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広域交流型オンライン社会科地域学習の取組みを報告します【市のうつりかわり】(2023.01.17)

公開日:2023年02月06日 カテゴリー:開催報告

 

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広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)(プロジェクトリーダー:草原和博教授)は,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を実施します。子どもの一人一端末と学校のICT機器を活用しながら,また地域からの中継を交えて,対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。なお,授業の参考コンテンツとして,EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ

本年度も毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり,交流したりしながら学びを深めることができます。

目 的
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

実施内容
〇 「市内の小学校」と「学習対象となる地域等」と「広島大学」がオンラインでつながり遠隔授業を行う。
〇 遠隔授業の全体進行は、大学の担当者が行う。各教室での指導は、各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し、授業準備、授業支援、後片付け等を行う。
1年間の計画案


もしも東広島市に広島大学がなかったら?(2022年1月17日)

1月17日 :「もしも東広島市に広島大学がなかったら?」
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島市西条下見からの中継:片岡望咲,玉井慎也,森本敬仁
  • 学校技術支援担当:小田原瞭雅,小野郁紀,國重和海,黒岩佳太,佐藤莉沙,重野聖怜,藤原瑞希,森俊輔,山下弘洋,山本亮介
  • 事務局機器担当①(広島大学):川本吉太郎,草原聡美,髙須明根
  • 事務局機器担当②(高屋西小学校):田中崚斗,八木謙樹,吉田純太郎

2023年1月17日,東広島市内小学校7校15学級(郷田小学校,三永小学校,高屋西小学校,造賀小学校,東西条小学校,福富小学校,風早小学校)の3年生(382名)が参加し,「市のうつりかわり」をテーマとする遠隔授業を実施しました。今回は,「もしも東広島市に広島大学がなかったら?」と題して,広島大学の移転が東広島市の土地利用や産業,まちづくり等に与えた影響について探究しました。

本時は,まず(広島)大学の仕事と社会的機能について調べるところからスタートしました。授業前のアンケートによれば,参加校の児童らのうち約半数は広島大学が何をするところかを認知していませんでした。しかし「大学とは」について理解を深めておかないと,本時の学習課題が成立しません。そこで,まず①広島大学は東広島市の西条町に位置していること,②広島大学は約150年前に設置され,その後1982年に西条の地へ移転してきたこと,③大学では私たちの暮らしをよりよくするための研究・開発が行われていること,の3点を確認しました。その際,①は大学上空のドローンによる空撮映像で調べました。③は本学大学院先端物質科学研究科の藤島実教授の研究紹介動画で確かめました。新しい半導体をつくって通信速度を速めることで,5G環境の実現に貢献したことを知ると,大学と生活との結びつきを実感した児童らは驚きの声を上げていました。このような流れで,大学と私たちの生活との関係を探究したいという意識が高まり。1時間目のめあてとして「広島大学は,私たちのくらしや東広島市とどのような関わりがあるだろうか?」が立ち上がりました。

このめあてに応えるために,続く2時間では,2つの調べ活動が展開されました。
第1に,大学が設置されたことで,その周辺がどのように変化したかです。その手掛かりは2枚の写真です。大学周辺のようすを撮影した1982年と2022年の写真を比較することで,土地利用の変化を読み取らせました。読み取りの結果は,「昔の写真は緑色(林)や茶色(土)が多い」「今の写真を見ると建物ができている」といったといった気づきで示されました。さらに,現在の大学周辺の様子を調べるために,ゆめタウン学園店の前から中継を視聴しました。リポートを通じて,①大学の周りには学生用のアパート(=住むところ)がたくさん立っていること,②飲食店(=食べるところ)やスーパーマーケット(=買い物をするところ),カラオケ(=遊ぶところ)も集まっていること,③それらは学生のアルバイト先(=働くところ)にもなっていることを観察しました。このようにして,田畑だったところに,「学生街」が完成する変化を認識できました。
第2に,大学が設置されたことで,市全体がどのように変化したかです。その手掛かりは2つの棒グラフです。1980年と2020年の東広島市の人口を示した棒グラフを示し,その増減を読み取らせました。棒グラフには市内9町の内訳が示されており,児童らは細かな数値にも目を配りながら変化を分析していきました。T2はグラフに印をつけながら補足し,読み取りを支援していきます。こうして「東広島市全体では人口が増えている」,「中でも西条町や高屋町,八本松町は人口が特に増えている」,「でも北の河内町,豊栄町や福富町の人口は減っている」ことを発見していきました。さらに,人口増加の背景を探るべく年表の読み取りに取り組ませました。年号と棒グラフを行き来することで,1982年から1995年にかけた広島大学(西条町)諸学部の移転,1991年の近畿大学(高屋町)及び1999年の広島国際大学(黒瀬町)の開学,これらが東広島市の人口増加につながっている可能性に気づきました。

大学の移転→土地利用の変化→東広島市(各町の)の人口増加,という一連の関係性が予測できたところで,その関係性を個別に調べ,検証することにしました。ここから2時間目に突入です。まず,大学ができた後に,東広島市に「おきたこと」「できたもの」を調べていきました。副読本で調べて,「東広島芸術文化ホールくらら」のような文化施設を挙げる学級もあれば,普段の生活で知っている「寺家駅」や「高屋IC」の設置といった交通インフラを指摘する学級もありました。「西条駅」前の整備を挙げる学級もありました。東広島市中心部と安芸津町をむすぶ「蚊無トンネル」や沼田川上流の「福富ダム」の建設を指摘する学級もありました。ただし,いずれも大学との関わりの程度はあいまいでした。

そこで,これらの施設と大学との関係性の強弱を評価させることにしました。ここでは,①フジグラン東広島(=ショッピングセンター),②ブールバール(=西条駅と広島大学とを結ぶ幹線道路),③東広島ニュータウン(=住宅団地),④サイエンスパーク(=研究団地),⑤サンスクエア(=外国人居住・国際交流施設)の5つを取り上げて,広島大学と関わりが深い順にランキングを付ける活動を行いました。大学生は,各施設が大学といかに関わりが深いかをプレゼンテーションし,それを踏まえて児童らは悩みながらもランキングづくりに努めます。学級によっては,班を作ったり,教室内を歩きまわったりしながら,他の学習者と意見交換を重ね,ランキングづくりを行いました。交順位付けに正解はありません。しかし,いくつかの傾向が認められました。例えば,学級の多くが,ランキングの第1位に,「フジグラン」と「サイエンスパーク」を選んだことです。前者は,大学生が消費者としても労働者(飲食店や映画館のお客さん・店員さん)としても店に通う話を根拠に選ばれたと解されます。後者は,大学との距離が2kmという空間的な近接性や大学と企業の共同研究の体制を根拠に選ばれたと推察されます。また,授業冒頭の藤島研究室の紹介も,サイエンスパーク選定の根拠なったと思われます。このようにランキングという活動を通して,広島大学が東広島市に与えた直接的な影響(=広島大学周辺の住居・交通インフラの整備)と,間接的影響(=人口増加を背景にした商業・工業施設の整備)を,子どもなりに峻別しながら判断することができました。

なお,「市のうつりかわり」は昨年度も実践しており,今年度は2回目となります。今年度は,昨年度の反省を踏まえて,内容を焦点化し,活動を簡素化するなど,授業の内容・方法の改善を図りました。昨年度は「賀茂学園都市構想」や「広島中央テクノポリス建設」という東広島市に「変化」をもたらした要因の側を直接的に扱いました。しかし今年度は,ランキングの上位と下位の施設とその理由を考えることで,意図的に作られた「学園都市」としての東広島市の特性が認識できる構成としました。今後も毎回の実践を踏まえて,授業デザインの継続的な改善に努めてまいります。

2023年1月期第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2023年1月期第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

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