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【2024.03.09】定例セミナーNo.158「一般教科教授学とは何か-ドイツ語圏の研究動向から-」を開催しました。

公開日:2024年04月04日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2024年3月9日(土)に,第158回定例セミナー「一般教科教授学とは何か-ドイツ語圏の研究動向から-」を開催しました。大学院生や大学研究者を中心に12名の皆様にご参加いただきました。

はじめに,宮本勇一氏(岡山大学・講師)より,本セミナーの見取り図が説明されました。2000年代以降,ドイツ語圏では教科教授学が一般教授学から自立し,影響力を行使するようになる学術的な経緯・背景と,31の学協会が加盟して結成された教科教授学学会(Gesellschaft für Fachdidaktik, GFD)の活動が紹介されました。

 

 

次に,Helmut Johannes Vollmer氏(オスナブルク大学名誉教授)とMartin Rothgangel氏(ウィーン大学教授教師教育センター長)より,「General Subject Didactics (GSD) Comparative Insight into Subject-Matter Didactics as Academic Disciplines」をテーマに講演が行われました。

論点は多岐にわたりましたが,一般教科教授学の「一般」の意味は想定するほどに簡単には定義できないこと,著名なKlaus ZiereやWolfgang Llafkiの定義も難解で,実質的にその定義は困難であり,実践的な影響力をもちえないと主張されたのは,印象的でした。このような一般教授学の成立困難性を根拠に,内容・主題に即した教科教授学の必要性が説かれ,ルーマン理論を援用した一般教科教授学が射程とする3つの議論の位相が提案されました。とくに今後は,個別教科を越えた教科の存立基盤を探る「メタ・理論的な視点」と,各教科固有の対象の捉え方を探る「対象・理論的な視点」,それぞれが中核的な論点になる可能性が示されました。最後に,一般教科教授学は依然として学問的に発展途上にあるが,今年ウィーン大学に一般教科教授学の講座(教授職)が開設された点は画期的であると述べ,これらの拠点や研究雑誌をハブにして,国際的な連携を深めていく必要性が提起されました。

草原和博教授(広島大学)をファシリテーターとする質疑応答では,「教科を超えた対話ではどういう工夫が必要か」との質問が出ました。これに対しては,講演者は「まずは仲間として共通のトピックを確認することが重要である」が,対話を通して「相違点を見つけ出すことも必要である」などと回答しました。

 

 

最後に,伊藤真准教授(広島大学)より本セミナーのまとめがなされました。セミナー後は,大学院生を中心に軽食を取りながらインフォーマルな交流が繰り広げられました。大学院生は,講演者に対して積極的に自身の教科教育学研究のテーマについて紹介し,助言を得ていました。なかには,GFDが刊行する学術雑誌RISTAL(Research in Subject-matter Teaching and Learning)に論文を投稿したいと意欲を燃やす大学院生も現れ,有意義な交流の場となりました。

 

 文責(草原和博


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第158回定例セミナーのポスターはコチラです。
No.158ポスターのサムネイル

教育学研究科HPにも掲載されています


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