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【2021.02.07】第69回定例セミナー 「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(3)」を開催しました

公開日:2021年02月07日 カテゴリー:開催報告

.開催報告

2021年2月7日(日)に,第69回定例オンラインセミナー「教師教育者のためのセルフスタディー研究の歴史・思想から実際までー(3)」を開催しました。

「教師教育者のためのセルフスタディ」シリーズは,国際的な研究方法論として広がりをみせるセルフスタディについて,広く深く参加者とともに学んでいくセミナーです。様々な専門職の職能発展において活用できる可能性を持つセルフスタディですが,本シリーズでは,特に教師教育者に焦点をあてます。日本における教師教育者のセルフスタディの受容と発展について,その歴史や思想,そして海外事例を含む実践の諸側面から検討していきます。

本シリーズは,最終的にシリーズタイトルと同名の書籍の出版を目指しています。この研究/出版プロジェクトは,齋藤眞宏(旭川大学),草原和博(広島大学・EVRIセンター長),渡邉巧(広島大学),大坂遊(徳山大学・EVRI教育研究推進員)の共同研究です。シリーズ企画は,科学研究費助成事業の一環「「先生の先生」をいかにして育てるか-教師教育者の専門性開発-」及び「駆け出し社会科教師の専門性開発研究:「理論的根拠」の形成支援に注目して」としても実施されています。

第2回目となる前回から,シリーズの帯企画として「海外セルフスタディ研究の紹介」と「日本のセルフスタディ事例紹介」の企画の2本立てで進めてきました。前者は,海外の特筆すべきセルフスタディ研究事例を取り上げ,その研究の方法論的な特質や,研究の意義について示す企画です。後者は,日本における大学ベースの教師教育者が行ったセルフスタディ研究の実例を示す企画です。

前半の「海外セルフスタディ研究の紹介」企画では,金鍾成先生(広島大学)から,①韓国における教師教育・研究の状況と,②その中で受容・発展されつつあるセルフスタディのあり方が報告されました。まず韓国では,文化的・制度的バックアップによって学校現場で教師が実践的な研究を行う文化が広がりつつあること,とりわけアクションリサーチなど省察にもとづく授業改善が注目されていることが紹介されました。続いて,そのような文脈において,教師が自己を研究するための探究のあり方として,セルフスタディは教師教育者だけではなく教師にも広がりを見せている現状が報告されました。これらの紹介を通して,金先生は,韓国でセルフスタディが国内の既存の省察中心の教師教育文化と接続され「韓国化」されてきたように,本セミナーではセルフスタディを日本の教師教育の文脈とどのように接続させるのかを考えるための理論的作業を行ってほしいということが提案されました。

後半の「日本のセルフスタディ事例紹介」企画では,渡邉巧先生(広島大学)と大坂遊先生(徳山大学)が行ったセルフスタディが報告されました。これは,小学校教員の養成・研修に取り組む、駆け出し(若手)の教師教育者としての渡邉先生が,自己やその置かれた状況を大学院時代に同じ研究室で学び合った関係である大坂先生をクリティカルフレンドとして,ナラティブに探究するというセルフスタディでした。当日の発表では,詳細に,渡邉先生の置かれた文脈や自己の内面が語られました。共同研究者でありクリティカルフレンドとして探究を支援した大坂先生からは,その経験をもとにセルフスタディを行う教師教育者に対する示唆を提案しました。その中で,質的研究を行う研究者が自己を対象としてセルフスタディを行うことの難しさや,研究上の問い(リサーチクエッション)が探究の過程で発展的に変更しうるというセルフスタディの持つ特性について言及しました。

指定討論者である大村龍太郎先生(東京学芸大学)からは、教師教育を行う「私」の背景に焦点を当てて教師教育者のアイデンティティ確立に対する示唆を見出すとともに、学校教師が持つ多様な文脈に依存する葛藤や困難さとその克服に通じる問いとしてのセルフスタディの価値が指摘されました。その上で「自分の実践を対象にした事例研究」とどの様に違うのかという疑問も提示されました。

また,同じく指定討論者である吉田成章先生(広島大学)からは,セルフスタディが持つ研究的・運動的特性が,日本の教師教育にもたらす新規性や意義という論点が提起されました。これまで日本においては,授業研究をはじめとして教師教育者による「当事者運動」として様々な実践的・研究的取り組みが行われてきたこと,そこには「教師教育実践を研究・実践ネットワークのもとで捉えることで,よりよい教師教育の実現につながる」という信念が介在していたことを指摘されました。その上で,いま新しく導入されようとしているセルフスタディは,これまでの日本における取り組みとの違いを明確に打ち出す必要があるのではないか,そのひとつの可能性として,実践改善「運動」としてだけではなく,教師教育の科学の確立と問い直しを行う実践「研究」としてのあり方が考えられるのではないか,という提案がなされました。

ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,渡邉先生・大坂先生が用いた具体的な研究手法や,大学の教師教育者が入職後に専門領域を追加するという状況は日本固有のものなのか(海外の状況はどうなのか),などについての質問が出されました。また,参加された学校教員からは,初等中等学校の教員がセルフスタディを行うことの意味についての問いが投げかけられました。セミナー終了後も,残った参加者の間で,「なぜ教師教育者はセルフスタディを通して自己(Self)を探究しなければならないのか」「セルフスタディが日本において研究として受け入れられていくためには,研究方法の確立だけでなくどのような示唆を導き出すのかも重要になってくるのではないか」といった論点で議論が続けられました。

 

本シリーズでは,引き続きセルフスタディを通じた日本の教師教育の発展を考えてまいります。

 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。

 


*第69回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。

セルフスタディ69のサムネイル

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