳細についてはこちら
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