|
2019年4月1日更新
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は、社会貢献活動の一環として、2017年7月から独立行政法人・国際協力機構(JICA)が実施する「カンボジア教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト」に協力しています。2021年8月現在、第3次の事業が進められています。
独立行政法人・国際協力機構(JICA)は、開発途上地域等の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とした団体であり、「1. 質の高い成長と格差是正」「2. 普遍的価値の共有と平和構築の推進」といった5つの基本方針のもと、多岐にわたる活動を行っています。
その中のひとつに「技術協力プロジェクト」があります。これは、JICAの専門家の派遣、研修員の受入れ、機材の供与という3つの協力手段(協力ツール)を組み合わせ、一つのプロジェクトとして一定の期間に実施される事業です。この度、2017年1月から2022年12月にかけて技術協力プロジェクト「教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト」が実施されるのをうけて、国立大学法人奈良教育大学や国際コンサルティング企業である株式会社パデコとともに、EVRIとそのスタッフである丸山恭司教授、木下博義准教授、佐藤万知氏らが本事業に協力することとなりました。
【参考】JICAカンボジア事務所ニュースレター「カンボジアだより」(リンク先から閲覧できます)
この章の文章は、おもにこちらのJICAの評価報告書およびこちらのプロジェクト概要ページを参照して作成しています。プロジェクトの正確で詳細な情報につきましては、リンク先をご確認下さい。
カンボジア王国(以下、カンボジア)では1975〜79年のポルポト政権による大量虐殺によって教師や知識人らの有能な人材はことごとく失われ、人材育成のシステムそのものが崩壊しました。その後の政権によってある程度の再興は達成されましたが、量的な拡大に重点を置いたために、退学率の高さ、能力のある教師の不足等の質的な問題を抱え込んだままとなっています。
カンボジアにおける近代教員養成制度は、このような1980 年代以降の紛争復興期における圧倒的な教員不足に対応するため、変則的な短期講習の形で開始されました。現在は正規の教員養成機関として、2年制の小学校教員養成校(Provincial Teacher Training Center: PTTC)および中学校教員養成校(Regional Teacher Training Center: RTTC)が全国各地に設置されています。
一方、これら教員養成校入学者は国家試験である中等教育(12年生)修了資格試験合格者とされているものの、世銀の報告書「Educating the next generation」によれば、PTTC入学者の約80%、RTTC入学者の約70%以上が「成績下位グループ」であることが指摘されており、カンボジアでは教員の質の確保に大きな課題を抱えています。
このような中、カンボジアでは、2015年8月に産業開発政策(Industrial Development Policy: IDP 2015-2025)が発表されました。そこでは、今後も経済成長を維持していくためには、産業の多様化、国際競争力のある高付加価値産業の創出・育成が重要であるとされ、そのための産業人材育成の必要性が指摘されました。それをうけて、カンボジア教育・青年・スポーツ省(以下、カンボジア教育省)は、産業人材育成を主な目的とした教育改革を推し進めており、基礎・中等教育、高等教育、技術教育の各部門において大規模な改革を進めています。
そのような改革の一環として、教員養成制度の改革が進められています。カンボジア教育省は、全小・中学校教員の学士化を主要な政策と位置付け、そのために教員養成校を2020年までに大学化(Teacher Education College: TEC)することを目標として掲げました。教員養成の枠組みを現行の「12+2制」から「12+4制」へと発展させ、担当する学校種を問わず全ての教員の資格を学士号以上に移行することを喫緊の課題としています。さらに、教員養成校の大学化に関連して、教員養成校入学者の選抜方法改善、教員給与の見直し等も行い、質の高い学生を教員養成校に入学させる取り組みも行っています。
このように、現在カンボジアでは質の高い教育を提供するため大規模な教育改革が進められており、TEC設立はこれら教育改革の中でも最重要課題として扱われています。本事業の実施主体であるJICAはこれまで、基礎教育分野においては、理数科教育の分野を中心として、「カンボジア理数科教育改善計画プロジェクト(2000年~2005年)」「理科教育改善計画プロジェクト(2008年~2012年)」「前期中等理数科教育のための教師用指導書開発プロジェクト(2013年~2016年5月)」という技術協力プロジェクトを継続的に進めてきた実績があります。この成果をふまえながら、本事業では教員養成分野での豊富な研究・実践の蓄積を持つ広島大学と奈良教育大学が協力機関としてプロジェクトを進めることとなり、広島大学はEVRIがその任務を引き受けることとなりました。
2017年1月、「カンボジア国教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト」、通称「E-TECプロジェクト」が始まりました。
プロジェクト全体の進展についてはJICAの特設ページをご覧頂くとして、ここではEVRIが直接関わった研修の内容について紹介してまいります。なお、プロジェクト自体は6年の長期にわたる事業ですが、ここではEVRIが現在協力している期間(2017年7月~2019年5月)の内容に限定してご紹介します。
私たちEVRIは、EVRIの掲げるミッションとヴィジョンを達成するために、共同事業、共同研究、受託研究および講演等をお引き受けいたします。
ご依頼やご質問は、EVRIの運営支援チームに遠慮なくお問い合わせください。連絡先は次のとおりです。
e-mail :evri-info@hiroshima-u.ac.jp
Tel & Fax: 082-424-5265
contact >