menu

【2025.02.22】定例オンラインセミナー講演会No.172「 学校教育の言語と機能言語学の接続―外国につながる子どもたちの包摂を見すえて―」を開催しました。

公開日:2025年03月06日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2025年2月22日(土)に,定例オンラインセミナー講演会No.172「学校教育の言語と機能言語学の接続―外国につながる子どもたちの包摂を見すえて―」を開催しました。学校現場・支援の現場,また大学院生や研究者を中心にオンラインで266名,対面で21名の申し込みをいただき,最初から最後まで参加された方も180名近くになりました。

庵功雄氏(一橋大学)からは,「やさしい日本語」からはじまった言語学的な観点を社会実装していくことと同様に,言語学的視点の社会実装において「機能言語学」もまた重要な視点になりえ,外国につながる子どもたちの教育において今回は検討していくことの重要性が語られました。

 

 

次の佐野大樹氏(リングイスティック・アナリスト)からは,「機能言語学的なことばの捉え方」としてご自身が長く関わってきたさまざまな情報技術の観点もふまえながら,選択的体系機能言語学の視点をわかりやすく提示,説明し,「機能言語学」という視点が,従来捉えられてきた「構造言語学」とどう違うのかの基本的概念を具体例とともに出していただきました。

 

 

南浦涼介(広島大学)からは,「言語の教師教育における機能言語学的視点」として実際の外国につながる子どもたちの教育研究において,「機能言語学」的な視点が薄いことにより,子どもたちの内面の言語の問題に焦点が行きすぎ,その外側に広がっている「言語」がどのようになっているものかという点に視点が行きにくくなっている状況を指摘しました。それに対して教師教育研修の具体から視点形成の例を示し,それをさらに広げていくために「マルチモーダルな言語の視点」と「カリキュラムとしての視点」の必要性を提示しました。

 

 

奥泉香氏(東京学芸大学)は,「マルチモーダルな言語教育と機能言語学的視点」としてその「マルチモーダル」への拡張を,具体的な絵や図像をもとにした機能言語学的な発想からの子どもの読み取りについて,ご自身の研究をもとに示していただき,「言語」を単に文字言語だけで捉えるのではない,さまざまな記号を用いた読み取りや表現に拡張していくことによって,包摂的な視点をつくっていくことの可能性を指摘しました。

 

 

5番目の小栁亜季氏(千里金蘭大学)からは,「海外の言語教育カリキュラムにおける機能言語学的視点」としてイギリスの1970年代の「言語意識運動」によるカリキュラム改革の展開とその終焉を事例に,移民の子どもたち,外国につながる子どもたちを包摂していくための言語教育のカリキュラムが,学校という場においてどのように展開しうるのかを事例をもとに示し,日本への示唆を示しました。

 

 

最後に, 宇佐美洋氏(東京大学)をディスカッサントとして,日本の言語教育の現場における形式主義的言語学と機能主義的言語学の需要の違い,その意味の違いと可能性に触れられながらディスカッションが進みました。
会場からも,語用論とSFLの異同,批判的社会言語学との異同といった言語学的・言語教育学的論点。在籍級と取り出し級をつなぐ言語的鑑識眼としてのSFLの可能性といった教育学的論点。学術言語学と学校言語学といった学際的論点まで話題が広がりました。
言語学内部の語用論や批判的社会言語学とSFLの異同はわりと簡単に説明できるものだと思います。一方で,教育学的論点や両者の学際的論点は単純な学術ではなく,制度や実務の間をめぐって実はかなり可能性も課題もあります。この辺の宿題を改めて整理しながら,探っていきたいと思います。

 

 

文責(南浦涼介


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第172回定例セミナーのポスターはコチラです。

教育学研究科HPにも掲載されています(準備中)


本イベントに関するご意見・ご感想がございましたら,
下記フォームよりご共有ください。


 

※イベント一覧に戻るには,画像をクリックしてください。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。