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【2026.02.16-18】EVRIの研究者らがインド・Vedavalli Vidyalaya Schoolsを訪問しました。

公開日:2026年02月26日 カテゴリー:開催報告

2026年2月16日(月)から18日(水)まで、EVRIの金鍾成准教授と武島千明特命助教、岡山大学の宮本勇一講師(元EVRI教育研究推進員)の3名が、インドにあるVedavalli Vidyalaya Schools(以下、VV school)を訪問しました。この訪問は、以前、PELSTE 2021に参加していたIndira Subramanian氏をとおして実現したもので、Lesson Studyによる国際的な交流の一環です。

3名が訪問したVV schoolでは、Indira氏とVidya Sampath氏(VV school・Correspondent)を中心に、Lesson Study実践がなされています。日本の授業研究研究者として、インドでLesson Study実践に取り組んでいるVV schoolを訪問した3名は、Lesson Study実践の観察ならびに文化的な交流を行いました。

 

●1日目(2026年2月16日(月))

Walajapetキャンパス(金・宮本)、Ranipetキャンパス(武島・Indira)に分かれてLesson Studyに参加しました。

【Walajapetキャンパス】

金・宮本が、Walajapetキャンパスを訪問しました。児童生徒たちによる伝統的な踊りで厚く歓迎していただきました。
メインイベントである授業研究の前に、生徒会の代表がキャンパスを案内しました。生徒らは、学校の特色ある取り組みや生徒らの授業での学習成果を発表しました。あるブースでは生徒らが自ら立てた社会的課題に対して科学技術を駆使して解決提案するプレゼンテーションがなされました。一人の生徒は、女性が身の安全を守るための時計型の防犯装置を開発していました。

続けてHebziba Rani氏による第4学年の英語科のLesson Studyを行いました。「図書館の物語本を読もう」という単元で、学校図書館から借りてきた物語本を読んで、内容の理解を通して読解力を高めることを目指した授業提案を見学しました。事前検討会では、単元を見通した目標の設定、授業目標の記述の仕方などが議論され、明確なゴール意識をもつことの重要性が指摘されました。
授業では、子どもたちがそれぞれ自分の好きな物語を読み、教師が用意した要約のカードを物語の順序に合わせて並べるStory mappingの活動を行いました。教師は、子どもたちが読む物語本が断片的に要約されたカードを20人分それぞれに用意していました。子どもたちは集中して読書に取り組み、物語の流れをカードを並べて再現する活動に積極的に取り組んでいました。
事後検討会では、教師および教師集団の長きにわたる授業準備の成果がとてもよく見えたことや、教師の個別生徒へのフィードバックの丁寧さ等が評価されました。また、カードの並べ替えがどのくらい読解力に接続されるのか、過度な個別のフィードバックが授業全体の流れを見失わないか、進度の違う子どもたちへの配慮をどのように行うかなどが議論されました。

【Ranipetキャンパス】

武島とIndira氏 がRanipetキャンパスを訪問しました。
キャンパスでは、Lesson Studyに参加しました。参加したのは、Sureka氏による第4学年の授業です。
事前検討会では、授業者であるSureka氏の所属するLesson Studyグループより、授業計画の意図や学級の子どもたちの学習状況が共有されました。
その後、水に関するプロジェクト学習「Water and us」の第7/9時として、理科的な内容を扱った授業が実施されました。授業では、水から不純物を取り除く方法として「ろ過」が取り上げられ、実験器具の使用方法や「ろ過」の手順が確認されました。子どもたちは、グループに分かれて実験の手順を確認し、ワークシートを作成していました。最後に、ろ過をとおして不純物が取り除かれた水について「飲むことができるか」という問いかけがなされ、次時の活動に向けた見通しが共有されました。
授業の後には、Ranipetキャンパスの先生がた、Indira氏とともに、事後検討会がなされました。事後検討会では、Lesson Studyグループの教員より、ワークにおける子どもの参加状況に関する話題や、学校全体で育成を目指している「読解力(Reading skill)」の育成に関する話題が挙げられました。これは、授業のなかで、ワークシートに記載された実験手順を読み、その通りに実施することが重要な要素であったためでした。また、Indira氏は、子どもたちのワークシートへの記述をもとに、次の授業での手立てを提案しました。武島は、授業のなかで先生と子どもたちがともに、あたたかな雰囲気を作り出すことができていたことを評価しました。そのうえで、単にスキルの育成に注力した授業づくりを目指すのではなく、現在の授業のなかでなし得ていることにもとづいた目標設定をしてみることを提案しました。

この日は、Lesson Studyのほか、学校の子どもたちとの交流がなされました。全校の子どもたちによる歓迎のセレモニーの後、代表の子どもが学校の紹介をしたり、校内を案内したりしてくれました。

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●2日目(2026年2月17日(火))

VV schoolのWalajapetキャンパスにて、金・宮本・武島の3名は、①生徒との交流、②Lesson Studyへの参加、ならびに③日本のLesson Study(授業研究)の紹介、の3つを行いました。

「①生徒との交流」では、武島と宮本が日本の文化を紹介しました。かごめかごめや早口言葉などの子ども遊びを披露し、生徒らとの交流を深めました。

「②Lesson Studyへの参加」では、Dianaselvi氏による算数科のLesson Studyに参加しました。
事前検討会では、授業者であるDianaselvi氏の所属するLesson Studyグループより、授業計画の意図や学級の子どもたちの学習状況が共有されました。算数の授業づくりにおいて、具体段階(Concrete Stage)-図示段階(Pictorial Stage)-抽象段階(Abstract Stage)の三段階で進む授業設計理論を援用することが指摘されました。
授業では、四角形の面積を求める公式を内容に、はじめは1cm×1cmの正方形のタイルを、3cm×5cmの長方形に埋める具体的操作を行い、一つ一つ数えて全員で15cm2という値を導き出しました。具体的操作段階の次は図示段階となり、タイルを離れて、マス目の書かれた長方形の面積を一つずつ数えて求める活動を行いました。これらの学習の後に、今度はすばやく答えが求められるように、Length ×Breath(縦×横)=面積という公式を導き出しました。これを活用して、最後の抽象化段階では、マス目の消えた辺の長さだけが記された長方形の面積を求める活動を行いました。授業の最後には、ボードが二人に一つずつ配られ、ボードに輪ゴムを括り付けて自由な長方形を作り面積を求める活動が行われました。
授業の後には、VV schoolの先生がた、Indira氏とともに、事後検討会がなされました。事後検討会では、授業中の課題や問題をどのように教師の問いから子どもの問いにするかが議論されました。数えることで面積を求められることを知った子どもたちが、なぜ2×6の長方形でわざわざ掛け算をしなければならないのか。課題を変えて、100×120のような大量のマスでは数えていられないというような葛藤を子どもたちに生み出すしかけが必要ではないかといったことが議論されました。また、学習課題をもっと真正な文脈に引き付けるにはどうすればよいかということも議論されました。花壇や黒板など、子どもに身近な題材で、教師の困りごとを子どもたちに伝え、解決してもらうなどの設定が、面積の計算の必要性や有用感、学習内容への参加度を変えるきっかけになるのではないか、といったことが議論されました。さらに面積の公式がこれでよいのかについての議論も展開されました。はたして面積を求める公式は、指導書通りのLength×Breathでよいのか。どちらが縦でどちらが横か。今は良くても三角形や正方形の際にはどうなるのか。子どもたちの認知と算数科教育上の体系の問題にまで議論は及び、白熱しました。

「③日本のLesson Study(授業研究)の紹介」では、まず、金・宮本・武島の3名が、1日目・2日目に参加した、VV schoolでのLesson Studyの感想や気づきを共有しました。その後、これらの気づきもふまえつつ、金が、VV schoolの教員ら向けて日本のLesson Studyの特徴を説明しました。

 

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●3日目(2026年2月18日(水))

Walajapetキャンパス(武島・Indira)、Ranipetキャンパス(金・宮本)に分かれてLesson Studyに参加しました。

【Walajapetキャンパス】

武島とIndira氏 がWalajapetキャンパスを訪問しました。

まず、子どもたちからインドの文化の紹介がなされました。初日に子どもたちが見せてくれた踊りを教えてもらったり、バナナの葉を用いた飾りの作り方を教えてもらったりしました。子どもたちの手際のよさや、自国の伝統文化への理解に、多くを学ぶことができました。

その後、Lesson Studyに参加しました。参加したのは、Soniya氏による第6学年の英語の授業「Reading comprehension and Note making using Library Resources」です。
事前検討会では、授業者であるSoniya氏の所属するLesson Studyグループより、授業計画の意図や学級の子どもたちの学習状況が共有されました。授業のなかでは、Lesson Studyグループの実践をとおして編み出した「ポップコーン・ボキャブラリー」という方法論を援用することが説明されました。
事前検討会の後、授業が実施されました。授業では、まず、教室で行われた導入の活動では、感情を表現するSpeakingのワークがなされました。その後、文章読解のグループワークが行われました。子どもたちはグループで協力しながら、先生から与えられた1つの文章を精読していました。その後、図書館へ移動し、新聞の読解の個人ワークが行われました。子どもたちは、新聞の文章を読み、理解した内容を要約してワークシートに記入していました。
授業の後には、Walajapetキャンパスの先生がた、Indira氏とともに、事後検討会がなされました。事後協議会では、Lesson Studyグループの教員やIndira氏により、学校全体で育成を目指している「読解力(Reading skill)」の育成に関する議論がなされました。授業での子どもたちのすがたをもとに、どうすれば「読解力(Reading skill)」の育成を目指すことができるか、議論がなされました。武島は、「読解力(Reading skill)」が「書くこと」、「話すこと」、「聞くこと」など、「読むこと」以外の能力と分かちがたいものであることを共有しました。そのうえで、何をこそ「読解力が向上している」と評価するのか。そもそも、先生がたの育成したい「読解力」とはどのようなものなのかを質問しました。

最後に、3日間の課程の修了証(Certificate)がVV schoolの先生がたに授与されました。

【Ranipetキャンパス】

金と宮本がRanipetキャンパスを訪問しました。ここでもはじめに生徒らの案内による校内見学が行われ、この地域にゆかりのある食べ物や、編み物を体験し、地面に描く「コーラム(Kolam)」を練習しました。

その後、Lesson Studyに参加しました。授業はUma氏による第7学年の英語「伝記的文章:読解とノートテイク」でした。事前検討会では、伝記的文章を読み、伝記が伝えようとする人物の教訓的概念を理解し、情報を整理したうえで短く要約する力をつけることを目指すと実践者より報告されました。授業研究チームでの長きにわたる授業検討の積み重ねと微調整の過程が報告され、同校における同僚間の支え合う文化の高さが窺えました。
授業の前半は、教室にて、伝記的文章の構成の整理およびアブドゥル・カラームという偉人の伝記を実際に読み要約する活動が行われました。導入のクイズで場が和んだのち、成育歴、達成、貢献、キャリア、人物像といった伝記的文章の構成要素について子どもたちの意見を軸に整理されました。実際に一つの偉人の伝記を読んでみようという課題が提示されました。アブドゥル・カラームの伝記が5つの要素に分けられた、2~3頁ほどの文章が用意されていました。各班はそのうちの一つの要素について要約する活動に取り組みました。要約活動の後、全体で成果を持ち寄ってアブドゥル・カラームの伝記の要約を完成させました。
授業後半は図書室に移動し、各自が好きな伝記の内容を要素に沿って要約する活動が行われました。最後に今日の活動のリフレクションを書く時間が設けられ、壁の模造紙に子どもたちの活動の感想や学びが可視化されていきました。中には授業研究に参加できてうれしいという声もありました。
事後検討会では、Uma氏と生徒らの相互交流的な授業の練りあげが高く評価され、子どもの意見が板書や授業の重要な部分に生かされていくことの重要性が確認されました。また伝記を読むことの意義についての議論も展開されました。人生の教訓や、人生へのインスピレーションを受け取るといった「(伝記的文章を)読むことの喜び」が、授業の冒頭で確認された一方で、授業内活動のほとんどが伝記的文章を構成要素に分けて分析的に整理するトレーニングとなっていたギャップが指摘されました。トレーニング的な読解活動と「読む喜び」をつなげていくために、子どもの学習要求を受け止め、伝記から受け止めたメッセージを議論していくことの重要性が指摘されました。

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総じてVV Schoolの教員・管理職が全力を挙げて組織づくりと授業づくりにはげみ、授業ならびにLsson Studyを3日連続で大成功にておさめることができました。帰国の間際まで同校の先生方と生徒たちとの語らいは尽きず、記念に残る交流となりました。
また、インドの地元新聞社4誌が、日本の研究者がVV schoolでの取り組みに参加したことを報じるなど、今回の交流は地域にも広く関心を寄せられました。

VV Schoolがインドでの本格的なLesson Studyの端緒を切りました。今後も、VV schoolでのLesson Studyと、インドとEVRIとの友情がますます発展していくことを心より願います。

(文責:武島千明宮本勇一金鍾成

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