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【2024.02.24】定例セミナー講演会No.159 「子どものための哲学教育カリキュラム研究プロジェクト「『対話的教育論の探究』出版記念イベント」」を開催しました。

公開日:2024年03月14日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2024年2月24日(土)に,定例オンラインセミナー講演会No.159「子どものための哲学教育カリキュラム研究プロジェクト「『対話的教育論の探究』出版記念イベント」」を開催しました。大学教員や学部生・院生を中心に24名の皆様にご参加いただきました。

本イベントは,本年度,東京大学出版会から出版された『対話的教育論の探究』の執筆者を囲み,“子どものための哲学 Philosophy For Children (P4C)”の意義や可能性について対話し合い,理解を深めることを目的として実施しました。本書の詳しい情報はこちら。そして本イベントには,執筆者である豊田光世氏(新潟大学)や土屋陽介氏(開智国際大学)だけでなく,本書の読者を代表したコメンテーターとして国語科教育で話し合いを研究されている明尾香澄氏(エリザベート音楽大学)やP4Cについて教育哲学で研究されている板野誠氏(広島大学大学院・院生),更には,15名ほどの本コースの学部生・大学院生・OB・OGが参加していただきました。

はじめに,田中崚斗氏(広島大学大学院・院生)が,本イベントの趣旨を説明しました。本年度,東京大学出版会から出版された『対話的教育論の探究』では,“子どものための哲学 Philosophy For Children (P4C)”の理論的な特徴や課題,日本での多様な実践方法に関する論考が掲載されています。そこで,執筆者とともに,P4Cの意義や可能性について対話し合い,理解を深めることをイベントの目的としていることが説明されました。

続いて,執筆者である豊田氏や土屋氏,川口広美准教授(広島大学)から,執筆された章の概要や,P4Cについて研究・実践する中でのやりがいや葛藤などを共有していただきました。具体的には,豊田氏は,地域的課題について大人と子どもがP4Cをすることで,対話することに価値を見出していないコミュニティから,価値が共有されたコミュニティになった実践を紹介していただき,P4Cにある可能性について語っていただきました。一方で土屋氏は,P4Cを研究・実践している中で,何かの能力やスキルを獲得させるためにP4Cを用いるケースがあることを紹介し,その問題点と改善方法を語っていただきました。川口准教授は,教員養成課程において1つの社会科に対する考えに固執してしまう学生の姿に悩んでいる現状を述べ,その現状を改善できる方法としてのP4Cの魅力を語っていただきました。

そして,読者を代表して明尾氏と板野氏から,本書を読んだ率直な感想や,執筆者に聞いてみたいこと,イベントの参加者と共に考えたいことを話していただきました。明尾氏は,国語科教育の話し合いの場面で,良い話し合いの規準が大人と子どもで違うという悩みを語っていただきました。具体的な例として,大人は話し合いが活発で,時には批判や反論が飛び交う話し合いを良いと評価するけれども,子どもたちは,その話し合いよりも,誰か一人の意見に賛同し,批判や反論が少ない話し合いを良いと評価してしまう。このような現状を,コミュニケーションに興味を持つ本イベントの参加者に問いかけて,ともに改善策を探すきっかけをいただきました。板野氏は,豊田氏,土屋氏,川口准教授の章にある対話記録に注目し,そこにある対話のズレや多様な解釈の可能性を示していただきました。例えば,子どもが行った「専門知識がないとP4Cをしてもいい意味が無い。ちゃんと議論できないから」「ちゃんとした議論って?」の対話を例に,「ちゃんとした議論」とは何かを一見説明していないように解釈できるけれども,専門知識がある中で議論することが「ちゃんとした議論」の定義と解釈することもできるのではないか?という執筆者にはなかった解釈の可能性を示していただきました。

 

 

最後に,執筆者とコメンテーターとの対話が終わった後,参加者との対話が始まりました。参加者からは,「学校教育において子どもに対話の価値を共有することの難しさ」「国境を越えた対話を行うことの難しさとその乗り越え方」「対話とP4Cの違い」「P4Cを専門とする者として学校教育での実践を促す際に生じる葛藤」などが共有され,参加者全員で考えを深めることができました。ここでは,単に執筆者と参加者が対話するのではなく,参加者から投げかけられた質問を参加者同士で対話しながら深められたように思います。

今後ともEVRIでは,学際的な対話に関する研究を遂行し,より良い民主主義社会形成に向けた教育のヴィジョンを構想・提案・発信してまいります。 


文責(川口広美田中崚斗


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第159回定例セミナーのポスターはコチラです。

教育学研究科HPにも掲載されています(準備中)


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