【2023.08.08】定例オンラインセミナー講演会No.148「Advancing Disaster Justice and Resilience Through STEM Education」を開催しました。
広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2023年8月8日(火)に,第148回定例セミナー講演会「Advancing Disaster Justice and Resilience Through STEM Education」を開催しました。総勢16名の皆様にご参加いただきました。
講師は,英国・サウサンプトン大学のDr. Wonyong Park氏です。
講師は,ソウル大学・同大学院・オックスフォード大学大学院で学位を取得され,科学教育・災害教育がご専門です。講演では,Park氏から,災害教育に関する研究動向やPark氏が現在取り組まれているプロジェクトについて,特に近年における科学教育・災害教育の問題意識についての話題を皮切りに,彼自身の研究活動に関して話題を提供していただきました。
今回の企画において特筆できる点は,①韓国における災害教育の現状,②今後の災害教育の在り方,です。①について,データを示しながら,韓国の科学の教師は,科学教育において災害を取扱うことは学習者の興味を促す上では有用であると考えており,また,災害教育を行う必要性も感じていることが示されました。しかしながら,科学の教師自身が積極的に取扱うのかというと,必ずしもそうではないとのことでした。その理由として,科学には負の面があることを伝えることは教師の仕事ではないと感じていること,災害を扱う時間を確保することが困難であること,そして,教師自身の災害に関する知識不足,などを指摘されました。②について,Park氏は,今後の災害教育を推進する上で,STEM教育の概念を拡張すること,他教科(例えば,歴史や地理)との統合・協働,既存のSTEM教育の目標と関連づけること,感受性・政治性・倫理性を配慮することが重要であると指摘されました。以上のように,本企画は,Park氏のSTEM教育の視座から災害教育の需要性・問題意識について,また,実際に推進されている様々なプロジェクトについての情報を共有させて頂くことができました。今後の日本におけるSTEM教育を研究する上で,災害教育は重要な研究主題の1つになるでしょう。
なお,本企画最後の質疑応答では,Park氏が参加者の質問をわかりやすく解説していただきました。例えば,次のような質疑応答がありました。Q:政策立案者に向けてSTEM教育と災害教育をどのように提案することができますか。A:政治家も災害対策に携わるべきであり,災害関連の研究成果を通じて,現在の世代を教育するべきだと考える。Q:災害教育のトピックについてどのように設定するのがよいでしょうか。A:個々の災害のテーマを選ぶ際には,現地の状況を考慮して,より現実に即した災害のテーマを選ぶのがよい。
1時間の講演でしたが,大変有意義なセミナーとなりました。
今後もEVRIでは,様々な教科の教育研究の知見を活かして,社会からの期待・要請に応える教育の在り方を検討・提案してまいります。
文責(磯﨑哲夫)
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