【2020.12.16】第59回定例オンラインセミナー「教科教育を謳う2:表記」を開催しました
Ⅰ.開催報告
2020年12月11日(金),定例オンラインセミナー講演会No.59「教科教育を謳う2:表記」を開催しました。⼤学院⽣や学校教員など26名の皆様にご参加いただきました。
本セミナー「教科教育を謳う」では,現代的なカリキュラム開発の⽷⼝を⾒出すことを⽬的として,多彩な学的背景を持つ研究者らによって教科教育について語り合います。第二回は「表記」がテーマでした。教科書や資料にある図や表,グラフが表記に当てはまりますが,教科によってかなり独特に使われます。国際比較調査でもreading literacy(読解力)が問われるように,文字以外の表記を読むことは教科の学習にとどまらない大切な能力といえます。
まず主催である影⼭和也(数学教育者)よりセミナーの趣旨と第一回「言語」の振り返りがなされました。次いで第二回の論点を(i)非テキストの読解力の鍵は何か,(ii)教室のメディアにはどのような工夫があるか,の2点に置くことが宣言されました。鍵となるのは,教科教育のジレンマ「わからないとよめない」です。算数科では,数直線が2本並べられた図,数表,変化していく階段状の図などがありますが,これらは「比例」の見方をしなければ意図を汲むことは難しく,思わぬところで学習の妨げにつながっている可能性があるのです。
このような論点の提起の後,関係者間トークのセッションでは,教育心理・認知心理の研究者から表記のタイプが紹介されました。すなわち,装飾・表示・組織・仕組み・言い換えですが,指導上の意図が伝わるように,子どもの状態に応じて複数タイプの表記を組み合わせることが大切だということです。これらのなかには,学び手に対して感情的にポジティブにさせる一方(擬人化されたモノが話すといった具合に),主題から注意をそらしてしまうこともあり,このせめぎ合いへの配慮は,「学びたいことを学ぶ」という現代的カリキュラムを構想する上で重要な点でしょう。
セミナー中,参加者⽅々からの質問や意見によって,国や教科による教科書の役割や紙面の特徴も話題になりました。教育は意図的取り組みである以上,その一部をなす教科書や資料を比較的・対比的にみることは,指導として意図されている事柄を抽象する上で興味深い方法と言えそうです。
次回セミナーは「インクルーション」がテーマになります。「教科教育 for all」を考えることが本セミナーの重要な主題ですが,ここまでの言語と表記によるアプローチに加えて,教科教育の目的論再考へと迫ることになります。今回のセミナー後半で主催者から出された「学びのために必要な負荷」の明確化と設計とあわせて,学び手の程度というよりもニーズに応じられるような教科カリキュラム観の提示が期待されます。
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。
*第59回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。
教育学研究科HPにも掲載されています
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