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2021年12月24日公開
2022年3月7日更新
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は、社会貢献の一環として、公益財団法人 日本生命財団より2020年度児童・少年の健全育成助成「実践的研究助成」を受け、「定時制高校における主権者教育の構造改革のためのデザイン研究」の研究に取り組んでいます。
採択事業詳細
●採 択 枠:2020年度児童・児童・少年の健全育成実践的研究助成
●採択事業名:「定時制高校における主権者教育の構造改革のためのデザイン研究」
●委 託 先:国立大学法人 広島大学大学院 人間社会科学研究科 代表者:草原和博
●事業目的・内容:調査及び実践研究を通じて、「社会参加におけるエンパワーメント格差」を解消していく学校づくりや授業づくりのデザイン原則を明らかにする。
公益財団法人日本生命財団(ニッセイ財団)は、人間性・文化性あふれる真に豊かな社会の建設に資することを目的として、昭和54年7月に設立された多目的の助成型財団です(平成22年3月1日公益財団法人に移行)。 この目的を達成するため、現在の社会において特に要請度が高いと考えられる「1 児童・少年の健全な育成」「2 高齢者の福祉と社会参加」「3 環境の改善と健康の増進」の分野を対象とした有意義な事業及び研究に対する助成並びにシンポジウムの開催などの活動を行なっています。
この度、EVRI(平和・市民性教育ユニット)センター長・拠点リーダーである草原和博教授が「児童・少年の健全育成実践的研究助成」を受託しました。2020年10月~2021年12月の期間で、小栗優貴さん・石川照子氏・南理恵氏・北川弘紀氏・古塚明日人・望月翔平を共同研究者として実施することになりました。
単位制・通信制・定時制高校に通う多様な背景を持つ、しばしば学びに意味を見出しにくい子どもたちは、社会や政治への参加をますます疎遠なものとしていくことが指摘されています。このことが暗示するのは、学びへの支援が必要な子どもたちとそうではない子どもたちの間に社会参加における「エンパワメント格差」が存在すると言うことです。
公教育としての主権者教育は、全ての子どもを社会へ参加していく主権者としてエンパワメントとし、こうした「格差」を解消していく役割があります。従来の主権者教育に関する研究では、多様な背景を持つ生徒が通う定時制・通信制・単位制高校の子どもに焦点を当てた研究は少なく、理論レベルでも実践レベルでも研究の必要性があります。そしてこうした研究を通して格差是正を目指していく必要があります。そこで本プロジェクトでは、研究者と定時制高校教員が共同し、主権者としてのエンパワメント格差を解消していく方策について研究していきます。
日本生命財団HPに掲載されているプロジェクトの要旨は、こちらよりご覧ください。
本プロジェクトでは、兵庫県立西宮香風高等学校を研究連携校とし、以下2つの調査・実践的研究を行います。
① 連携校と他校との間に社会参加における「エンパワメント格差」は確認されるのか(調査編)
② 社会参加における「エンパワメント格差」を是正するための学校・授業づくりのデザイン原則とは何か(実践編)
上記の調査・実践を通して、主権者教育の構造改革を行い「社会変革の主体としての学校」づくりを目指します。つまり学校空間そのものが生徒にとってオープンな社会参加の場へと変容するとともに、協力教員の学校空間に関する意識が変革され、定時制高校生の間に存在する格差の解消を企図します。
調査編では、連携校の他の学校の間に社会参加におけるエンパワメント格差が確認されるのかを明らかにします。国内外の先行調査では、家庭の社会経済的背景によって、社会参加意識が異なることが確認されてきました。本調査では、定時制高校という学校種に注目し、同年代の生徒とどの程度社会参加の意識の違いがあるのかを明らかにしました。調査では、IEA(International Association for the Evaluation of Educational Achievement:国際到達度評価学会)が行っているICCS(International Civic and Citizenship Educational Studies)調査の調査枠組みと調査項目を応用して実施しました。
調査では、連携校である兵庫県立西宮香風高等学校の生徒(有効回答数50名)に対して、左側のICCS調査の質問紙を用いて、調査を行いました。そしてそれを小栗・堀井(2021)の中学3年生への単純調査結果と比較することで現実に格差が起きているのかを調査しました。結果は、EVRI研究プロジェクト叢書 No.5「定時制高校における主権者教育の構造改革のためのデザイン研究」にて一覧にしています。この調査から、エンパワメント格差が起きている可能性が高いと仮定し、格差是正を目指す実践的研究を行いました。
実践編では、兵庫県立西宮香風高等学校と連携し、実際に社会参加におけるエンパワメント格差是正のためのデザイン原則を解明することを目的としました。この目的に向かって、授業の開発・実践・検証を繰り返し行い、授業づくりのデザイン原則の生成を行うデザイン研究という方法論を用い、研究を行いました。具体的には、2020年9月〜2021年10月を第1期と称し、公民科の開発・実践・検証を行いました。次に、2021年4月〜2021年12月を第2期と称し、情報科・地理歴史科の開発・実践・検証を行いました。
第1期は、公民科の実践に焦点化し、北川弘紀氏(当時:兵庫県立西宮香風高等学校教諭)主導のもと5時間の実践を行いました。その結果以下に示すデザイン原則を提案できました。
第1期では、格差是正に向けた妥当なデザイン原則とは言い切れない状態となりました。そこで第2期では、第1期に引き続き兵庫県立西宮香風高等学校と連携し、実際に社会参加におけるエンパワメント格差是正のためのデザイン原則を再構築することを目的としました。この目的に向かって、授業の開発・実践・検証を行いました。2021年4月〜2021年12月を第2期の期間とし、情報科・地理歴史科の開発・実践・検証を行いました。
第2期は、情報科・地理歴史科の実践に焦点化し、望月翔平氏(当時:兵庫県立西宮香風高等学校教諭)主導のもと情報科「情報の表現と管理」において11時間の実践を行いました。また同じく望月翔平氏主導のもと情報科「社会と情報」において11時間の実践を行いました。続けて、古塚明日人氏(当時:兵庫県立西宮香風高等学校教諭)主導のもと地理歴史科「世界史A」において4時間の実践を行いました。その結果以下に示すデザイン原則を提案できました。
2021年12月刊行 |
2022年3月刊行 |
取組が冊子になりました
「定時制高校における主権者教育の構造改革のためのデザイン研究」が完成いたしました。(2021年12月28日)
EVRI研究プロジェクト叢書 No.5「定時制高校における主権者教育の構造改革のためのデザイン研究」
(クリックしたらリンク先で閲覧できます)
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