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【2026.10.8】第201回記念セミナー「大学と社会がともに学びつづけるしくみをどのようにつくるか―知識共創を支える協働のデザイン―」を開催しました。

公開日:2026年10月15日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2026年10月8日(木)に、第201回記念セミナー「大学と社会がともに学びつづけるしくみをどのようにつくるか―知識共創を支える協働のデザイン―」を開催しました。大学院生や研究者を中心に40名の皆様にご参加いただきました。

はじめに、司会の川口広美准教授(広島大学)より、本セミナーの趣旨が説明されました。社会課題が複雑化するなか、大学には、専門家が生み出した知識を社会に届けるだけでなく、学校や地域、市民など、多様な人々と課題を共有し、ともに知識をつくり出していくことが求められています。しかし、大学と社会では専門性や経験、価値観が異なるため、単に両者をつなぐだけでは、継続的な協働が生まれるとは限りません。EVRIではこれまで、学校・地域との協働、異分野・異専門性の協働、国際協働、若手研究者や学生の参画などを通して、多様な人々や知が出会う場をつくってきました。第200回記念セミナーでこれまでの歩みを振り返ったことを踏まえ、今回は、こうした協働を個人の努力だけに依存せず、持続可能なものにするためには何が必要なのかを考えることが目的として示されました。

次に、松原信喜氏(広島大学大学院博士課程後期)より、川口准教授らが進める科学研究費助成事業・基盤研究(B)「市民性教育改革の日本型モデルに関する実証的・実践的研究」(課題番号:25K00795)の一環として実施した、ハーバード大学Democratic Knowledge Project(DKP)に関する調査を手がかりに、大学と社会をつなぐ組織のあり方について問題提起がなされました。DKPでは、大学に所属することによる社会的信頼を生かしながら、活動資金を大学に依存しすぎないことで柔軟性を確保しています。また、研究成果に基づく教材を開発するチームと、学校や教師との対話を担うチームが連携し、現場からの意見を教材の改善につなげています。こうした事例を踏まえ、大学と社会がともに学び続けるための「場」をどのように用意するのか、異なる専門性をつなぐ「組織」をどのようにつくるのか、継続的な協働を支える「ネットワーク」をどのように構築するのかという、三つの視点が提示されました。

 

 

次に、西岡加名恵氏(京都大学)より、京都大学大学院教育学研究科E.FORUMの取り組みが紹介されました。E.FORUMは2006年の創設以来、全国スクールリーダー育成研修や実践交流会などを通して、大学と学校現場が継続的に学び合う場をつくってきました。研修で得た知識を学校現場で実践し、その成果や課題を再び持ち寄るという循環を重視するとともに、会員制度やオンラインでの実践資料の共有を通して、教師と研究者のネットワークを形成してきたことが説明されました。具体的には、「逆向き設計」論に基づくパフォーマンス評価の研修や、デジタル・ポートフォリオ、教材・カリキュラム開発などが紹介されました。近年では、学校現場で生まれた実践を出発点に、異なる専門分野の研究者や企業の研究員が協働する「『生きる』教育」の普及や関連する基礎研究にも取り組んでいます。また、土壌研究者からの相談を大学生の学びにつなぎ、「土の教育」に関する教材を開発する事例も紹介され、学校や社会の課題が新たな教育実践や研究へと発展する過程が示されました。

西岡氏からは、こうした協働を支えるうえで、対面での研修や交流を積み重ねることの意義が指摘されました。若手教師として参加した人が、管理職となって再び若手教師を連れて参加するなど、世代を超えたネットワークが形成されていることが紹介されました。

 

 

次に、奥本素子氏(北海道大学)より、北海道大学CoSTEPの取り組みが紹介されました。CoSTEPは2005年に開講したサイエンスコミュニケーター養成プログラムを中心に、教育・実践・研究を展開してきました。奥本氏からは、サイエンスコミュニケーションとは、科学的知識をわかりやすく伝えるだけでなく、研究者と市民が異なる知識や価値観を持ち寄り、科学技術と社会のあり方をともに考える営みであると説明されました。気候市民会議などを例に、科学リテラシーの向上にとどまらず、科学技術に関する意思決定に参加する「責任ある市民」を育てることの重要性が示されました。
CoSTEPでは、科学技術コミュニケーションの理論や表現方法に加え、多様な立場の理解や活動のデザイン、社会での実践を重視しています。具体的には、プレコンセプションケアについて、医学的情報だけでなく、受け手の価値観や自主性に配慮した対話の場を構想する取り組みや、キツネとエキノコックスをめぐる問題を通して、地域住民や子どもたちが野生動物との共生を考えるワークショップなどが紹介されました。これらの事例を通して、研究者や地域社会から寄せられた課題を受け止め、学生や市民とともに学びをつくる活動の特徴が示されました。
さらに、奥本氏からは、大学と社会をつなぐサイエンスコミュニケーターの専門性と人材育成についても説明がありました。CoSTEPでは、修了生とともに「CoSTEP宣言」を作成し、情報を伝える技術だけでなく、異なる立場を想像する力や他者と向き合う態度など、必要な資質・能力の整理を進めています。また、年齢や職業、立場の異なる受講生が対等に学び合える環境を意識的にデザインしていることも紹介されました。こうした取り組みから、大学と社会の協働を支える「媒介する人」を専門的に育成することの意義が示されました。

 

 

以上を受けて、質疑応答が行われました。議論では、大学と社会の協働を持続させるための組織運営や人材育成のあり方が中心的な論点となりました。特に、企業やNPOなど多様な主体との連携を広げながら、大学としての信頼性や独立性をどのように保つのか、異なる関心や課題をもつ人々をどのようにつなぐのか、また、活動を継続するための制度や財政的基盤をいかに確保するのかについて意見が交わされました。大学と社会をつなぐ活動を、個人の努力に依存せず、組織として持続可能なものにしていくことの重要性が浮かび上がりました。

 

 

最後に、間瀬茂夫教授(広島大学)より、本セミナーのまとめがなされました。間瀬教授からは、E.FORUMとCoSTEPのいずれにおいても、個々の研究者や実践者の関心や主体性を大切にしながら、それを組織としての活動へと発展させ、大学と社会の双方にいる人々をつないでいることが指摘されました。また、両組織が長い時間をかけて活動を継続し、そのなかで組織やネットワークを発展させてきたことにも言及されました。大学と社会をつなぐセンターには、個人の活動を支えるだけでなく、人々のつながりや学びを継続的なものにしていく役割があることが、EVRIの今後を考えるうえでの重要な示唆として示されました。

 

 

本セミナーでは、教育研究と学校現場をつなぐE.FORUMと、科学技術と社会をつなぐ人材を育成するCoSTEPという、異なる特徴をもつ二つの取り組みを通して、大学と社会がともに学び続けるための仕組みについて考えました。両者は活動の出発点や方法こそ異なりますが、単発の研修や情報発信にとどまらず、人々が繰り返し出会い、互いの知識や経験を持ち寄り、新たな実践や研究へとつなげていくことを重視している点で共通しています。また、こうした協働を支えるためには、場やネットワークをつくるだけでなく、それらをつなぐ人材の育成や、活動を継続するための循環的かつ組織的な仕組みが重要であることを考える機会となりました。

EVRIでは今後も、大学と社会の多様な人々が出会い、互いの専門性や経験から学び合いながら、新たな知識や実践をともにつくり出す場を育んでまいります。

 

文責(川口広美)


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第201回定例セミナーのポスターはコチラです。


教育学研究科HPにも掲載されています(準備中)


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