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【2021.08.21】第88回定例オンラインセミナー「教師の専門職スタンダードはどうあるべきか-教科と教育の関係から考える-」を開催しました

公開日:2021年09月24日 カテゴリー:開催報告

.開催報告

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2021年8月21日(土曜日)に,第88回定例オンラインセミナー「教師の専門職スタンダードはどうあるべきか-教科と教育の関係から考える-」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に47名の皆様にご参加いただきました。

本セミナーでは,アメリカのNBPTS(全米教職専門職基準委員会)の成果を手がかりに,専門職としての教師が自律的に活用できるスタンダード(基準)のあり方について検討を行いました。その際,教科教師のためのスタンダードの具体を検討しながら,教師としての「専門性(professionality)」「専門職性(professionalism)」の視点から議論を進めました。

はじめに,司会の川口広美先生(広島大学)と藤村祐子先生(滋賀大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。まず冒頭で,視聴者に「スタンダードについての印象」を問われ,他律的な活用が主である日本の状況に対する問題提起と,教員が自律的な活用を行うことの重要性です。その際に,自律的・他律的に用いられているという点でアメリカに注目することなどが前提条件としてセミナーの参加者全体で確認されました。

次に,登壇者の先生方から3つの発表がなされました。

1つ目に,藤村祐子先生(滋賀大学),佐藤仁先生(福岡大学)から「アメリカの教師の専門職基準の動向とNBPTSの位置」と題して発表が行われました。議論の前提として,スタンダードの持つ意味,アメリカの教師の役割が「teaching」に特化していることなど,教師の専門職基準を検討する上での諸条件が説明されました。その後,アメリカにおける専門職基準をめぐる状況や種類が概説された上で,今回用いるNBPTSの概要や特徴,あるいは基準を取り上げる意義について検討されました。

 

2つ目に,岩田昌太郎先生(広島大学),朝倉雅史先生(筑波大学)から「NBPTSの体育科の特色―専門職基準の内容と構造に着目してー」と題して発表が行われました。PEスタンダードの内容や構造について「専門性」「専門職性」の視点と「体育科の正統性」の関係から検討するといった目的が示されました。次に,前提として,体育科における3つの基本的な問題や歴史的にみたスタンダード研究の位置付けが概説されました。その後に,PEスタンダードの内容や構造を検討し,改訂に伴う変更点やPEスタンダードにおけるウェルネスの重視などといった特色が説明されました。最後に,「専門性と専門職性」を手がかりに社会的な課題に影響を受ける教科の特性から「教科の正統性」について図示しながらその関係性を解明しました。

 

3つ目に,堀田諭先生(埼玉学園大学),川口広美先生(広島大学)から「NBPTSの社会科の特色」と題して発表が行われました。まず,「問題意識」として社会科の教科アイデンティティを前提として,アメリカにおける社会科やスタンダードをめぐる状況についての説明がありました。そして,現行のNBPTS社会科―歴史スタンダード(第2版)を対象に,第1版との変更点を参考に主に教科アイデンティティとの関係から分析・検討を進め,「①市民性育成のための専門職共同体の構築と教師の役割」「②ディシプリンの再考」「③専門職としての社会科教師のイメージの転換」という3つの論点に整理して説明されました。

 

以上の発表を受けて,指定討論者の遠藤貴広先⽣(福井⼤学)からは,⼤きく3つの視点からコメントがありました。第1は,スタンダード設定と標準化の緊張関係の中でのスタンダードの可能性と危険性についてです。⾏動⽬標を直接評価する可能性があるという点でしばしばスタンダードは強い平準化への危惧が提起されます。一方で、スタンダードは目標を可視化する機能とみなすこともできます。広い対話が可能になるという点で重要性もまたあるという点です。第2は,スタンダードで想定されている学習観と学術研究との関係性についての説明が行われました。学習観が先鋭的でも共有が難しく,遅れているとそれに実践が引きずられる,この両者の関係をいかに調停するかという点です。第3は,今回改めて指摘された教科ベースのスタンダードをめぐる論点です。ともすれば,教科間でコンパートメント化に陥る可能性や,教科をまたいだ教師教育のグランドヴィジョンの位置付けの重要性が示され,教科による価値観の相違についてどのように調整されるべきかという問題提起がありました。

 

また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「アメリカの教員がNBPTSに基づいてアメリカの優秀教員の認定を受けようとする動機やそのメリット」,「NBPTSの自律性を可能にするのは,システムがもつ機能ではなく,システムの基盤にある社会の価値体系の違いを検討すべきではないか」,「教師教育者(「先生の先生」)にもスタンダードは求められることはないか」などといった質問や意見も出されました。最後に,研究代表の藤村祐子先生(滋賀大学)より,セミナーのまとめや今後の研究課題や方向性についてコメントをいただき,参加者全体での理解を深めました。

 

今回のセミナーを踏まえ,EVRIは以下のような政策提言を構想しております。

 

①教師の専門職スタンダードの意義の再検討の必要性です。「教職コアカリキュラム」「教員育成指標」などを通して, 教師スタンダードが日本でも見られるようになりました。ですが,その役割や意味などの検討はほとんどなされないままに進んできたのではないでしょうか。このセミナーを通して見られた可能性や課題を踏まえて,再検討する必要があります。

 

②教科や学校段階ごとの教師専門性・専門職性を考察することの重要性です。今回の検討を通し,教科ごとの学習観の共通性と相違性があることを共有しました。これは,小・中・高といった段階でも同様でしょう。教師が専門職として自律的にスタンダードを活用するためには,今後どのように学習観が異なるのかを検証しながら,それをどのようなタームでどのように表現することが重要なのかを検討していくことも必要になってくると考えます。

 


今後もEVRIでは「教師教育・授業研究」ユニットを中心に,教師の学びについての研究を深めると共に,専門職としての教師が自律的に活用できるスタンダードのあり方について引き続き検討してまいります。

 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


教育学研究科HPにも掲載されています


*第88回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。

No.88のサムネイル

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