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ページ移行のお知らせ

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」ページは新ページへと移行しました。
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0. Introduction
はじめに

プロジェクトの概要

本ページでは、広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)が、東広島市教育委員会と連携して行う、市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習について紹介します。

事業概要
●事業テーマ  : 広域交流型オンライン社会科地域学習を実施する
●連携協力機関 : 東広島市教育委員会

●事業目的・内容:
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は2021年度から、東広島市教育委員会と連携して、市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を開始しました(プロジェクト代表者:草原和博教授)。GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して、市内各地からの中継を交えながら、東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的に学びます。さらに、この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。

プロジェクトの実施にあたっては、参考コンテンツとして、EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ

本年度は、2021年6月の試行に基づいて、毎月1回2時間、テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで、小規模校と大規模校の子どもが、年間を通して、各地域のようすを比較したり交流したりしながら学びを深められるように工夫しています。

目 的
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

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広域交流型オンライン社会科地域学習の紹介スライドはこちら(PDF)

実施内容
〇 「市内の小学校」と「学習対象となる地域等」と「広島大学」がオンラインでつながり遠隔授業を行う。
〇 遠隔授業の全体進行は、大学の担当者が行う。各教室での指導は、各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し、授業準備、授業支援、後片付け等を行う。
1年間の計画案


ピンク色のバスのヒミツをさぐれ! 仲間をさがせ!(2021年6月18日/25日)(クリックすると開きます)
6月18日 :「バスを比べよう(1)-ピンクのバスのひみつ-」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 芸陽バスから中継担当:草原和博、大坂遊
  • のんバスと東広島市から中継担当:小栗優貴、川上由美
  • 学校技術支援担当:池田優子、今井祐介、宇ノ木啓太、川本吉太郎、正出七瀬、吉田純太郎
  • 事務局機器担当:守谷富士彦

 

2021年6月18日に実施した授業では、東広島市内小学校5校(八本松小学校,平岩小学校2クラス、木谷小学校、河内小学校、豊栄小学校)の4年生(130名程度)が参加しました。

第1週目は,「のんバス」と民間の路線バスと比較することで,違いを見出すとともに,コミュニティバスの運行に関して「問い」を発見し,解決することを目標としました。

1時間目は,芸陽バスの西条車庫から通常の「路線バス」と「のんバス」のようすを中継で観察しました。それぞれのバスの大きさや行き先・ルート,時刻・運賃設定,乗降口の数などを比較し,のんバスの役割を「公共性」の視点から分析していきました。また乗車証明書を持参して西条駅前のお菓子屋さんで買い物して,割引券をもらう様子を中継しました。買い物や通院・通学だけでなく,地域の活性化にも貢献しようとするコミュニティバスの役割を学びました。

2時間目は,1時間目に学んだ「のんバス」の基本情報を振り返るとともに,運賃収入だけでは維持できず補助金をえて運行している状況を知りました。児童には,のんバスの「なぜ・どうして」をたくさん出してみよう!と指示したところ,「なぜ赤字なのに走らせるのか」「なぜ西条にしか走っていないのか(私たちのまちにはないのか)」などたくさんの疑問が寄せられました(「赤字のバスを走らせるべきか」をめぐって一人ひとりが意見表明もしました)。これらの問いに対して,専門家の市役所やバス会社の担当者が真剣に答えていきました。

一連の課題発見・課題解決を通してコミュニティバスの社会的意義を探究するとともに,西条以外の土地に走るコミュニティバスについても調べてみたいという意欲が高まりました。

2021年6月期第1次第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年6月期第1次第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 


6月25日:「バスを比べよう(2)―私たちの町のバスのひみつ-」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 市役所から中継担当:草原和博、大坂遊
  • 海風バスから中継担当:小栗優貴
  • 広島大学から中継担当:川上由美
  • 学校技術支援担当:池田優子、今井祐介、宇ノ木啓太、河原洸亮、川本吉太郎、吉田純太郎
  • 事務局機器担当:守谷富士彦

 

2021年6月25日に実施した授業では、東広島市内小学校5校(八本松小学校,平岩小学校2クラス、木谷小学校、河内小学校、豊栄小学校)の4年生(130名程度)が参加しました

第2週目は,コミュニティバス運行にともなう「お悩み」を見出し,それの解決策を構想することを目標としました。

1時間目は,参加校が,西条の「のんバス」とともに,豊栄の「そよかぜ号」,河内の「あゆピチふれあい号」,安芸津の「海風バス」の運行時刻や利用状況等について調べ発表しました。これらの地方のコミュニティバスは便数が少なく,あまり知られてもいないことが確認されました。途中「海風バス」の車内から中継をはさみ,乗客の数や乗車区間,乗車目的等についてリポートを受けました。参加した児童は,運転手さんにオンラインで直接質問する機会も得ました。

2時間目は,これらのコミュニティバスのお悩みを出し合いました。どのバスにも共通するお悩みとして「赤字が多いこと」「利用者が少ないこと」が挙げられました。参加した児童は,これらのお悩みの解決策を議論し,提案しました。参加した各校の児童は,これらのコミュニティバスがほとんど知られていない事実に気づき,もっと広く知られるように看板やチラシを作るべきではないかと認知度を上げる方略を提案しました。市役所の担当者も現実的で効果的な提案にたじたじでした。最後に広島大学を走っている自動運転の小型電動バスの様子を観察し,未来のバスの姿にイメージを膨らませました。

2週間の学習を通して,「身近にありながらよく知らない」バスの存在について,参加校5校が互いに理解し交流し合うことで,公共サービスを担うコミュニティバスの機能と課題,そしてその解決策について認識を深めることができました。

2021年6月期第2次第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年6月期第2次第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

※市役所の職員さん,海風バスの加藤正人氏には,氏名と写真の掲載の許可をいただいております。


スーパーと直売所,どこか違う?どこが同じ?(2021年7月15日)(クリックすると開きます)
715日:「 スーパーと直売所,どこか違う?どこが同じ?」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • スーパーから中継担当:宇ノ木啓太、岩佐佳哉
  • 直売所から中継担当:川上由美、川本吉太郎
  • 学校技術支援担当:今井祐介、吉田純太郎、正出七瀬
  • 事務局機器担当:大坂遊、草原聡美

 

2021年7月15日に,東広島市内小学校13校(西条,板城,吉川,西志和,東志和,小谷,平岩,高美が丘,三ツ城,板城西,乃美尾,中黒瀬,龍王)の3年生(910名程度)が参加し,東広島の「お店」をテーマにした授業を実施しました。今回は,「スーパーと直売所の小売店としての特色を理解し,それを的確にあらわしたキャッチフレーズを提案できること」を目標としました。1時間目は,スーパー,直売所それぞれのようすを中継で観察しました。子どもたちは,1日あたりの客数や販売されている食品の種類・産地、売り場の広さなどを比較しながら中継を視聴し,それぞれのお店の特徴を捉えていきました。その後,直売所で買い物中のお客さんにインタビューを試みました。わざわざ西条から福富ま車に乗って直売所を訪ね,野菜を買っている理由を尋ねることで,スーパーと比べて商品の数も種類も少ないが,人々を引き付けている直売所の魅力について学ぶことができました。

2時間目は,1時間目に観察したことを踏まえ、スーパーと直売所の魅力を表すキャッチフレーズを考案しました。スーパーのキャッチフレーズには,便利さや産地の幅広さ(地元から世界まで)が表れていました。一方,直売所のキャッチフレーズを作った子どもたちは,野菜の新鮮さや手作り商品へのこだわり,地域の活性化に注目していましたた。最後に,子どもには「どちらかのお店だけでいいんじゃない?(2種類もいらないよ!)」と揺さぶりをかけました。この命題への賛否とその理由を示す活動を通して,消費者に多様な選択肢が保証されていることの意義を学びました。

2時間の学習を通して,「普段よく行く」スーパーと「あまり行ったことのない」直売所を知り,それぞれの小売店としての目的の違いを言語化するとともに,小売店と消費者との関係について認識を深めることができました。

2021年7月期第1次第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年7月期第1次第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年7月期追加取材動画(ショージ) ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年7月期追加取材動画(しゃくなげ館) ▶︎YouTubeはこちらをクリック

※しゃくなげ館の水脇館長,ショージの大川氏には,氏名と写真の掲載の許可をいただいております。


さい害から身を守る-さい害でキケンなところ,さい害のサインをさがそう!-(2021年9月15日)(クリックすると開きます)
915日:「 さい害から身を守る-さい害でキケンなところ,さい害のサインをさがそう!-」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 西高屋駅前から中継担当:熊原康博、宇ノ木啓太
  • 小寺池からの中継担当:横川知司、岩佐佳哉、住谷侑也
  • 災害碑からの中継担当:西高屋駅と小寺池担当者全員
  • 市役所から中継担当:川上由美、小栗優貴
  • 学校技術支援担当:今井祐介、池田優子、吉田純太郎、正出七瀬
  • 事務局機器担当:大坂遊、川本吉太郎、草原聡美

 

2021年9月15日に,東広島市内小学校8校13学級(郷田,原,小谷、豊栄、入野、風早、高屋西、御薗宇)の4年生(384名)が参加し,東広島の「災害」をテーマにした授業を実施しました。

今月は「さい害から身を守る-さい害でキケンなところ,さい害のサインをさがそう!-」を目標に実施しました。

1時間目は,まず自然災害の専門家である熊原康博准教授(広島大学)に事前に児童から寄せられた質問に答えていただきました。疑問に答える過程で,本時のめあてである「身近な地域で,災害に弱いところ=キケンなところをさがそう!」を確認しました。その後,クイズに取り組んだり,高屋周辺の「土石流」と「浸水」が発生しやすいところを中継で結んで,災害発生地の地形的特徴や災害の原因を探究していきました。土石流については,現場のようすをドローンの映像で観察しました。浸水については,元消防団員の方のお話を伺うことで,過去の浸水規模や浸水しやすいところの地形,浸水に対する備えについて知ることができました。

2時間目は「身近な地域でキケンなところをさがそう!」と題して,参加校の校区で土石流や浸水の起こりやすいところを見つける活動を行いました。1時間目に学んだ概念を活用して,標高を色分けした地図を読み解いていきました。児童が予想した危険地域とハザードマップが指し示す危険地域を照らし合わせながら,災害が起こりやすい地域を確認していきました。各学校の発表を通して,東広島市には,土石流が多いところ(山ぎわの谷)もあれば,浸水が起こりやすいところ(川沿い),高潮が起こりやすいところ(海沿い)もあることが分かりました。ハザードマップでは危険と示されていないところを危険指摘した学校に対して,熊原准教授は「ハザードマップだけを頼りせずに自分たちでも考えてほしい」とコメントされました。その後,市役所の危機管理課と中継を結んで,市が発している最新のキケンのサイン(ハザードマップ,緊急告知ラジオ,防災メールなど)を学びました。最後に小寺池近くの水害碑を観察することで,昔の人が残してきたキケンのサイン(山津波の記録)を知りました。

2時間の学習を通して,東広島の災害の種類を捉えるとともに,各地域で災害から身を守る方法を考え,交流することができました。

2021年9月期第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年9月期第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年9月期  趣旨説明 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

※元消防団員の島本様,東広島市役所危機管理課の皆様には,氏名と写真の掲載の許可をいただいております。

EVRIは,引き続きICTを活用した新しい地域学習のヴィジョンを提案し,それを教育関係機関と連携しながら企画・実施してまいります。


高屋に新しい消防署ができるらしいよ・・・なぜ? (2021年10月20日)(クリックすると開きます)
10月20日:「高屋に新しい消防署ができるらしいよ・・・なぜ? 」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島消防書から中継担当:宇ノ木啓太、大岡慎治、國重和海
  • 西分署からの中継担当:正出七瀬、津田晃希
  • 安芸津分署からの中継担当:川本吉太郎、 澤田百花
  • 学校技術支援担当:吉田純太郎、佐藤莉沙
  • 事務局機器担当:宮本勇一、今井祐介、藤井冴佳、草原聡美

 

2021年10月20日に,東広島市内小学校10校15学級(吉川,西志和、小谷、高谷西、高美が丘、板城西、上黒瀬、下黒瀬、福富、木谷)の3年生(334名)が参加し,「消防署」をテーマとする授業を実施しました。2時間を通した学習課題は「高屋に新しい消防署ができるらしいよ・・・なぜ?」に設定されました。

1時間目は,学校の近くで火事がおきた場合に,消防車は何分でくることができるのかを予想するクイズから始まりました。子ども達はタブレットで時間を予想し,解答しました。答えは平均7分程度で,多くの児童が正解でした。学校によっては10分以上かかっていることを知り,東広島の広さを実感しました。
1時間目の前半では,東広島市の消防署(本署・分署で計6か所)を示した分布図をながめて,消防署が空間的にバランスよく配置されていることを読み取りました。また,各学校周辺を担当している消防署の名前と位置を確認しました。そして空間的にバラツキある消防署の立地には,どこで火事や事故が起きても「すぐに」現場に駆け付ける工夫があることを確かめました。
後半では,東広島市の消防署から本署と分署2つ(東広島消防署・西分署・安芸津分署)を選び,そこの装備を比較する活動を行いました。写真を眺めながら,「本署にはいろいろな消防車がいるが,分署は少ない」傾向を見いだし,「それはなぜか」を予想しました。この予想結果を検証するために3つの消防署を中継でつなぎ,違いの理由を担当者にインタビューしていきました。その結果,①安芸津分署には狭い道でも通り抜けられる小型ポンプ車が配置され,②ビルがあったり高速道路が近い西分署にははしご車はレスキュー車が配置されていること,③東広島市消防署には化学車や特別装備のレスキュー車,指令室などが配置され,市全体の消防を支援していることを知りました。最後に,各地域の特性に応じて車両や装備をカスタマイズすることで,「すぐに」火を消し,人を助けている消防署の工夫をまとめていきました。

 

2時間目は,「すぐに」火を消し,人を助けるために建設が予定されている新しい分署の位置を予想しました。1時間目の地図を用いて,消防車や救急車がすぐにかけつけることのできない地域を確認し,児童は高屋周辺や志和・福富あたりが新分署にふさわしいと予想しました。消防署の人のお話で,近畿大学近くの「高屋」に建設が予定されていること,高屋では人口が多く,高齢化が進んでおり,救急車の出動も多いという事情があることを知りました。また高屋の立地に納得できるかどうかの意思表明を行い,9割の児童がそれを支持していることを確かめました。
最後にこの新しい分署にどんな消防車や救急車を何台配備すべきかを考え,クラス分署に高屋分署計画書を作成しました。多くのクラスは,はしご車を数台,レスキュー車も数台,化学車も数台配備したらいいよ,と提案しましたが,実際はポンプ車・タンク車・救急車1台ずつの配備が予定されていると知り,驚きました。提案に対しては,消防署の方からコメントをいただくこともできました。子どもたちは地域の特性に合わせた提案ができたものの,現実と理想とのギャップをつきつけられた学習ともなりました。

 

2時間の学習を通して,私たちの「命」を守る消防署の工夫を立地と装備の視点から探究し,各校の提案を交流できた貴重な2時間となりました。西分署から中継しているとき救急出動のアナウンスが入り,救急隊が急いで出動する様子を伝える想定外の事態もありました。しかし,消防に携わる人々の緊張に満ちた活動をリアルに理解する機会となりました。ご協力いただいた全ての関係者に御礼を申し上げます。

2021年10月期第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年10月期第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年10月期  趣旨説明 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

 

※東広島市消防局の馬﨑様,江籠様,源城様,中村様,廣澤様には,氏名と写真の掲載の許可をいただいております。

EVRIは,引き続きICTを活用した新しい地域学習のヴィジョンを提案し,それを教育関係機関と連携しながら企画・実施してまいります。


「「伝とう 」ってかわっていいの?わたしたちのまちの伝とうの未来を予想しよう」(2021年11月17日)(クリックすると開きます)
11月17日:「「伝とう 」って変わっていいの?私たちのまちの伝とうと未来を予想しよう」

 

実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 高屋東小学校から中継担当:川本吉太郎、 川上由美
  • 安芸高田市神楽門前湯治村からの中継担当:正出七瀬、津田晃希、大岡慎治
  • 学校技術支援担当:吉田純太郎、佐藤莉沙、澤田百花、國重和海
  • 事務局機器担当①:今井祐介、草原聡美
  • 事務局機器担当②(高屋東小学校):宇ノ木啓太、藤井冴佳

 

20211117日に,東広島市内小学校34学級(原,高屋東,造賀)の4年生(51名)が参加し,「伝とう」をテーマとする授業を実施しました。2時間を通した学習課題は「「伝とう」って変わっていいの? 私たちのまちの伝とうの未来を予想しよう」に設定されました。
1時間目の導入は,給食の4枚の写真を見て古い順に並べかえるクイズから始まりました。児童はタブレットを使って回答しました。教室では,給食の変化をつぶさに眺めて,主食・おかず・飲み物という組み合わせ,子どもには元気に育ってほしいという願いは「変わらない」ことを見いだすとともに,品数の増加,栄養の高まり,洋風化,地産地消などの「変わっている」ところを見つけていきました。
1時間目前半では,歌舞伎や能など「伝統」芸能の具体を確認するとともに,その「伝統」とは「変わる」こと「変わらない」こと,どちらを意味するかについてイメージをタブレットで投票をしました。投票の結果,「変わらない」が多数派でしたが,「変わる」と主張する子どもも一定数いたため,その違いと理由を確認していきました。
1時間目後半では,広島県の芸能の一つ「神楽」が定期的に公演されている神楽門前湯治村からの中継を結びました。また安芸高田市役所の神楽専門家のお話を視聴し,豊作を祈る思いは昔から「変わらない」こと,しかし,その運営は信仰や祭礼の場から徐々に観光化・商業化が進み「変わっている」こと,「変わっていく」ことで伝統を受け継ぐことができること,「神楽」を残していくために,大都市や海外で講演したり,高校生の大会(神楽甲子園)を主催したりしていることなどを確認しました。最後に,伝統とは「変わらない」ことだから「神楽」は伝統とはいえないのか,それとも「変わり」ながら続いているからこそ「神楽」は伝統といえるのか,児童の「伝統」認識に揺さぶりをかけました。

2時間目の導入では,各学校で受け継がれている文化を相互に紹介し合いました。各学校から,とんどや地域のお祭り,伝説をもとにした劇,などが紹介されました。
2時間目の前半では,明治時代から「歌舞伎」が演じられている白市地区の高屋東小学校から中継を結びました。また白市で歌舞伎を引き継いでいる方のお話を視聴し,歌舞伎の演者は,上方のプロから,素人の地域住民へ,そして子どもへと「変わっている」こと,歌舞伎は2度「終わる」も,歌舞伎が好きで地域に残したいと願う人々の手でその都度「復活」してきたことを確認しました。
2時間目の後半では,自分たちの学校の文化が10年後どうなっているかを予想しました。各学校では,学校がある限り・記念の絵がある限り残るはずだ,自分たちもやって楽しいから残っていくはず,との予想と理由が発表されました。最後に,広島大学の川口広美准教授からコメントをもらいました。川口准教授は,各学校には様々な文化があり,どの学校も上手に紹介できていたこと,伝統を守るという気持ちを大事に思い続けてほしいこと,伝統は守るだけが大事でなく,遊びたい・家族と過ごしたいなど色々な人の思いを大事にし,「何を残し,何を変化(変身)させていくか」を考えてほしいとお話されました。

2時間の学習を通して,「伝統」を変化と持続という視点から探究しました。「伝統」とは,昔からそのまま受け継がれたものではなく,携わる人々の手で絶えず作り替えられてきていることを学びました。

ご協力いただいた全ての関係者に御礼を申し上げます。

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「駅とまちのうつりかわり」(2021年12月15日)(クリックすると開きます)
12月15日:「駅とまちのうつりかわり」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島駅から中継担当:川本吉太郎、 川上由美、八木謙樹
  • 寺家駅からの中継担当:津田晃希、大岡慎治、藤原瑞希
  • 学校技術支援担当:佐藤莉沙、山下光、山下弘洋、森本敬仁、永田誠弥
  • 事務局機器担当①:田中崚斗、正出七瀬、草原聡美
  • 事務局機器担当②(高屋東小学校):宇ノ木啓太、吉田純太郎

 

2021年12月15日,東広島市内小学校5校6学級(西志和,東志和,下黒瀬,福富,豊栄)の3年生(116名)が参加し,「駅から見えるわたしたちの市のあゆみ」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目の導入は,東広島市には電車の駅がいくつあるのかを予想するクイズから始まりました。子どもたちはタブレットを使って回答をしました。東広島市には,山陽本線・新幹線・呉線の3つの路線があること,大小さまざまな10の駅があることを東広島市の路線図を用いて確認しました。10の駅の中でもとくに利用者が少ない2つの駅に注目して,駅のようすを比べました。海のすぐそばにある風早駅に対して,周囲を山に囲まれた入野駅。私たちが普段使っている新幹線の駅前とは異なる多様な駅前の姿を確認しました。次に,西条駅の昔の駅舎の写真3枚を見て,古い順に並べかえるクイズを行いました。建物や道路,通行人の服装,写真のカラーなどに着目しながら並び替えを行い,「変化」を捉える視点をつかみました。
1時間目の主たる課題は,「駅ができる前と後の町のうつりかわり」を考えようです。市内ではできたばかりの寺家駅と東広島駅に注目し,駅前のようすを中継で確認します。子どもの事前の予想では,「駅は人が多い所にできるはずだ!」でした。確かに今では寺家駅や東広島駅の周りにたくさんの建物が並んでいますが,タイムスリップしてみると(=昔の画像や動画を見てみると),駅ができる前の何もなかった景観に驚きます。また,現在駅を利用している人へのインタビューから,通勤に便利だから駅の近くに移り住んだこと,周辺に店ができて便利になっていることを確かめました。
最後にリポーターの2人から「町があるから駅ができるのでは…」「駅があるから町ができるんだ…」の2つの対立する考えが示されます。どちらを支持するか尋ねられた子どもたちは,大いに悩みます。子どもからは「町ができたら人が増えて駅を使いたい人が増える」「駅があると便利になり人が集まってくる」など多様な解釈が示され,草原教授は両立の可能性を提起しました。

2時間目の導入では,寺家駅や東広島駅のように,どんな駅も「駅の利用者はどんどん増え,町はどんどん大きくなり続けるのかな」という問いが投げかけられました。
まず,駅前のようすに違いがある安芸津駅と西高屋駅の動画を視聴し,「変だな探し!(課題発見)」を行いました。安芸津駅の動画からは「車両が2両しかないのにホームがやたら長いなあ…」,西高屋駅の動画からは「ホームの横に朝だけ開く高校生用の秘密の出口があるなあ…」の疑問が見つかりました。草原和博教授は,昔10両の客車をひいて呉線を走るSLの動画,西高屋駅前に車が一台停まっている写真,安芸津町・高屋町の人口変化を示したグラフ,学校数の変化をあらわす年表を提示し,じっくり「変だな」の理由を考えさせていきます。安芸津駅の「変だな」を探究した子どもは,「昔はS Lの長い電車が走っていた。今では学校・人口が減って,電車が短くなった」と回答し,町の衰退が駅に変化をもたらしたことに気づきました。西高屋駅の変だなを探究した子どもは,「学生がたくさん使うから別の出口があるのでは」「高屋では人口・学校が増えたから,朝は人が混んでしまう。混雑しないように,遅刻しないように」改札口ができたと答え,町の成長が駅に変化をもたらしたことに気づきました。
このような「変だな」の課題解決を受けて,「駅を使う人が増えて駅前が賑やかになると,嬉しい?それとも残念?」を選ぶアンケートを行いました。ほとんどの子どもが嬉しいと答える中,残念と答えた子どももいます。そういう子どもに理由を問うと,「環境破壊が起こる」「人が多くなると騒がしくなる」と答えました。駅前が発展しても,立場が違えば良いところも見えてくるし,悪いところも見えてくることを学びました。

2時間を通して,「変化」を視点にして駅のうつり変わりとその理由を説明し(1時間目),さらに駅の「変化」を発展と衰退の異なる視点から捉え,評価する(2時間目)ことのできた学習となりました。

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「外国から来た人にとって東広島市はくらしやすいか」(2022年1月19日)(クリックすると開きます)
1月19日:「外国から来た人にとって東広島市はくらしやすいか」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島市役所(市民生活課)から中継担当:川上由美,川本吉太郎
  • 東広島市議会からの中継担当:大岡慎治,玉井慎也
  • 学校技術支援担当:正出七瀬,津田晃希,永田誠弥,森本敬仁,山下光,山下弘洋
  • 事務局機器担当①:草原聡美、佐藤莉沙,田中崚斗
  • 事務局機器担当②(豊栄小学校):宇ノ木啓太,吉田純太郎,八木謙樹

 

 

2022年1月19日,東広島市内小学校6校13学級(三ツ城,原,板城,中黒瀬,高美が丘,豊栄)の4年生(416名)が参加し,「外国人市民」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目の導入は,東広島市の外国人市民の人数と人口割合を予想するクイズから始まりました。子どもたちはタブレットを使って回答しました。東広島市に在住する外国人市民は約7,000人です。多くの児童は,広島県で最も外国人市民の割合が多い市を「広島市」と予想しました。しかし実際は3.6%の「東広島市」でした。この数字は,他の市町村に比べても突出して多いことが,統計から確認されました。

1時間目の中心的な課題は,「なれない土地には,どんな「くらしやすさ」や「くらしにくさ」があるのだろう?」でした。事前に自分が外国に行って生活をするときには,どんなことで困りそうかを予想をしました。「言葉が読めない、話せない」「お知らせの文章が分からない」「学校の勉強が分からない」などのお困りがあがりました。そこで,家族の仕事の都合でドイツで生活をした吉田さん兄妹(小学生)へのインタビュー動画を視聴しました。授業についていけないなどの「くらしにくさ」はあるものの,サッカーを通して地元の友達と遊んだり,迷子になったときに優しく教えてもらえる「くらしやすさ」があることを聞きました。また結婚してアイスランドに移住した西田氏からは,物価が高いことや天候が不順なこと,アイスランド語がわからないという「くらしにくさ」がある一方で,外国人への差別は少ないこと,大学や高校の入試がないことなどの「くらしやすさ」があることを,LIVE中継で聞きました。
次に,東広島に住んでいる外国人市民はどこから来ているのかをクイズ形式で確認しました。グラフを見て,最多は中国であることを確認しました。その後,東広島の「くらしやすさ」と「くらしにくさ」について,留学生に直接尋ねる活動を展開しました。中国から来た孫氏,インドネシアからきたムティア氏,タイからきたスィダラー氏に東広島が「くらしやすいか」「くらしにくいか」を○×カードで回答していただき,なぜそう思ったかを話してもらいました。自然が豊かなこと,差別がないこと,イスラム教徒のためのハラルショップがあることなどが「くらしやすい」と評価される一方,ヒジャブをつけていると仕事(アルバイト)が見つからない,スマホ決済できるお店が少ない,ハラルの外食が難しいなどの「くらしにくさ」が指摘されました。

2時間目では,「外国から来た人にとって,東広島を「くらしやすいところ」にするにはどうしたら良いか」を考えました。まず各クラスで改善したい「くらしにくさ」を選び,問題の解決策を考えました。解決策を考えるにあたっては,「私でもできること(心がけ)」と「市こそするべきこと(しくみ)」の2つの側面から解決策を構想しました。また「市こそするべきこと」については,市役所や市議会の人に直接伝えることになりました。「私にでもできること」としては,ジャスチャーで伝えることや見た目で差別しないことなどが挙げられました。「市こそするべきこと(しくみ)」としては,看板やメニュー表を多言語で表示すること,翻訳アプリを開発すること,日本語教室を開催すること,キャッシュレス決済対応のお店を増やすことなどが挙げられました。
この指摘を受けて東広島市の生活環境部市民生活課の松井氏は,市では複数の言語で対応できる相談所を置いていること,話せるレベルに応じた日本語教室が開催されていること,市役所に英語・中国語・日本語を話すことができる職員がいることを教えてくださいました。東広島市議会員の北林議員は,看板を複数の言語で書くという児童の提案を取り上げ,電車やバスの案内を多言語にしていくこと,外国人に優しくしていくことが大切と述べました。鈴木議員は,病院で自分の体調を伝えるカードやホワイトボードを作るという児童の提案を取り上げ,病院だけでなく他の場所でも使える提案はないかなと問いかけました。子どもからは,自己紹介カードをつくったり,案内にピクトグラムを取り入れたりしてはどうかと回答がありました。鈴木議員は素晴らしい提案だと述べ,お褒めの言葉をいただきました。
最後に日本語教育を専門にする広島大学の永田良太教授からお話を伺いました。日本人が当たり前にしていることの中にも外国人にとっては困ることがたくさん眠っていること,隣の人が何か困っているのではないかと考える思いやりの気持ちを忘れないこと,積極的にコミュニケーションをとること,優しい日本語で話しかけること,外国人にとって住みやすいまちは,私たちにとっても住みやすいまちであること,などが話されました。

2時間を通して,「くらしやすさ・くらしにくさ」を視点に,外国人市民にとっての生活とその課題を引き出し(第1時),課題の解決策を構想し,「くらしやすさ」のために直接市役所や市議会に政策提言していく(第2時)社会科らしい学習となりました。

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「もしも東広島に「大学」がなかったら?」(2022年2月9日)(クリックすると開きます)
2月9日:「もしも東広島に「大学」がなかったら?」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島市下見から中継担当:玉井慎也,永田誠弥,八木謙樹
  • 学校技術支援担当:池田優子,川上由美,川本吉太郎,國重和海,佐藤莉沙,俵龍太朗,藤井冴佳,藤原瑞希,森本敬仁,山下光,山下弘洋
  • 事務局機器担当①:草原聡美,津田晃希,大岡慎治,今井祐介
  • 事務局機器担当②(吉川小学校):宇ノ木啓太,吉田純太郎,田中崚斗,正出七瀬

 

2022年2月9日,東広島市内小学校5校7学級(吉川,高屋東,高美が丘,福富,入野)の3年生(179名)が参加して,「大学と市の移り変わり」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目の導入は,大学と小学校・中学校・高校の違いを理解することから始まりました。地理学を専門にする広島大学の熊原康博准教授に登場いただき,大学の先生の仕事について紹介をお願いしました。大学の先生は,小中高の先生のように「授業」を行うだけでなく,「大発見・新発見」をする研究やその研究でわかったことを「社会に役立てる」社会貢献も使命にされていることをお話しされました。特に「大発見・新発見」をする研究が一番大事な仕事であることを強調されました。

その後,広島県内の大学の数,東広島市内の大学の数,東広島市にある大学の先生と学生が数についてクイズを行いました。子どもたちはタブレットを使って回答しました。県内には21の大学があり,その中でも東広島市には4つの大学があること,先生と学生は約1万8千人いることがわかりました。子どもたちは,広島県内では東広島市が2番目に大学が多いこと,先生と学生だけで約1万8千人がいて,さらにその家族を含めると,もっとたくさんの大学に関係する人が暮らしていることに驚いていました。

1時間目の中心的な課題は,「東広島市には,どうして大学が集まってきたのだろう?」でした。まず,地図や年表,グラフを用いて,東広島市にある4つの大学の位置と歴史,それに伴う人口の変化を確認しました。次に,1982年の空中写真と現在のドローン映像を用いて,広島大学周辺の土地利用を空から観察し,田や畑があったところに多くの建物ができていることを確認しました。その後,大学近くの西条下見にいる熊原准教授と中継を繋ぎ,現在の広島大学周辺の様子を地上から観察しました。学生用のアパート(住む)やスーパーマーケット(買う),ファストフード店(食べる),カラオケ(遊ぶ)など学生生活に必要な施設が集まった学生街ができている様子を確認しました。

次に,中心課題である「東広島市には,どうして大学が集まってきたのだろう?」に取り組みました。これまでの観察結果と副読本を活用し,東広島市に大学が集まる理由について予想しました。「人口が増えたから」「土地が広いから」「広島市から引っ越ししてきたから」「広い土地があり,人が少なく,建物も少なく,大きな研究や設備が整えられるから」などのように,昔の写真に注目して土地の広さを理由に挙げる学級もあれば,「市の面積がふえたから。二大プロジェクトでまちづくりが進められたから」「東広島市に住んでいる人が通うところがないので大学を作った。広い土地があったから。広島県の新しい発見が多く東広島市にあったから」「二大プロジェクトがあって大学に行きたい人が増えたから」などのように,副読本を参照して「賀茂学園都市構想」と「テクノポリス構想」に関連づけて予想した学級もありました。

2時間目では,1時間目の課題の解決から始まりました。「賀茂学園都市構想」と「テクノポリス」が東広島市のまちづくりの出発点であり,大学を東広島に招き集めることで町を元気にしようとしたこと,東広島市は大学のまわりに一緒に研究したい研究所や一緒に仕事をしたい工場や大学が集まり,さらにそこで働く人のための住宅団地が集まってできた「学園都市」であることを確認しました。

2時間目の中心的な課題は「大学は,私たちの生活とどんな関係があるのかな?」でした。事前のアンケートで,子どもたちは「大学生は勉強をしている人」というイメージがあることが確認されました。次に,3人の大学生についてインタビューをして,子どものイメージを検証してきました。多くの広島大学生は県外から来ていること,授業がない日は勉強以外にも趣味やサークル,アルバイトをしていること,アルバイト先で勤務している人はほとんどが学生であり,学生がいなければお店や塾を開けることができないことがわかりました。
その後「もしも大学が東広島になかったら…」という問いについて考えました。東広島市内の10の施設が書かれたカードを選び,もしも広島大学がなかったらその施設は「絶対にない」「たぶんない」「それでもある」と記された数直線上に位置付け,広島大学がない東広島市のようすを想像しました。子どもたちは,学生アパートや高美が丘小学校は大学がなければ「なかった」と想像する一方で,フジグランや吉川工業団地は大学がなくても「あった」のではないか,と想像しました。
想像をした後にブロックダイアグラムを用いて理由を説明しました。高美が丘小学校のカードを選んだ2つの学級は,「広島大学→人(学生・先生)が増えた→先生の家族→子供が増えた→高美が丘小学校」と説明したり,「広島大学→家やビルが増えた→スーパー,買う場所が増える→買う人・働く人が必要→人が集まる→高美が丘小学校」と表現したりしていました。

最後に熊原准教授が解説と学級への質問をしました。一見関係ないように見えても,このように図に表すことで,大学と東広島市の様々な施設の関係が見えてくること,どの学級もこれまでに学んだことを踏まえて考えることができていて素晴らしい,とまとめられました。

2時間を通して,「大学と市の関係」を視点に,東広島市の変化と大学との切っても切れない深い関係について学び(第1時),一見自分とは関係なさそうな大学も私たちの生活と直接的・間接的につながっていることに気づく(第2時)社会科らしい学習となりました。

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「『わたしたちの東広島市』の表紙にぴったりな写真を選ぼう」 (2022年3月9日)(クリックすると開きます)
3月9日:「『わたしたちの東広島市』の表紙にぴったりな写真を選ぼう」 
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 和歌山県からの中継:津田晃希
  • 山口県からの中継:大坂遊
  • 東広島市鏡山から中継担当:川上由美,川本吉太郎,森本敬仁,佐藤莉沙,八木謙樹
  • 学校技術支援担当:池田優子,國重和海,玉井慎也,永田誠弥,藤原瑞希,山下光,
  • 事務局機器担当①:草原聡美,両角遼平,藤井冴佳,
  • 事務局機器担当②(風早小学校):宇ノ木啓太,吉田純太郎,田中崚斗,山下弘洋

 

2022年3月9日,東広島市内小学校3校3学級(原,豊栄,風早)の4年生(51名)と,広島大学附属小学校の4年生(32名)が参加して,「東広島市の特色」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目は,現行の社会科副読本『わたしたちの東広島市』の表紙を確認するところから始まりました。事前アンケートの結果,児童の多くは表紙の掲載写真8枚が,どこの・何を撮影した写真かについてよく認知していないことが分かりました。そこで児童とあらためて写真を丁寧に眺めるとともに,写真の選定理由を予想させました。その後,写真を選んだ当事者である東広島市教育委員会の長野氏に登場いただきました。長野氏は各写真の被写体について解説するとともに,「東広島市らしい写真」「9つのいろいろな町から選んだ」と説明がありました。参加校の児童には,表紙に載せたい写真があればぜひ提案してほしいとのコメントをいただきました。

これを受けて今回の学習課題は,「『わたしたちの東広島市』の表紙にぴったりなオススメ写真を選んで,提案しよう!」となりました。その直後,草原教授は「ため池」の写真が一番だ!と提案しました。子どもたちに草原教授の提案に納得できるかをアンケートしたところ,52%の児童は納得できる,32%は納得できないと答えました。

草原教授は「ため池」が東広島市「らしい」光景であると主張し,その根拠として以下の3つの理由を提示していきました。最初に,ため池の数を示すグラフを示した。広島県は全国で2番目にため池が多い県であり,広島県内では東広島市が最も多い市であることが分かりました。次に,東広島市内のため池の分布を示す地図を紹介しました。ため池は市内9つの町に偏りなく広がっていることが読み取れました。最後に,奥田大池周辺の土地利用を伝える中継動画と地形断面図をみせました。黒瀬川よりも土地が高いところで米作りや野菜づくりをするには,ため池と用水路の水が欠かせないことが見て取れました。なお,周南市や和歌山市の平野部のようすも中継で眺めて,ため池に頼る賀茂台地との違いを確認しました。

以上のデータと観察結果を基づいて,東広島市「らしさ」の条件を再度考えました。その結果,①東広島市は「他のまちと比べて多い・目立つ」,②東広島市なら「どこにでもある」,③東広島市の人々のくらしと「結びついている」が条件となりうること,そして「ため池」はこれら3つの条件を満たしていることがわかりました。これで「ため池」は表紙にふさわしいと納得する児童もいれば,依然として釈然としないとした児童もいました。

2時間目は,(草原教授に対抗して)自分たちで表紙にふさわしい写真を選ぶ活動を行いました。1時間目に学んだ「らしさ」の3条件を踏まえて,この学習課題に取り組むことになりました。参加校からは,酒蔵,じゃがいも,オオサンショウウオ,ツツジ,松の木,牡蠣,びわ,池,大学,エコパーク,じゃぼん,ハート島などが提案されました。

話し合いの結果,「じゃがいも」(風早小),「エコパーク」(原小),「酒蔵」(豊栄小),「大学・学校」(附属小)の4つに絞り込まれ,これらが表紙にふさわしい理由を分担して発表することになりました。「酒蔵」を担当した豊栄小は,①東広島市に酒蔵は10ヶ所あって,県内の他の市と比べても多い,②西条・安芸津など市内のいろいろなところにある,③毎年酒まつりがある,お酒は毎日の生活の中で飲まれている,などの理由を挙げました。「大学・学校」を選んだ附属小は,①東広島市に4つも大学があり,1万人をこえる学生がいる(県内の他の市とくらべても多い),②学校は市内のどこにでもある,③大学・学校は毎日通うから日々の生活に結びついている,などの理由を述べました。

最後に附属小の子どもに,東広島市の3つの学校の提案についてコメントを求めました。代表の児童は,「酒蔵」の提案が良かったと述べ,その理由として「昔から酒づくりを行っている,(東広島市で生産が多い)米などの農業にも関わっている」と理由を述べました。教育委員会の長野氏は,各学校とも基準に基づいて写真を選ぶことができたこと,東広島市の外の視点から市内の特色を考える機会が得られたこと,そして米づくりと酒づくりの関係に気づくことができたこと,を高く評価されました。

2時間を通して,専門家の提案を手がかりに地域の特色を捉える基準を分析し(1時間目),その基準を活用して自分たちが捉える地域の特色を提案する,社会科らしい学習になりました。

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[新聞] 2021年6月23日(水) 中国新聞朝刊 24面
「5小参加 広域交流型授業 東広島 中継で地域のバス学ぶ」
2021年6月23日(水)の中国新聞朝刊(24ページ)教育特集にて、草原和博教授の授業実践記事が掲載されました。「中国新聞PLUS日経テレコン21」会員の方はログインして内容をご確認頂くことができます。また、広島大学の図書館のPCもしくは学内サーバーから広島大学図書館のデータベースページを経由して「中国新聞PLUS日経テレコン21」にアクセスすることで、どなたでも無料で記事を閲覧することができます。

[新聞] 2021年7月1日 The weekly PressNet Vol.1056 2面
「見学の代わりに大学生が中継 東広島市5つの小学校オンラインで一緒に地域学習」にて、草原和博教授の授業実践記事が掲載されました。

[Web] 2022年3月7日(月) Town & Gown Office
コモンプロジェクト : 広域交流型オンライン社会科地域学習(広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI))」

 

Town & Gown Office(タウン・アンド・ガウンオフィス,TGO)は,広島大学・東広島市が推進するTown&Gown構想に基づき,地域の発展と大学の進化を目指して活動しています。このたび,広域交流型オンライン社会科地域学習がTGOの「コモンプロジェクト」に認定されました。社会課題と学術研究の2つが正しくマッチングしたテーマとして高く評価いただいております。併せて,「もしも東広島に「大学」がなかったら」(2022年2月9日実施)の授業の取り組みをTGOのホームページにてご紹介いただきました。本企画の授業と運営の魅力に溢れた記事です。どうぞご一読ください。

TGOのホームページより紹介記事をご覧いただけます。▶︎こちら
広島大学全学のホームページでも当該記事をご紹介いただきました。▶︎こちら


[報告] 2022年5月17日(火) 
広域交流型オンライン社会科地域学習の取組成果が広大リポジトリに登録されました

2021年6月実施の取組報告書

2021年7月実施の取組報告書

2021年9月実施の取組報告書

2021年10月実施の取組報告書

このたび,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習の取り組みがEVRI研究プロジェクト叢書Vol.8-11として刊行されました(2022年3月発刊)。
2021年度より,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を開始しました。本プロジェクトでは、GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して,市内各地からの中継を交えながら、東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的な学びを実現します。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートしております。このたびの叢書では、各月の授業の詳細な記録が整理されています。
なお本書は,広島大学リポジトリに登録されております。どなたでも無料で閲覧が可能ですので,どうぞご一読ください。広島大学リポジトリへのアクセスは▶︎コチラ(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_journals/BERP)

(2022年6月23日 最終更新)


[TV] 2022年8月28日(10時05分~10時50分)NHK総合
「明日をまもるナビ」にて、2021年9月期「防災」の授業実践が放送されました。


 

 

 

本企画に係る研究成果一覧

 

草原和博(2021)「越境的対話による教科教育の教室空間の変容―社会科を例に―」『中国四国教育学会第73回大会シンポジウム成果報告書・資料集』,pp.13-20.

宇ノ木啓太(2022)『オンライン学習を導入した社会科地域学習の変革―理解主義の課題の克服を目指して―』広島大学大学院人間社会科学研究科修士論文.

草原和博(2022)「学びの民主化ツールを活用して地域学習を変革する」『社会科教育』明治図書,2022年3月号,pp.10-13.(明治図書ONLINE教育記事データベースより記事をご購入いただけます▶こちら

草原和博(2022)「越境的対話による教科教育の教室空間の変容―社会科を事例に―」中国四国教育学会『教育学研究ジャーナル』第27号,pp.47-52.(J-STAGEよりどなたでも論文を閲覧いただけます▶こちら

草原和博ほか(2022)「広域交流型オンライン社会科地域学習の取組」広島大学教育ヴィジョン研究センター・草原和博・吉田成章編『教育の未来デザイン―「コロナ」からこれからの教育を考える―』溪水社,pp.122-131.(書籍の詳細については「ポスト・コロナの学校教育を提起する」ページをご参照ください▶こちら

吉田純太郎・宇ノ木啓太・草原和博(2022)「越境的な遠隔教育を子どもはどう受け止めたか―東広島市「広域交流型オンライン社会科地域学習」参加児童のアンケート回答から―」『広島大学大学院人間社会科学研究科紀要 教育学研究』第3号,pp.81-90.(広島大学学術情報リポジトリよりどなたでも論文を閲覧いただけます▶こちら

 

ContactEVRIとの共同事業等へのお誘い

EVRIは、自らのミッションとヴィジョンを達成するために、共同事業、共同研究、受託研究および講演等をお引き受けいたします。
ご依頼やご質問は、EVRIの運営支援チームに遠慮なくお問い合わせください。連絡先は次のとおりです。

e-mail :evri-info@hiroshima-u.ac.jp
Tel & Fax: 082-424-5265
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