【2022.02.28】定例オンラインセミナー講演会No. 108【HUGLI 特別企画8・セミナー】「インドネシアにおける女子教育を考える:カルティニの貢献とその評価」を開催しました
Ⅰ.開催報告
広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2022年2月28日(火)に,第108回定例オンラインセミナー【HUGLI 特別企画8・セミナー】「インドネシアにおける女子教育を考える:カルティニの貢献とその評価」を開催しました。日本語教育関係者を中心に54名の皆様にご参加いただきました。
「HUGLI特別企画」シリーズは,広島大学型教育を世界展開することを目指すHUGLI(Hiroshima University Global Learning Institutes)構想の一環として行われています。
シリーズ第8回となる本セミナーでは,インドネシアの女子教育や婦人解放に重要な役割を果たしたカルティニの貢献と現代における評価について,登壇者であるMYA DWI ROSTIKA先生のこれまでの研究成果にもとづいて,参加者とともに考えました。
はじめに,司会の永田良太先生(広島大学)より,これまでのHUGLIの活動および本セミナーの趣旨が説明されました。インドネシアの女子教育や婦人解放に重要な役割を果たしたカルティニの思想がどのように形成されたのかを津田梅子と比較しながら考えるという本セミナーの趣旨がセミナーの参加者全体で確認されました。
次に,MYA DWI ROSTIKA先生(大東文化大学)から「インドネシアにおける女子教育へのカルティニの貢献とその評価」と題して講演が行われました。インドネシアでは,カルティニは女性解放の先駆者として高く評価されてきました。カルティニはインドネシアで初めて女子学校を設立した人物であり,1964年にはスカルノ大統領によって国家独立英雄に列せられ,彼女の誕生日(4月21日)は「カルティニの日」として祝日となりました。しかし,近年,彼女の評価に対して異論が提起されています。講演では,19世紀後半というほぼ同時代にアメリカに留学し,日本の女子教育の先駆者である津田梅子を比較対象とすることをとおして,カルティニの業績を客観点に評価する必要性が述べられました。
上記の発表を受け,コメンテーターの三時眞貴子先生(広島大学)よりコメントをいただきました。まずは報告の意義としてインドネシアにおいて(おそらくスカルノ大統領の政治的戦略で)「婦人解放」の英雄とされながらも,影響力の大きさで評価が分かれているカルティニについて「手紙」というエゴ・ドキュメントを用いて再評価を試みている点,および従来の研究がカルティニの書簡の一部だけを用いて評価している点を指摘したことが挙げられました。続いて報告を聞いての論点・疑問として次の3点が示されました。(1)なぜ津田梅子を比較対象にするのか,境遇の違う津田梅子と比較することで何が見えてくるのか。(2)教育を受けることの意味は普遍的なものなのか?すなわちこの時期にカルティニが学校を設立し,エリートの娘達が通ったという事実をどのように歴史的評価するのか。つまりイスラム社会において女子教育を行なったということ以上の意味は何か。(3)交流先がオランダであったことの影響は何か。とりわけ前者二つに関して,明治期日本の良妻賢母論を牽引した下田歌子や中村正直の経験や主張から疑問が提示されました。
また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「映画ではフィクションを混ぜてカルティニの姿が語られることについてどう思うか」,「カルティニの影響力は,インドネシアの女子教育へのものとして理解できるのか」,「カルティニについてインドネシア国内でどのように研究されてきたのか」といった質問や,「インドネシアで「学校」を建てた,あるいはそれを支援していたのはどのような存在だったか」,「学校をめぐっては宗教的な側面が大きい。西洋とまとめてしまうと,宗派の違いが見えづらくなるのではないか」といった意見も出されました。これらの質疑応答をとおして,カルティニの歴史的評価・理解の歪み,その正当な再評価のために必要な比較対象と手法について,参加者全体で理解が深まりました。
今後もEVRIでは,インドネシアにおける海外交流研究拠点の活性化に向けて,引き続き検討してまいります。
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。
*第108回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。
本イベントに関するご意見・ご感想がございましたら、
下記フォームよりご共有ください。
※イベント一覧に戻るには、画像をクリックしてください。