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【2021.12.04】第102回定例オンラインセミナー教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える(6)-学びにくさのある児童生徒の心理的側面への支援-」を開催しました

公開日:2021年12月17日 カテゴリー:開催報告

 

.開催報告

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2021年12月4日(土)に,第102回定例オンラインセミナー「教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える(6)-学びにくさのある児童生徒の心理的側面への支援-」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に46名の皆様にご参加いただきました。

「教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える」シリーズは,特別支援教育の専門家と教科教育,心理学、日本語教育の専門家とが協働し,それぞれの観点からインクルーシブ教育のあり方を,あるいはインクルーシブ教育の観点からそれぞれの指導,支援のあり方を相互に検討しています。なお,本シリーズは日本生命財団「児童・少年の健全育成委託研究」「学びのユニバーサルデザインに基づく日本型インクルーシブ教育システムのロールモデルの開発」(研究代表者:川合紀宗)の成果公表の一環としても実施されています。

シリーズ第6回となる本セミナーでは,インクルーシブな学び,インクルーシブな集団づくりのために心理学者が実施してきた調査や,実践してきた活動の報告が行われました。

はじめに,森田愛子先生(広島大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。まず,インクルーシブな学びの実現においては,学びにくさのある児童生徒個人の心理的側面へのアプローチだけではなく,学級集団全体に対するアプローチも重要であること。そのため本セミナーでは,集団を対象とした適応促進や,インクルーシブな集団の形成について論じることがセミナーの参加者全体で確認されました。

次に,森田愛子先生(広島大学)から「中学生の学級への所属感と動機づけ」と題して発表が行われました。自分の学習行動について,学習が「他の人のためにもなる」という状況下では,自分だけのために学習する状況より学習行動が増大するという「他者のため動機」という概念が紹介されました。ただし,「学級のみんなが学級のみんなのために」という状況では,他者のため動機も発現するが逆に社会的手抜きも誘発する可能性があるという調査結果が報告されました。インクルーシブな集団を形成するために,各自が役割を担っていることを意識化することが重要であるという提言がなされました。

続いて,神原広平先生(広島大学)から「定時制高校における学級規模の対人関係向上プログラム」と題して発表が行われました。ソーシャルスキル,適応的な認知スキル,気持ちのコントロールスキル,問題解決スキルを高めるための学級全体を対象にしたプログラムの具体的な手法が紹介され,プログラムに参加した高校生のスキルが実際に向上したという成果も報告されました。学級規模で実施することにより「よい行動を強化する」サイクルが生まれることや,予防的な効果があること,「特別な支援を受けている」状態にならないこと,といったメリットがあるという解説がなされました。

最後に,則武良英先生(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 西日本ブランチ広島オフィス)から「中学生のテスト不安を緩和する心理的介入」と題して発表が行われました。中学生のテスト不安を緩和するために,新たに開発された短期構造化筆記開示という手法が紹介されました。具体的なワークシートなどが提示され,集団を対象として短時間で実施できる介入方法でありながら,実際にテスト不安が緩和され,成績も向上するという成果が報告されました。

 

また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,心理的介入を実施する際にどのような授業の中に位置づけるのかといった具体的な質問や,支援を受けている子どもに対する不公平感の解消についての質問がなされました。登壇者の間でも,心理的介入を実施する際の具体的な留意事項,発達段階による違い,集団へのアプローチと個別アプローチの違いなどについて議論がなされました。最後に川合紀宗先生(広島大学)から,特別支援教育の観点からのコメントがあり,心理的側面についての集団へのアプローチと,インクルーシブな学びとの関連が明確化され,参加者全体で,心理的側面を考慮することの重要性について理解が深まりました。

今後もEVRIでは,Inclusive・日本語教育ユニットを中心にして,多様な子どもたちがともに学び考える空間の在り方を検討してまいります。


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


教育学研究科HPにも掲載されています


*第102回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。


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