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広域交流型オンライン社会科地域学習の取組みを報告します【東広島市を外国人市民にとってくらしやすいまちにするには?】(2023.02.22)

公開日:2023年03月28日 カテゴリー:開催報告

 

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広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)(プロジェクトリーダー:草原和博教授)は,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を実施します。子どもの一人一端末と学校のICT機器を活用しながら,また地域からの中継を交えて,対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。なお,授業の参考コンテンツとして,EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ

本年度も毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり,交流したりしながら学びを深めることができます。

目 的
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

実施内容
〇 「市内の小学校」と「学習対象となる地域等」と「広島大学」がオンラインでつながり遠隔授業を行う。
〇 遠隔授業の全体進行は、大学の担当者が行う。各教室での指導は、各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し、授業準備、授業支援、後片付け等を行う。
1年間の計画案


東広島市を外国人市民にとってくらしやすいまちにするには?(2022年2月22日)

2月22日 :「東広島市を外国人市民にとってくらしやすいまちにするには?」
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 市長室からの中継:川本吉太郎,藤井冴佳
  • 学校技術支援担当:片岡望咲,近沢奈々子、大岡慎治,玉井慎也,小野郁紀,森本敬仁,森俊輔,神田颯
  • 事務局機器担当①(広島大学):大坂遊,髙須明根,草原聡美
  • 事務局機器担当②(三永小学校):両角遼平,八木謙樹,國重和海,内田智憲,吉田純太郎

2023年2月22日,東広島市内小学校6校10学級(寺西小学校,郷田小学校,三永小学校,板城西小学校,豊栄小学校,河内小学校)の4年生(270名)が参加し,「外国人市民」をテーマとする遠隔授業を実施しました。今回のテーマは,「東広島市を外国人市民にとってくらしやすいまちにするには?」。児童らが外国人市民の声を手がかりに,まちづくりの施策を構想し,それを市長に向けて提案しました。

本時は,「外国人市民」に関する基礎的情報の整理からスタートしました。まずは①定義です。「外国から東広島市に来て住んでいる人」のことを,公式には「外国人市民」と呼ぶことをみんなで確認しました。次に②出身国です。統計グラフを読み取りながら,東広島市には,多い順に中国(38%),ベトナム(18%),フィリピン(6%),韓国(5%),インドネシア(4%)から来た外国人市民が多く暮らしていることを確かめました。また各国の位置を黒板上の白地図に書き込むことで,外国人市民は日本の近くの外国(アジア)から多く来ている傾向に気づきました。次に③使用言語です。児童は,東広島市の広報誌はいくつの言葉で発行されているかのクイズに答えました。5か国語(日本語・英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語)の答えには驚きを禁じえませんでした。さらに④人数です。東広島市に住む外国人市民は約8,000人で,人口比でみると広島県内の市町で一番多いことが分かりました。最後に⑤居住目的です。なぜ東広島市にはたくさんの外国人市民が暮らしているのか,その理由を予想します。市役所の資料によると,永住を除けば,留学(=勉強)や技能実習(=仕事)のために来ている人が多いことを知りました。
以上①から⑤までの情報を踏まえて,T1は東広島市にやってくる外国人市民の気持ちを予想させました。ある児童は「日本についてたくさん勉強したい」という意欲にあふれているのではないか,別の児童は「食べ物や服装,言葉で困っているのでは」と考えました。そこで今回の授業では外国人市民のお困りやお悩みに応えることをめざし,1時間目のめあてを「外国人市民にとって,東広島市はくらしやすいか?」に設定しました。

この課題に応えるために,1時間目は外国人市民の声を聞く活動を行いました。
まず,ベトナム人技能実習生へのインタビュー動画を視聴しました。病院で病気の症状を伝えたり,漢字で書かれた薬の注意書きを読んだりすることが難しいこと。モノの値段が上がるのに給料があがらないこと。1つの部屋に2人で寝泊まりする狭い生活環境にあることを,実習生の語りやT1の補足を受けて認識しました。
次に留学生と対話をしました。参加学級は3つのブレイクアウトルームのいずれかに入り,中国,スリランカ,インドネシアの留学生から東広島市の暮らしにくさについて聞き取りしました。質問もしました。留学生は以下のような経験を話し,その後に参加校全体でも共有されました。
・中国人留学生……①バスの便数が少ない。車がないと遠くに行くことができずに困る。②キャッシュレスで決済のできる店が少ない。中国では屋台でも電子マネーが使える。お年玉を電子マネーで渡すこともある。財布は持ち歩かないのがふつう。しかし,東広島市は電子マネーに対応していない店が多く,来店を諦めたことがある。
・スリランカ人留学生……①食事配達サービスが整っていない。1人暮らしの留学生は,忙しかったり病気で買い物に行けないとき,デリバリーサービスを使いたい。②重要連絡が日本語のみ。「水道管凍結にご注意ください」「停電工事のお知らせ」「台風接近時のお願い」といった連絡が日本語だけで書いてあり,読むのに困った経験がある。
・インドネシア人留学生……①公共施設に礼拝室がない。ムスリムは1日に5回お祈りをする。しかし,スーパーや市役所といった場所に礼拝用の部屋がないので困っている。②ムスリムが食べることのできるハラルに対応したレストランが少ない。イスラムでは豚肉と酒も禁止されている。友人から誘われても,気軽にお店に行けない。

ここまで聞いた技能実習生や留学生の声を踏まえて,第2時間目は「外国人市民にとって,東広島市がくらしやすいまちにするには,どうしたらいいか?」を考えることになりました。特別ゲストとして高垣広徳・東広島市長が紹介され,児童らはとても驚き,俄然張り切りました。また,コロンビア,オーストラリア,オーストリアから授業見学に訪れている外国人ゲストの助言も受けながら,まちづくりの施策を協議しました。その結果,次のようなアイデアが提案されました。
・大事な連絡が日本語だけ→→案内にQRコードを付けておく。それを読み取れば外国語で読むことができるようにする。翻訳アプリの入ったスマートフォンを市が提供する。
・お祈りの場所がない→→役所や文化ホールなどに礼拝室をつくる。礼拝室があることをお知らせる看板・ポスターを掲示しておくとなおよい。
・病気の症状を伝えにくい→→病院やドラッグストアに通訳を置いたり,外国人医師を雇ったりする。外国人専用の病院を建てる。
提案を受けて,市長は,①外国人との円滑なコミュニケーションを図るためにスマートフォンを用いるアイデアを評価したい,②多文化共生を実現するためにムスリムの礼拝室を設けることを検討したい,③東広島市では既に外国語対応の病院リストをホームページ上で公開している,④病院を新たに建設することはお金に限りがあり簡単ではない,旨を述べました。市長のコメントと励ましを受けて,児童らは,限られた資源を効果的に活用しながら街づくりを行うことの意義を考えることができました。
授業の最後には,日本語教育を専門としている本学の永田良太教授からもコメントをいただきました。日本人・外国人の別なく,同じ東広島市民として困っている人がいたら助け合うことの必要性をご説明いただきました。

2時間の学習を通して,児童の「外国人市民」に対する認識は次第に洗練されていきました。国際化の課題は多様で,それらを一挙に解決するのは容易ではありません。しかし,市長への政策提言という活動を通して,(普段は耳にすることない)いろいろな声に耳を傾けながら課題解決に取り組む姿勢を養うことができました。遠隔授業ならではの,人権意識と社会参画の意識を養う授業を提案することができました。

2023年2月期第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2023年2月期第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

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