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【2022.7.29】第117回定例セミナー「Recent Trends and Issues in Science Education: A Comparison of Japan and the Philippines」を開催しました。

公開日:2022年08月25日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2022年7月29日(金)に,第117回定例セミナー「Recent Trends and Issues in Science Education: A Comparison of Japan and the Philippines」を開催しました。大学院生や大学教員を中心に26名の皆様にご参加いただきました。

本セミナーは,広島大学とフィリピンのCentral Bicol State University of Agricultureとの研究交流に際し,主として理科教育に関する相互の情報提供と今後の共同研究に向けて具体的に議論することを意図して企画され,両国の現状と研究のキーワードなどに関して報告が行われました。

はじめに,EVRIセンター長の丸山恭司教授(広島大学)より開会の挨拶が行われ,松浦拓也准教授(広島大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。両国の現状や課題を踏まえ,具体的な研究課題の設定に向けたアイデアについて議論を深めるという趣旨がセミナーの参加者全体で確認されました。

続けて,5名の登壇者によって,フィリピンと日本二つの文脈における報告と提案が行われました。

はじめに,Cherry Montales氏とAna Miraña 氏(Central Bicol State University of Agriculture )から「“Reform Trends in Science Education in Philippines and response to Covid-19”」と題して発表が行われました。Cherry Montales氏からは,フィリピンでも注目されているSTEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)に関する研究動向について紹介があり,2016年~2018年に刊行されたSTEM教育に関する6つのジャーナルを分析した結果,フィリピンを対象とした研究は見られず,多くはアメリカを対象としたものであったことなどが示されました。Ana Miraña 氏からは,中学生の科学的リテラシーの調査について紹介があり,フィリピンの文部省が求めているレベルに到達している生徒は少なく,学習の転移にも課題が多いことなどが示されました。

次に,兵ヶ谷紗也佳さんと石飛幹晴さん(広島大学大学院生)から「Reform Trends in Science Education in Japan and response to Covid-19」と題して発表が行われました。兵ヶ谷紗也佳さんからは,近年の日本の生徒の課題や学習指導要領の改訂のポイント,COVID-19の影響と対応などについて紹介があり,理科においては科学的探究が一層重視されており,探究の過程の重視や高等学校における理数科の新設などについて示されました。また,COVID-19の影響については,GIGAスクール構想が進み,ICT環境については急速に整ってきていることなどが示されました。石飛幹晴さんからは,COVID-19は科学のみでなく多様な社会的事象を含む問題であり,SSI(Socio-Scientific Issues)や意思決定といった視点からも捉える必要性があることが示されました。

休憩を挟み,工藤壮一郎さん(広島大学大学院生)から「Proposal of research seeds related to science education: Japan」と題して,(1)科学的探究の認識,(2)意思決定という2つのキーワードに基づいて発表が行われました。(1)については,両国のカリキュラムにおいて明確に示されていることから,指導する立場にある教師の認識に着目すること,(2)については,両国において証拠などの情報に基づいた意思決定が重要視されていることから,生徒の意思決定能力や意思決定に影響する要因に着目することが提案されました。

最後に,Ana氏から「Proposal of research seeds related to science education: the Philippines」と題して発表が行われました。フィリピンではCOVID-19への対応としてオンライン授業なども実施されたものの,インターネット環境などの整備が不十分で課題も多かったことから,オンライン授業などのフレキシブルな学習における(1)生徒の満足度,(2)理科授業の評価について,概念理解や過程などの観点から比較することが提案されました。

 

以上の発表を受けて,ディスカッションが行われました。まず,両国における現状に関わるものとして,フィリピンにおいてSTEMに関わる各領域間の関係性がどのように捉えられているのか,日本の生徒が国際的な調査において科学的リテラシーのスコアが高い理由をどのように考えているのかといった質問があり,それぞれの国から考えが述べられました。また,研究課題の設定に関する議論では,COVID-19の影響を比較する視点は興味深いものの前後比較は容易ではないこと,両国のカリキュラムに共通するものとして科学的探究などの能力の育成が挙げれられることなどが話題となり,今後も検討を継続することが確認されました。

最後に松浦准教授と丸山教授が,各報告と議論を通して,世界的に注目されているキーワードについても深い議論や理解が重要となる,両国の理科教育に共通する視点を基盤として研究課題の具体化が期待されるとまとめ,本セミナーは終了しました。

 

文責:松浦拓也

 


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


教育学研究科HPにも掲載されています


*第117回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。

No.117のサムネイル

 

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