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【2021.09.11】第90回定例オンラインセミナー「政治的中立性をめぐる日本の教師(1) 日本の学校で論争問題を扱うには? ―ヘス『教室における政治的中立性』を踏まえてー」を開催しました

公開日:2021年09月29日 カテゴリー:開催報告

 

.開催報告

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、ユニットの活動の一環として、2021年9月11日(土曜日)に、第90回定例オンラインセミナー「政治的中立性をめぐる日本の教師(1) 日本の学校で論争問題を扱うには? ―ヘス『教室における政治的中立性』を踏まえてー」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に89名の皆様にご参加いただきました。

「政治的中立性をめぐる日本の教師」シリーズは、日本の民主主義教育の実現のために「論争問題学習」に注目しています。本シリーズは、(1)日本の教師は、「政治的中立性」や「論争問題学習」をどのように捉えているのか、(2)(1)の結果を踏まえると、今後どのような教師教育や専門性開発が求められるか、について考察を深めていきます。なお、本シリーズは、科学研究費_若手「社会科教師は論争問題をどのように捉えているか―「政治的中立性」との関係から」(研究代表者:川口広美)の研究公表の一環として実施されるものです。

シリーズ第1回となる本セミナーは、論争問題学習を行いたいと考えている教員志望者が、「より民主的で政治的な空間の中で論争問題学習を進める上での課題とは何か?促進していくには何が必要か?」について議論を深めることを目的としました。

本セミナーでは、充実した議論を行うため、課題図書としてHess、 D. (2009) Controversy in the classroom(日本語版:『教室における政治的中立性』、2021)を取り上げ、考えをまとめてきたうえ、4つのグループに別れて議論を深めるという形式で行われました。なお、各グループのファシリテート、広島大学・愛媛大学の学生・院生が務めました。広島大学からは,玉井さん(D1)・田中さん(M1)・野瀬さん(M1)・吉田さん(M1)がファシリテーターとして参加されました。また愛媛大学からは,矢野さん(M2)・沖村さん(M2)・峰山さん(M2)・木下さん(B4)がファシリテーターとして参加されました。

 

はじめに、司会の川口広美先生(広島大学)、井上昌善先生(愛媛大学)より、本セミナーの趣旨が説明されました。論争問題学習の定義や重要性、学校教育で行うことの意味がセミナーの参加者全体で確認されました。さらに、①将来の教師、②従来型の教育の受け手、③学校の内と外の世界の媒介者としての教員志望学生の位置づけが示され、討論者としての教員志望学生、それを見つめる観覧者としての教師教育者という場を設定した意味や意図が説明されました。

上記の本セミナーの趣旨を踏まえ、第1セッション「自分が考える論争問題学習とは?」が行われました。第1セッションでは、アイスブレークの後、書籍の内容を踏まえ、①論争問題学習に取り組みながらも異なる目的をとる3名の教師の中で誰に最も共感するか、②どのような種類の問題を取り扱うことが重要であるか、について検討しました。セッションでは、議論のスキルや批判的思考を高めるという目的の重要性はあるが、まずは意見の多様性や異質な意見に触れる機会を充実させる必要があるのではないか。また、議論をどのように評価するかで,議論の目的やトピックは変わりうることなどが論点として上がっていました。

続いて、第2セッションが「日本で論争問題学習を行う際の課題は?どのように進めたらよいか?」と題して行われました。第2セッションでは、第1セッションと比べても活発な意見交換が見られ、論争問題学習を実践するのにあたり、保護者や管理職からの理解が得られるのか。子どものニーズと教師のさせたいことのミスマッチが起こるのではないか。子どもの議論をマネジメントすることへの不安、などついて懸念が出されました。また、そうした課題を乗り越えるためには、教材研究の支援、議論のファシリテートに関する教授技術、子どもや保護者への説明やそのための環境整備をより充実させることの重要性に議論は発展しました。

 

以上2つのセッションの後、観覧者から質問や意見が多数寄せられました。具体的には「学校文化として教師の意図に沿わない意見に対して、ネガティブな評価を付けがちなことへの悩み」「論争問題を議論する力を育成するには時間がかかり、学校文化との兼ね合いも大きく難易度が高い」といった現職教員としての悩みや葛藤、「子どもの関心がある/ない話題にどう取り組んだらいいか」というものがありました。こうした意見・質問に対して活発な意見交換が行われました。

 

最後に総括として、コメンテーターの渡部竜也先生(東京学芸大学)からは、今回の課題図書の翻訳に至った経緯や意図の説明が行われました。「中立」は教師が意見を言わないこととする日本の学校教育の前提に疑問があったこと。論争問題を議論することから忌避する傾向への反発が、研究の原点にあったことなどが示されました。次に、草原和博先生(広島大学)からは、日本において論争問題学習の位置づけが変化してきた時代背景についての説明の後に、キーワードでもある“Tip”について、取り上げるトピックそのものの性質だけでなく、教師の側の判断基準も問われていること。また、教えるべき内容や論点を選択する教師の行為そのものが政治的であり、その点を自覚することの必要性について問題提起がありました。

 

今回のセミナーを踏まえ、EVRIは以下のような政策提言を構想してします。

 

①論争問題学習を進めるにあたっては、保護者や管理職などの周辺の理解が欠かせません。そのため、論争問題学習の意味や意義について教科を超えて発信し、理解を促進していく仕組みをつくる必要があります。

 

②論争問題学習の具体的なイメージを示したり、方略の多様性を提供したりするために、教材や事例を収集・掲載し、方向性を共有する教師のプラットフォームづくり支援が欠かせません。

 


今後もEVRIでは「平和・市民性教育」ユニットを中心に、「政治的中立性をめぐる日本の教師」について引き続き検討してまいります。


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。

 


*第90回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。


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