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【2022.02.26】研究拠点創成フォーラムNo.33 授業研究を研究する(11)「オーストリアの授業研究の研究者から学ぶ―Claudia Mewald先生―」を開催しました

公開日:2022年03月29日 カテゴリー:開催報告

 

.開催報告

 

 

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,教師教育・授業研究ユニットの活動の一環として,2022年2月26日(土)に,第33回研究拠点創成フォーラム「授業研究を研究する(11)「オーストリアの授業研究の研究者から学ぶ―Claudia Mewald先生―」」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に55名の皆様にご参加いただきました。

「授業研究を軸に教師教育を改革する」シリーズは,日本の授業研究と世界のレッスン・スタディとの交差点を探りながら,授業研究に基づく教師教育について研究できる国際共同研究プラットフォームの構築を目指す企画です。その契機として,2019-2020年の研究成果をKim, J., Yoshida, N., Iwata, S., Kawaguchi, H. (Eds.). (2021). Lesson Study-based Teacher Education: The Potential of the Japanese Approach in Global Settings. New York,NY: Routledgeにまとめて出版しました。同書刊行に合わせてこれまで2020年度教育学部共同研究プロジェクト(研究代表者:金鍾成)の支援も受けて,計10回のセミナーを開催してきました。2021年度も引き続き教育学部共同研究プロジェクト(研究代表者:金鍾成)の支援を得て,日本の授業研究と世界のレッスン・スタディとの相互作用の解明に取り組んでいます。

 

 

シリーズ第11回目となる本セミナーでは,オーストリアで行われているレッスン・スタディの動向とその特徴に関しての報告が行われました。

本セミナーでは,Dr. Claudia Mewald (University College of Teacher Education in Lower Austria)より,「Lesson Study in Austria」と題して,オーストラリアの授業研究の動向に関する発表が行われました。Mewald氏は,自身が勤務しているニーダーエスターライヒ教育大学を中心に,リンツ大学,グラーツ大学等においても,特に外国語教育に関わってレッスン・スタディが取り組まれるようになっている状況を紹介しました。報告の中では,オーストリアにおけるレッスン・スタディの特徴として,子どもの学習に高い関心が向いていることが紹介されました。この点は,Mewald氏らが編集したMewald, C. & Rauscher, E. (2019)(Hg.) Lesson Study: Das Handbuch für kollaborative Unterrichtsentwicklung und Lernforschung (Pädagogik für Niederösterreich). Innsbruck: Studienverlagからも見て取ることができます。

同書の第一部では,授業における子ども学習をいかに観察するのか,また子どもへのインタビューから子どもの学習にアプローチする方法が述べられています。ただし,Mewald氏は報告の中で,子どもの学習に焦点を当てることは,単に子どもの学習過程の解明に留まるものではなく,そこから授業の改善や教師の学びへと発展させていくことにも関心が向いていることを繰り返し強調しました。この点に関わって,Mewald氏は,子どもの学習を見取りながら,教師の学習にも関心が向かう,ある種の入れ込構造となっている点にレッスン・スタディの独自性があることを指摘しました。またレッスン・スタディの中で,研究者は,知識ある他者(Knowledgeable others/Wissenspartner)として,教師に伴走することが求められていることを報告しました。

 

以上の発表を受けて,吉田成章先生(広島大学)より,報告者自身のレッスン・スタディとの出会いと魅力について質問がありました。Mewald氏は,授業の計画から省察まで授業実践のプロセス全体を射程に入れている点,また子どもの学びに焦点化していく点にレッスン・スタディの魅力と可能性があると回答しました。

また,宮本勇一先生(広島大学)より,日本の授業研究(Jugyou Kenkyuu)とドイツ語圏の授業研究(Unterrichtsforschung)の相違と共同研究の可能性について,また教師と研究者の共同を前提するレッスン・スタディにおいて教師の協力を得る方法について,二つの質問がありました。前者については,系譜は全く異なっているが,子どもの学習に焦点を当てる点で共同の可能性があるのではないかという提案がありました。後者については,主に教育実習生や現職研修で大学に来ている教員と共同する機会が多いとの応答がなされました。

 

 

その後,参加者より,レッスン・スタディの文化がなかったところにレッスン・スタディを導入し,発展させていくことの困難さについて,質問が提示されました。Mewald氏は,レッスン・スタディそれ自体はもともとオーストリアに存在しなかったが,Learning Studyの伝統や,教師と研究者が共同する文化は存在しており,その意味でレッスン・スタディを行う土壌は整っていたと答えました。また,そういう土壌の上にレッスン・スタディを接続していくことには,大きな困難はなかったと返答しました。またこの点に関わって,前述書の著者であるHubert Gruber氏らが,レッスン・スタディを導入したことで,子どもの学習と教師の学習の入れ子構造について議論が可能になったという補足がなされました。

最後に,オーストリアのレッスン・スタディと日本の授業研究との有効な対話にむけて,共同研究の可能性を探っていくことが提案されました。

 

 

今後もEVRIでは,教師教育・授業研究ユニットを中心に,授業研究を軸に教師教育を変革していくための方略を検討してまいります。是非,EVRIのセミナーシリーズに幅広いご関心をお寄せいただき,今後とも研究・実践をご一緒させていただければ幸いです。


教育学研究科HPにも掲載されています


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