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【2020.12.6】第58回定例オンラインセミナー「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(2)」を開催しました

公開日:2020年12月11日 カテゴリー:開催報告

.開催報告

2020年12月6日(日)に,第58回定例オンラインセミナー「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(2)」を開催しました。

「教師教育者のためのセルフスタディ」シリーズは,国際的な研究方法論として広がりをみせるセルフスタディについて,広く深く参加者とともに学んでいくセミナーです。様々な専門職の職能発展において活用できる可能性を持つセルフスタディですが,本シリーズでは,特に教師教育者に焦点をあてます。日本における教師教育者のセルフスタディの受容と発展について,その歴史や思想,そして海外事例を含む実践の諸側面から検討していきます。

本シリーズは,最終的にシリーズタイトルと同名の書籍の出版を目指しています。この研究/出版プロジェクトは,齋藤眞宏(旭川大学),草原和博広島大学・EVRIセンター長),渡邉巧(広島大学),大坂遊(徳山大学・EVRI教育研究推進員)の共同研究です。シリーズ企画は,科学研究費助成事業の一環としても実施されています。

第2回目となる今回からは,シリーズの帯企画として「海外セルフスタディ研究の紹介」と「日本のセルフスタディ事例紹介」の企画の2本立てで進めてまいります。前者は,海外の特筆すべきセルフスタディ研究事例を取り上げ,その研究の方法論的な特質や,研究の意義について示す企画です。後者は,日本における大学ベースの教師教育者が行ったセルフスタディ研究の実例を示す企画です。

前半の「海外セルフスタディ研究の紹介」企画では,佐々木弘記先生(中国学園大学)から,主に『J.ロックランに学ぶ教師教育とセルフスタディ』に紹介されている研究,および「キャッスルカンファレンス」と呼ばれるセルフスタディの国際会議で報告された研究が紹介されました。前者では,教育実習生が実習において直面した出来事を扱い,セルフスタディを通して教育実習生が大学で学んだ学問知と現場で学んだ実践知をいかに結びつけていくのか,そこに教師教育者がどのように関与しているのかを実習生のレポートから分析していくといった研究などが紹介されました。後者では,セルフスタディを行う上で欠かせない「クリティカルフレンド」という共同研究者の存在をどのように捉えるべきかについて,文献調査やディスカッションを通して探究した結果が紹介されました。これらの紹介を通して,佐々木先生は,教師教育者が直面する切実な問題の解決に資する研究のあり方として,セルフスタディが有効に機能する可能性を提案されました。

後半の「日本のセルフスタディ事例紹介」企画では,山内敏男先生(兵庫教育大学)と大西慎也先生(京都ノートルダム女子大学)が行ったセルフスタディが報告されました。これは,教職大学院で社会系教科教師の養成に取り組む中で自身の教師教育実践に葛藤を抱える山内先生が,大学院時代から同じ研究室で学び合う関係である大西先生をクリティカルフレンドとして,「教師教育者である山内は,どのような自身の教師教育実践の改善策を発見できるか」「クリティカルフレンドである大西は,山内の語りに寄り添うどのような方法を探し出すことができるか」をそれぞれ探究するというセルフスタディでした。セルフスタディを通して,「授業において院生が目指す目標の多様性を担保すること」「実務家教員が院生に対して自身の理論や実践を闇雲に提示しないこと」といった実践上の示唆を得ることができるとともに,改善策を発見するきっかけとして,自身の考え方や自身の課題,自身のこだわりに気付くことができたという点が報告されました。また,セルフスタディは個人の気づきにつながるリフレクションとは異なり,実践者もクリティカルフレンドも,気づきを支えあうコミュニティがあってこそ成立する研究であること,コミュニティが広がることにより,自身の実践の改善が教員養成機関の取組の改善に広がるなど,学校文化の変容をもたらす可能性へとつながることが提案されました。

指定討論者である木原成一郎先生(広島大学)からは,ライフヒストリー研究者から見たセルフスタディの研究方法論上の課題として,教師教育コミュニティの発展に資する他者が利用可能な示唆を導き出すことを目的の一つとするのであれば,どのレベルの教育理論を生み出すのかを明確にするために,認識論や研究法,研究目的を開示する必要性を指摘されました。また,山内先生・大西先生の報告に対しては,山内先生が取り上げた大学院の授業実践の教材に,自身の授業研究の足跡を盛り込む必要性について指摘されました。同じく指定討論者である岩田昌太郎先生(広島大学)は,自身がこれまでセルフスタディに取り組み,そして挫折やショックを繰り返してきたという経験と今回の報告とを重ね合わせながら,セルフスタディは教師教育者が自分が何者なのかを探究し続けるための思索的探究という側面を持ち,教師教育者としてのアイデンティティを確立していくための方法論としても有効に機能する可能性を提案されました。

ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,山内先生・大西先生の報告に対して,2人の対話の方法や頻度などの手続きについてや,クリティカルフレンドとの関係性についての質問が出されました。さらに,学校現場で行われている各種研修を継続的に行うことはセルフスタディになりうるのか,実習指導担当教員のクリティカルフレンドは誰がなるのかといった,学校現場の教師教育者が行うセルフスタディのあり方についても質問がなされました。セミナー終了後も,残った登壇者と参加者との間で自然発生的に座談会のような意見交換の場が生まれ,当セミナーシリーズを通して教師教育者コミュニティが醸成される可能性を予感させてくれました。

本シリーズでは,引き続きセルフスタディを通じた日本の教師教育の発展を考えてまいります。

Ⅱ発表資料

大坂遊(徳山大学)
趣旨説明

佐々木広記(中国学園大学)
海外セルフスタディ研究の紹介①

山内敏男(兵庫教育大学)・大西慎也(京都ノートルダム女子大学)発表資料
教師教育者としての山内は、セルフスタディをとおしてどのように変容したのか?

木原成一郎(広島大学)
教師教育者のためのセルフスタディー事例紹介②

岩田昌太郎(広島大学)
セルフスタディとの出会い

 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。

 


*第58回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。

No.58のサムネイル

 


教育学研究科HPにも掲載されています

 


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