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広域交流型オンライン社会科地域学習の取組みを報告します【お店で働く人々】(2022.06.15)

公開日:2022年06月23日 カテゴリー:開催報告
ポンチ絵(20210528版)KKのサムネイル

 

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)(プロジェクトリーダー:草原和博教授)は,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を実施します。子どもの一人一端末と学校のICT機器を活用しながら,また地域からの中継を交えて,対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。なお,授業の参考コンテンツとして,EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ

本年度も毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり,交流したりしながら学びを深めることができます。

目 的
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

実施内容
〇 「市内の小学校」と「学習対象となる地域等」と「広島大学」がオンラインでつながり遠隔授業を行う。
〇 遠隔授業の全体進行は、大学の担当者が行う。各教室での指導は、各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し、授業準備、授業支援、後片付け等を行う。
1年間の計画案


お店にぴったりなキャッチフレーズをつけよう!(2022年6月15日)

6月15日 :「お買い物に役立つ,スーパー・直売所・コンビニの魅力を表したキャッチフレーズをつくろう!」
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • ショージ寺家駅前店からの中継:大岡慎治,國重和海,近藤郁実
  • 福富しゃくなげ館からの中継:正出七瀬,玉井慎也
  • コンビニエンスストアからの中継:川本吉太郎,藤井冴佳
  • 学校技術支援担当:小田原瞭雅,上口朋佳,近沢菜々子
  • 事務局機器担当①(広島大学ほか):大坂遊,草原聡美,藤井日羽
  • 事務局機器担当②(八本松小学校):田中崚斗,両角遼平,吉田純太郎

2022年6月15日,東広島市内小学校7校13学級(原,八本松,小谷,福富,豊栄,風早,郷田)の3年生(303名)が参加し,「お店で働く人々」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,スーパー,直売所,コンビニという3種類の小売店の比較を通して,それぞれの小売形態が各々の特質を生かして消費者の願いに応え,利益を上げているという概念を探究できることが目指されました。

導入部では,まず「おうちの人とよく行くお店」に関する事前アンケートの結果(複数回答可)が示されました。1位は209人の児童が「よく行く」と答えたゆめタウン(ゆめマート)で,2位にはセブンイレブン(198人),3位にはショージ(162人)がランキングされました。続けて上記3つを含めたランキングの対象となった16のお店の名前カードを眺めながら,カードの仲間分けを行いました。この分類の活動を通して,私たちがよく知っている(使っている)お店/知らない(使っていない)お店を確認するとともに,小売店の3分類を緩やかに把握しました。
次にアンケートを行い,これら3つのお店グループそれぞれの違いを具体的な場面で予測しました。具体的には,「外国産のパイナップルを買う」「西条産のトマトを買う」「ドコモのスマホ代を払う」という3つの場面で,スーパーマーケット,直売所,コンビニのいずれを利用するかを問いました。アンケート結果はリアルタイムに集計され児童に提示されました。外国産のパイナップルを買うときはスーパーマーケット,西条産のトマトを買うときはスーパーマーケットや直売所に行くと傾向が,そしてドコモのスマホ代を払うときにはコンビニを選ぶという傾向が示されました。
普段からお店を使い分けていることを児童が意識したところで,各学級に対し追究したい学習課題の提案を求めました。子どもたちは,生活経験に基づく素朴な疑問から「売っているものの違いを知りたい」「(それぞれのお店の)良いところが知りたい」「売るための工夫を知りたい」などの課題を提案しました。これらを授業者が集約し,本時の課題を「3つのお店のちがい,似ているところ,工夫をみつけよう」に決定しました。

この課題に答えるために,3つのお店のオンライン見学を行ったのが展開部です。それぞれのお店の商品や内装を観察するとともに,児童から寄せられた質問を店員へインタビューを行いました。「どんな商品を売っているのですか」「商品は何種類置いてあるのですか」「今日のおすすめ商品は何ですか」「1日にお客さんはどれくらい来ますか」「お客さんはどこから来ますか」「お店は何時に開いて,何時に閉まりますか」。ポイントはこれらの質問を,3店舗全てで共通に聞いたことです。「スーパーとコンビニと直売所では,売っている商品の数が違う!一番多いのはスーパーだ!」といったように,児童は,各店の商品の量や質,客層,商圏概念を,インタビューを通じて比較考察できたと推察されます。また,児童は,自分たちの疑問に店員が答えてくれたことを嬉しく感じ,満足感した様子がうかがえました。
中継では,共通の質問を聞くだけでなく,各店独自の販売戦略もクローズアップしました。最初に見学したスーパーマーケット(ショージ寺家駅前店)では,特に商品の多様性と広域性に注目しました。県内外から入荷した10種類のトマトやメキシコから遠く海を渡ってきたアボカドに,児童は興味津々でした。また,関連陳列(=野菜売り場の近くでドレッシングを売る),チラシ等による広報といった工夫を確認していきました。
直売所(福富しゃくなげ館)の見学では,地元密着型が強調されました。地元の農家が直接出荷する採れたてのキャベツ,直売所敷地内にある製造所で作られた出来たての豆腐,地元でとれたエゴマを使って作られたそばを食べることのできる食堂にフォーカスすることで,地産地消を大事する直売所の経営のすがたを伝えていきました
最後に見学したコンビニでは,モノだけでなくサービスも販売している点をクローズアップしました。コンサートや野球観戦のチケットを買ったり,ATMを使ってお金を引き出したり,公共料金や税金を支払ったりできる点は,スーパーや直売所とは特に異なるところです。さらに,お弁当から飲み物などの飲食物を中心に約3000種類の商品を365日24時間いつでも買うことができるコンビニのコンビニエンス(=便利)さを発信していきました。

なお,各お店のオンライン見学が終わるごとに,子どもたちはお店の魅力を発表しました。例えば,スーパーマーケット見学の後には「お客様を気遣っている」「いろいろな商品を売っている」などの魅力が言語化されました。直売所見学の後には「食事をするところがあった」「安心安全な野菜」「出来立て・採れたてが食べられる」という魅力が指摘されました。コンビニ見学の後には「24時間いつでもあいている」「いろいろな人を助ける」などの魅力が発表されました。これらの表現から,各校の児童が小売店の特色とその違いを的確に説明できていることが分かります。各学級の発表を受けて,授業者は「お店には違いがあるから,買う人の色々な願いに応えることができる。そしてお店は,買う人の願いに応えることで儲けることができている」と述べて,小売店の似ているところ(=他店舗との差別化を通した消費者ニーズの獲得と収益拡大)をまとめていきました。

本授業では,コロナ禍でお店見学に行きにくい学校,あるいは学校周辺にスーパー・直売所がない地域の学校を念頭に置いて,オンライン社会科見学の可能性を模索しました。子どもにはお店の人に質問する機会を保証し,対話的な学びやアップでの観察が実現するように努めました。一部トラブルはありましたが,児童は3つのお店をじっくり近場で観察できたのではないでしょうか。参加した子どもは,各お店の魅力を伝えるキャッチフレーズづくりという宿題をもらって,授業は終了となりました。本授業は,「3つのお店のちがい,似ているところ,工夫をみつけ」たいという子どもたち自身が立てた課題に,小売店のオンライン見学と3つのお店概念を通して答えていく時間となりました。

2022年6月期第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2022年6月期第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック

 

バナーをクリックするか、こちらから過去の記録をご覧いただくことができます。


教育学研究科HPにも掲載されています


 

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