広域交流型オンライン社会科地域学習の成果の一部が論文になりました
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は,2021年度から,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を実施しています(プロジェクトリーダー:草原和博教授)。GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して,市内各地からの中継を交えながら,東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。
このたび,本企画の成果の一部が論文になりました。執筆者は,吉田純太郎教育研究推進員,宇ノ木啓太元教育研究推進員(現 福岡県公立中学校教員),草原和博教授です。論文の掲載情報は下記のとおりです。
吉田純太郎・宇ノ木啓太・草原和博(2022)「越境的な遠隔教育を子どもはどう受け止めたか―東広島市「広域交流型オンライン社会科地域学習」参加児童のアンケート回答から―」『広島大学大学院人間社会科学研究科紀要 教育学研究』3,81-90.
本論文では,2021年度に実施した広域交流型オンライン社会科地域学習において,授業後に参加児童が回答したアンケートの回答(2021年7月期から2022年3月期までの回答延べ2,288名分)を分析・考察しました。1年間をかけて継続的に収集したデータを用いて,遠隔教育実践の効果検証を行う意欲的な試みです。
分析の結果,参加児童は次の3点で本企画を評価したことが明らかとなりました。
第1に,日常生活の中では見聞きできないものを画面越しに焦点化して観察できる点です。ドローンを使って土地利用や災害跡地の様子を上空から俯瞰したり,観察・聞き取りの対象を大型提示装置でじっくりと視聴したりすることができることに,児童は本学習の直接観察にはない強みや良さを感じていたようです。
第2に,普段交わることのない児童と対話を重ねて新たな知を生み出すことができる点です。本企画では,複数の小学校をオンラインで接続して同時双方向的に東広島市を学習します。自校だけでは到底思いつかないようなアイデアを他校から提示されたり,生活文脈を異にする他校の児童から未知の知識を得ることは,参加児童にとって更なる対話に向けた刺激となったようです。
第3に,日頃行くことのない町について知ることができる点です。東広島市は,山間地域から臨海地域まで計9町の合併によって誕生した広域都市です。日常生活の中で他の町に赴く機会は少なく,児童の生活圏は狭く閉ざされる傾向にあります。スーパーマーケットや駅,大学といった施設のない地域に住む児童にとって,本企画で取り上げた諸々の公共施設や機関の存在は社会に目を開く機会となったようです。
研究の詳細は論文本体をご参照ください。本論文は,広島大学学術情報リポジトリに登録されており,どなたでも無料でご参照いただけます。
論文へのリンクはこちら ▶ 広島大学学術情報リポジトリ
なお,本企画では2022年度にも参加校の教員・児童を対象にして事後アンケートを実施しております。本論文で得られた示唆を踏まえつつ,参加者の声を手がかりにして,本企画の意義と課題を実証的・継続的に検討し,遠隔教育を活用した新しい教科指導の形を提案してまいります。
(文責:吉田純太郎)
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