【2025.02.22】定例オンラインセミナー講演会No.175「何が子どもの社会参加を促進するか?ー高校生の質問紙調査からー」を開催しました。
I.開催報告
広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2025年2月22日(土)に,定例オンラインセミナー講演会No.175「何が子どもの社会参加を促進するか?ー高校生の質問紙調査からー」を開催しました。本セミナーには、大学院生や学校教員を中心に計54名の参加者がありました。本セミナーは、科学技術費(基盤研究(C))「学校市民性教育メカニズムに関する実証的研究ー高校生の社会参加の実態に注目して」の成果報告会として行われました。
セミナーの冒頭では、古田雄一氏(筑波大学)と川口広美准教授(広島大学)から、本セミナーの背景と趣旨が説明されました。共同研究の背景は、2019年の世界教育学会(WERA)での国際市民性教育調査(ICCS)に関する分科会への参加から始まり、国内の市民性を定量的に調査し、政策や実践に活かす重要性が認識されました。中でも、特に「社会参加(civic engagement)」に焦点を当て、先行研究の多様性や多義性から、その研究蓄積が困難であることが明らかにされました。そのため、この共同研究では国際的な知見を基にし、現在の日本の高等学校における社会参加の実態を明らかにするための枠組みが作成されました。本セミナーでは、①作成した調査枠組みの提案とともに、②特に「開かれた学級風土(open classroom climate)」に焦点を当てた分析結果が報告されました。
- 趣旨を説明する古田氏
- 趣旨を説明する川口准教授
最初の発表は、小栗優貴氏(京都教育大学)による「調査のデザイン―RQ解明のために、どのように調査設計を行ったか―」と題したものでした。この共同研究で使用された調査枠組みの設計は、生態学的システム論の観点から社会参加の包括性と問題の一貫性を議論し、パイロット調査とその結果の分析を通じて実現性を確認しました。
- 調査枠組みの設計について発表する小栗氏
次に、大脇和志氏(お茶の水女子大学)と北山夕華氏(大阪大学)による「調査結果1:高校生の社会参加と学校教育の関係―学級風土への着目―」と題する発表が行われました。日本の高校生の社会参加には「広範型」「優等生型」「運動型」「消極型」と特徴づけられる4つの傾向が見出され、特に「優等生型」の態度をもつ高校生が多いことが明らかになりました。さらに、学級風土が優等生型の社会参加を促進する要因であることが示唆されました。
- 調査結果1について発表する大脇氏
- 調査結果1について発表する北山氏
その後、太田昌志氏(追手門学院大学)による「調査結果2:学校への態度と政治への態度―高校生の社会参加に関する質問紙調査から―」と題する分析が報告されました。この分析では、「民主的な学校教育の経験」「学校に対する有効性感覚」「政治に対する有効性感覚」の間での関係が探られ、学校に対する態度と政治に対する態度が必ずしも一致しないことなどが示されました。
- 調査結果2について発表する太田氏
その他、荒牧草平氏(大阪大学)と井上昌善氏(愛媛大学)からコメントがありました。荒牧氏は研究方法について、特にリサーチクエスチョンの精緻化や今後の事例調査の重要性に触れました。井上氏は調査結果を踏まえて、学校と社会の連携強化に向けた教師の認識の更新や外部人材との連携の重要性を提案しました。
- 研究方法についてコメントする荒牧氏
- 学校と社会の連携に関してコメントする井上氏
これらの発表に続き、フロアとの質疑応答が行われ、学校の立地や子どもの知識・経験に関するさらなる調査の必要性が示唆されました。ディスカッションを通じて、「学校」に関する変数の捉え方や今後の研究における論点が明確になりました。最後に、川口准教授と古田氏からは参加者に対する感謝の意を表すとともに、今後の実践や政策に調査結果を活用していただきたいといった期待が示され、セミナーは閉会しました。
今後もEVRIでは、平和・市民性ユニットを中心に、子どもたちが民主主義社会の担い手として育成されるための研究を支援してゆきます。
文責(川口広美)
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
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教育学研究科HPにも掲載されています
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