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【2024.10.01】定例セミナー講演会No.167「Innovative Science Teaching in a Technology-Driven World」を開催しました。

公開日:2024年10月29日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2024年10月1日(火)に,定例セミナー講演会No.167「Innovative Science Teaching in a Technology-Driven World」を開催しました。大学院生や研究者を中心に15名の皆様にご参加いただきました。

はじめに,司会の松浦拓也教授(広島大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。本セミナーでは,オーストラリアのMacquarie UniversityよりHye-Eun Chu氏をお迎えして,科学(理科)教育における未来志向の共同研究の展望と可能性について議論し,教育実践における革新的な技術の統合の重要性を浮き彫りにするという趣旨が確認されました。

続けて,5名の登壇者によって,科学(理科)教育に関わる現状や最新の研究について報告が行われました。

まず, Hye-Eun Chu氏(Macquarie University)から「Enhancing Student Engagement through Sociocultural Problem-Solving: Insights from an Intercultural STEAM Program in a Science Classroom」と題して研究報告がなされました。Chu氏より紹介された研究は,オーストラリアと韓国の中学生が同一の課題に取り組み,オンライン・ツールを活用して相互交流するという実践において,生徒のエンゲージメントに着目して分析するという内容であり,主に韓国の生徒の様子が紹介されました。本実践では,生徒は4名で1グループとなって課題に取り組んでおり,協同的に活動ができていたグループとできていなかったグループの比較においては,グループ内でリーダーシップを発揮している生徒の有無やその役割に着目した分析が実施されていました。発表後の質疑応答の際には,韓国とオーストラリアの生徒間での協同の方法や頻度,グループ内の分析における判断基準などについて質問があり,Chu氏より,リアルタイムでの接続のみでなくオンライン・プラットフォームを活用して言語をテキスト化することにより,生徒自身で翻訳しながら交流できるようなしくみを導入したことや,分析における判断基準の実際について説明がありました。

 

 

次に, 松浦教授から「The ICT environment in Japanese schools after COVID-19 and prospects for the future」と題して発表がありました。ICT機器の活用という観点から,コロナ禍の前後において日本の学校の学習環境がどのように変化したのかについて紹介され,教室内においては情報の提示や考えの共有といった利用形態が多いことなどに言及されました。また,今後の課題として,生成AIをはじめとするテクノロジーを教室において活用するためのサポートの必要性や,テクノロジー活用における学びの質にも着目する必要があることが述べられました。

 

 

次に, 岡伸樹さん(広島大学・大学院生)から「Development of assessment indices for proactive attitudes to learning in senior secondary school science」と題して研究報告がなされました。現行の学習指導要領下においては,高等学校においても観点別学習状況の評価が必須となった事に伴い,主体的に学習に取り組む態度を実務レベルで評価できる指標の開発が求められていること,これまでに報告されている研究等を因子論的に整理すると粘り強さは「努力調整」,自己調整は「批判的思考」「メタ認知的自己調整」「協同学習・援助要請」と対応付けられること等が紹介されました。また,今後の研究として評価指標の妥当性を検証することや,実務レベルにおいても生徒の記述による自己評価の妥当性を確認するためにテクノロジーを活用するといった発展性などについて述べられました。

次に, 石飛幹晴さん(広島大学・大学院生)から「The Nature of Science as Scientific Literacy in the Coming Age」と題して研究報告がなされました。まず,科学的リテラシーの解釈においては,科学の初学者のための科学(VisionⅠ)という側面と,市民性育成のための科学(VisionⅡ)という側面があること,PISAの科学的リテラシーもVisionⅡに位置付けることが可能であり,手続き的知識や認識的認知が含まれる事が紹介されました。また,Nature of ScienceをVisionⅡの視点から捉えることや,その評価における課題に言及すると共に,指導の具体化が今後の課題となっていることが述べられました。

 

 

次に, 中村大輝氏(宮崎大学)から「Exploring the Role of Generative AI in Enhancing Science Learning」と題して発表がありました。現在,生成AIの精度が高まると共にその利用も多様化しており,教育文脈においても生成AIの有効活用に向けた取り組みが広がっていることが紹介されました。また,理科(科学)教育における生成AIの活用例として,問題の同定や実験計画,データの分析といった探究過程における活用や,自己調整学習の促進等が挙げられ,今後においては,1.学習の個別化,2.探究過程の改善の促進,3.評価やフィードバックの自動化等の実現に向けて生成AIが潜在的な可能性を有していることが述べられました。

 

 

以上の発表を受けて, 松浦教授をファシリテーターとした質疑応答が行われました。Nature of ScienceにおけるVisionⅢへの言及の必要性やグループ・ワークにおける発話分析の手法など研究の具体について議論することを通して研究内容の相互理解を深め,今後の共同研究に向けてのアイデアを各自が得ることによりセミナーの幕を閉じました。

 

 

文責(松浦拓也)


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第167回定例セミナーのポスターはコチラです。
167_2ndのサムネイル

教育学研究科HPにも掲載されています(準備中)


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