【2023.1.20】定例オンラインセミナーNo. 131【HU-TEC オンラインセミナー】「教員養成大学に研究文化を根付かせる」を開催しました。
I.開催報告
広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2023年1月20日(金)に,第131回定例オンラインセミナー【HU-TEC オンラインセミナー】「教員養成大学に研究文化を根付かせる」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に531名の皆様にご参加いただきました。
本セミナーは,カンボジアの二つの教員養成大学(TEC)と広島大学の教育ヴィジョンセンター(EVRI)による第1回共同セミナーとして開催しました。設定したテーマに迫るため,各大学の「挑戦」を共有し,それをもとに議論しました。まず,研究文化の定着に向けた各大学の取組・課題が報告されました。次に,各大学における研究の具体として,教員・院生によるアクション・リサーチの内容が報告されました。そして最後に,研究文化の構築について,質疑応答・意見交流が行われました。
はじめに,丸山恭司教授(広島大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。広島大学は,これまでにカンボジアの教員養成大学の創設にあたり,さまざまな支援をしてきました。本セミナーでは,教師教育者の研究FDに焦点をあて,教員養成機関に研究文化を根付かせることの意味を確認するとともに,各大学の実践を共有することを通して,課題に対する今後の取組を検討することがセミナーの参加者全体で確認されました。
続いて,丸山教授と木下博義准教授(広島大学)から「広島大学の挑戦」と題して発表が行われました。丸山教授から,広島大学の教育学研究のチャレンジとして,(1)教職課程担当教員養成プログラム,(2)3階層ティーチングアシスタント制度,(3)教師教育者のためのプロフェッショナル・ディベロプメント講座,という3つの試みが紹介されました。また木下准教授から,教職大学院のチャレンジとして,アクション・リサーチを基軸としたカリキュラムの特徴と,具体的な院生の姿が紹介されました。
次に,プノンペン教員養成大学(PTEC)学長のSet Seng氏から「PTECの挑戦」と題して発表が行われました。PTECのミッションとして,(1)十分な能力を備えた教員を養成する,(2)教育・学習改善のための研究を推進する,(3)現職教員の能力開発に向けた社会貢献をする,という3点が示されました。このうち,(2)を積極的に取り組むことによって,研究文化の構築が実現するだろうという展望が示されました。
次に,バッタンバン教員養成大学(BTEC)学長のBinh Chhom氏から「BTECの挑戦」と題して発表が行われました。BTEC教員の研究力に関する現状と課題を分析するとともに,学生の学習・研究に関する実態も分析し,それらについての報告がなされました。また,PTECと同様に,教員によるアクション・リサーチの成果をまとめた研究紀要を発行していることが紹介されました。さらに,研究文化を根付かせるための方策も示されました。
ここで一度休憩を挟み,更に3つの発表が行われました。
まず,Chea Soth氏(PTEC)から「Influences of Reflective Conversation During Practicum. A case study of Mathematics student teachers at Phnom Penh Teacher Education College」と題して発表が行われました。教育実習生の指導技術や学級経営などに着目して行ったアクション・リサーチの結果が報告されました。実習中にTEC教員と教育実習生が「振り返りの話し合い」を重ねることによって,指導技術の向上に一定の効果があったという考察が示されました。
次に,Heng Tola氏(BTEC)から「Question Generation: An Analysis of Student Teachers’ Practicum at Battambang Teacher Education College」と題して発表が行われました。子供に対する教育実習生の質問スキルに着目して行ったアクション・リサーチの結果が報告されました。ブルームのタキソノミーを参考にし,教育実習生による質問の種類や質を分析したところ,子供の思考を深めるような質問よりも記憶を促すような質問が多くなされていたという結論が示されました。
最後に,藤原聖輝さん(広島大学大学院生)と木下准教授から「Developing Decision-Making Skills in Junior High School Science in Japan」と題して発表が行われました。中学校理科における意思決定力に着目して行ったアクション・リサーチの結果が報告されました。質問紙と評価問題を分析したところ,生徒が意思決定の質を向上させようとする態度に課題が見られた, 固定観念が意思決定に影響を及ぼしていたという結論が示されました。
以上の発表を受けてウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「TECのカリキュラムでは,学生の質問スキルが身に付かなかったのか,それとも教育実習では発揮できなかったのか」,「学生がアクション・リサーチに取り組み,どのような力が付いたのか」「(日本の学会のように)研究の成果を共有し,議論するような組織はないのか」といった質問がありました。丸山教授によって本セミナーのまとめがなされ,教員養成機関における研究文化の構築に向け,今後どのようなことを考え,どのようなことに取り組んでいけばよいのかについて参加者全体で理解が深まりました。
文責(木下博義・丸山恭司)
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
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