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0. Introduction
はじめに

プロジェクトの概要

本ページでは、広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)が、東広島市教育委員会と連携して行う、市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習について紹介します。

事業概要
●事業テーマ  : 広域交流型オンライン社会科地域学習を実施する
●連携協力機関 : 東広島市教育委員会

●事業目的・内容:
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

 

(広島大学オープンイノベーション事業本部作成の動画)

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)(センター長:草原和博教授)は2021年度から、東広島市教育委員会と連携して、市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を開始しました。GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して、市内各地からの中継を交えながら、東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的に学びます。さらに、この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。

プロジェクトの実施にあたっては、参考コンテンツとして、EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ

本年度は、2021年6月の試行に基づいて、毎月1回2時間、テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで、小規模校と大規模校の子どもが、年間を通して、各地域のようすを比較したり交流したりしながら学びを深められるように工夫しています。

目 的
広島大学教育ヴィジョン研究センターが開発した「のん太の学び場」(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)と東広島市教育委員会作成の小学校社会科副読本を効果的に連携させた広域交流型オンライン社会科地域学習の実施を通して 児童の主体的 対話的で深い学びを創造する。

ポンチ絵(20210528版)KKのサムネイル

実施内容
〇 「市内の小学校」と「学習対象となる地域等」と「広島大学」がオンラインでつながり遠隔授業を行う。
〇 遠隔授業の全体進行は、大学の担当者が行う。各教室での指導は、各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し、授業準備、授業支援、後片付け等を行う。
1年間の計画案


広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」なのか?本当に「エコ」な「パーク」なのか?(2022年5月25日)(クリックすると開きます)
5月25日 :「広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」なのか?本当に「エコ」な「パーク」なのか?」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 広島中央エコパークからの中継:大岡慎治,神田颯,國重和海,両角遼平
  • 大崎上島からの中継:川本吉太郎
  • 学校技術支援担当:小田原瞭雅,上口朋佳,近藤郁実,近沢菜々子,藤井冴佳
  • 事務局機器担当①:小野創太,草原聡美,藤井日羽
  • 事務局機器担当②(西条小学校):正出七瀬,田中崚斗,吉田純太郎

 

2022年5月25日,東広島市内小学校9校19学級(西条,寺西,郷田,高屋東,東西条,高美が丘,板城西,福富,豊栄)の4年生(605名)が参加し,「ごみの始末と利用」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目は,「みんなの家から出るゴミが集まる広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」で,「エコ」で「パーク」なのだろう?」をめあてにして学習を進めました。本来,汚くて臭いゴミが集まってくるためにマイナスイメージの強いゴミ処理工場が,どうして「エコ」「パーク」なる名前を冠しているのか。まして東広島市に所在しているのに,なぜ「広島中央」を名乗っているのか。児童がゴミ処理工場に対して抱いているイメージと,施設名とのギャップに迫ることで,広島中央エコパークの果たす役割やその機能について理解を深めることを図っています。

まず導入部では,私たちが出すゴミの行方を考えました。事前アンケートの結果によれば,参加児童の約半数が,朝出した燃やせるゴミがその後どこに行くのかを知らないことが明らかとなりました。そこで,ごみ収集車やバキュームカーが施設の中に入っていく様子を中継することによって,ゴミの終着地が広島中央エコパークであるという共通認識を持たせました。

次に,展開部では,上記のめあてを基に,①広島中央,②エコ,③パークのそれぞれに注目して,施設の特徴について認識させました。具体的には,①広島中央エコパークには,東広島市だけではなく竹原市や大崎上島町からもゴミが送られてくるということ(=施設の広域性)。②広島中央エコパークでは,ゴミを高温で処理して溶融物を資源に変えたり,燃焼時に発電を同時に行ったりしているということ(=施設の循環性)。広島中央エコパークでは,子ども向けの学習コーナーでゴミやし尿の処理について勉強したり,足湯や遊具を楽しんだりすることができるということ(=施設の娯楽性)を学びました。

①から③のいずれも,1人1台端末を活用したクイズ場面と,学生リポーターによる中継場面の2段構えで構成されていることがポイントでした。各パートでは初めに「広島中央エコパークにはどこからゴミが集まってくるのかな?広島市?三原市?大崎上島町?」といったクイズに回答することを通じて,子どもは楽しみながら自己の仮説を生成することができました。また,それを臨場感あふれる中継映像によって答え合わせをすることで,児童は現地で見学をしているような感覚でエコパークについて学ぶことができました。巨大なクレーンがゴミを攪拌する様子や,大崎上島から収集車がフェリーを使ってゴミを運搬している様子を中継したシーンでは「おおーっ!」「すごい!」と声を上げる児童も数多く散見されました。

2時間目は,「ゴミについて,どんな課題を調べたり,追究したりしたらよいだろうか?」をめあてにして学習を進めました。1時間目で学んだことから生じる新たな疑問から,今後のゴミ学習の追究課題を発見・設定させることを図っています。

具体的には,「私たちは,ごみの●●について追究したいです」の●●に入る言葉を各学級で決定しました。例えば「なぜゴミは分別しないといけないのか」,「燃やせないゴミはどうやって処理しているのか」,「ゴミ処理場があるのに,海にゴミがあるのはなぜか」といったアイデアが学校から出てきました。特に「なぜエコパークは市内の便利なところではなく山の中にあるのか」は,ゴミ処理場が市民生活を営む上で必要なのはわかっているが自分の家の近所に作ってほしくはない……というジレンマを子どもに認知させる点で注目すべき問いでした。

また,授業者からも探究したい課題の例が示されました。「こんなにすごいエコパークだったらもっと広がればいいのに…。なぜ県内には1つしかないのですか?」,「東広島市のごみ袋のねだんが(他の町と比べて)高いのは,エコパークのせいですか?」,「こんなにすごいエコパークだったらもっと早く作ればよかったのに…。なぜ準備から完成まで10年もかかったのですか?」といった質問とその回答を通じて,児童はゴミ処理場の必要性のみならず,課題(=莫大な運営・維持コスト,地域住民からの反対)について認識しました。

最後に,「広島中央エコパークは●●のために作られたしせつです」について,●●に当てはまる語を考えることによって,施設の理念や役割に注目しながら2時間の学びをまとめました。本時の内容理解が十分であったことを示す「3つの市町村が協力してごみを無くすため」,「遊びや安全,学習のため」といった回答が見られました。また,多くの学校が「未来」や「地球」という語を用いた説明をしていることから,子どもたちは持続可能なゴミ処理の必要性に気づくことができたものと推察されました。

2時間の学習を通じて,児童は市内のゴミ処理場に関して概観を認識し,ゴミに関する課題を発見することが出来ました。ゴミ学習単元の導入にふさわしい学習となりました。また,600名を超える児童が一斉にゴミ処理場を観察することが出来た点からは,遠隔学習が従来の社会科見学のオルタナティブになりうる可能性も感じられます。

 


お店にぴったりなキャッチフレーズをつけよう!(2022年6月15日)(クリックすると開きます))
6月15日 :「お買い物に役立つ,スーパー・直売所・コンビニの魅力を表したキャッチフレーズをつくろう!」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • ショージ寺家駅前店からの中継:大岡慎治,國重和海,近藤郁実
  • 福富しゃくなげ館からの中継:正出七瀬,玉井慎也
  • コンビニエンスストアからの中継:川本吉太郎,藤井冴佳
  • 学校技術支援担当:小田原瞭雅,上口朋佳,近沢菜々子
  • 事務局機器担当①(広島大学ほか):大坂遊,草原聡美,藤井日羽
  • 事務局機器担当②(八本松小学校):田中崚斗,両角遼平,吉田純太郎

 

2022年6月15日,東広島市内小学校7校13学級(原,八本松,小谷,福富,豊栄,風早,郷田)の3年生(303名)が参加し,「お店で働く人々」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,スーパー,直売所,コンビニという3種類の小売店の比較を通して,それぞれの小売形態が各々の特質を生かして消費者の願いに応え,利益を上げているという概念を探究できることが目指されました。

導入部では,まず「おうちの人とよく行くお店」に関する事前アンケートの結果(複数回答可)が示されました。1位は209人の児童が「よく行く」と答えたゆめタウン(ゆめマート)で,2位にはセブンイレブン(198人),3位にはショージ(162人)がランキングされました。続けて上記3つを含めたランキングの対象となった16のお店の名前カードを眺めながら,カードの仲間分けを行いました。この分類の活動を通して,私たちがよく知っている(使っている)お店/知らない(使っていない)お店を確認するとともに,小売店の3分類を緩やかに把握しました。
次にアンケートを行い,これら3つのお店グループそれぞれの違いを具体的な場面で予測しました。具体的には,「外国産のパイナップルを買う」「西条産のトマトを買う」「ドコモのスマホ代を払う」という3つの場面で,スーパーマーケット,直売所,コンビニのいずれを利用するかを問いました。アンケート結果はリアルタイムに集計され児童に提示されました。外国産のパイナップルを買うときはスーパーマーケット,西条産のトマトを買うときはスーパーマーケットや直売所に行くと傾向が,そしてドコモのスマホ代を払うときにはコンビニを選ぶという傾向が示されました。
普段からお店を使い分けていることを児童が意識したところで,各学級に対し追究したい学習課題の提案を求めました。子どもたちは,生活経験に基づく素朴な疑問から「売っているものの違いを知りたい」「(それぞれのお店の)良いところが知りたい」「売るための工夫を知りたい」などの課題を提案しました。これらを授業者が集約し,本時の課題を「3つのお店のちがい,似ているところ,工夫をみつけよう」に決定しました。

この課題に答えるために,3つのお店のオンライン見学を行ったのが展開部です。それぞれのお店の商品や内装を観察するとともに,児童から寄せられた質問を店員へインタビューを行いました。「どんな商品を売っているのですか」「商品は何種類置いてあるのですか」「今日のおすすめ商品は何ですか」「1日にお客さんはどれくらい来ますか」「お客さんはどこから来ますか」「お店は何時に開いて,何時に閉まりますか」。ポイントはこれらの質問を,3店舗全てで共通に聞いたことです。「スーパーとコンビニと直売所では,売っている商品の数が違う!一番多いのはスーパーだ!」といったように,児童は,各店の商品の量や質,客層,商圏概念を,インタビューを通じて比較考察できたと推察されます。また,児童は,自分たちの疑問に店員が答えてくれたことを嬉しく感じ,満足感した様子がうかがえました。
中継では,共通の質問を聞くだけでなく,各店独自の販売戦略もクローズアップしました。最初に見学したスーパーマーケット(ショージ寺家駅前店)では,特に商品の多様性と広域性に注目しました。県内外から入荷した10種類のトマトやメキシコから遠く海を渡ってきたアボカドに,児童は興味津々でした。また,関連陳列(=野菜売り場の近くでドレッシングを売る),チラシ等による広報といった工夫を確認していきました。
直売所(福富しゃくなげ館)の見学では,地元密着型が強調されました。地元の農家が直接出荷する採れたてのキャベツ,直売所敷地内にある製造所で作られた出来たての豆腐,地元でとれたエゴマを使って作られたそばを食べることのできる食堂にフォーカスすることで,地産地消を大事する直売所の経営のすがたを伝えていきました
最後に見学したコンビニでは,モノだけでなくサービスも販売している点をクローズアップしました。コンサートや野球観戦のチケットを買ったり,ATMを使ってお金を引き出したり,公共料金や税金を支払ったりできる点は,スーパーや直売所とは特に異なるところです。さらに,お弁当から飲み物などの飲食物を中心に約3000種類の商品を365日24時間いつでも買うことができるコンビニのコンビニエンス(=便利)さを発信していきました。

なお,各お店のオンライン見学が終わるごとに,子どもたちはお店の魅力を発表しました。例えば,スーパーマーケット見学の後には「お客様を気遣っている」「いろいろな商品を売っている」などの魅力が言語化されました。直売所見学の後には「食事をするところがあった」「安心安全な野菜」「出来立て・採れたてが食べられる」という魅力が指摘されました。コンビニ見学の後には「24時間いつでもあいている」「いろいろな人を助ける」などの魅力が発表されました。これらの表現から,各校の児童が小売店の特色とその違いを的確に説明できていることが分かります。各学級の発表を受けて,授業者は「お店には違いがあるから,買う人の色々な願いに応えることができる。そしてお店は,買う人の願いに応えることで儲けることができている」と述べて,小売店の似ているところ(=他店舗との差別化を通した消費者ニーズの獲得と収益拡大)をまとめていきました。

本授業では,コロナ禍でお店見学に行きにくい学校,あるいは学校周辺にスーパー・直売所がない地域の学校を念頭に置いて,オンライン社会科見学の可能性を模索しました。子どもにはお店の人に質問する機会を保証し,対話的な学びやアップでの観察が実現するように努めました。一部トラブルはありましたが,児童は3つのお店をじっくり近場で観察できたのではないでしょうか。参加した子どもは,各お店の魅力を伝えるキャッチフレーズづくりという宿題をもらって,授業は終了となりました。本授業は,「3つのお店のちがい,似ているところ,工夫をみつけ」たいという子どもたち自身が立てた課題に,小売店のオンライン見学と3つのお店概念を通して答えていく時間となりました。

 


社会科教科書にのせたい東広島市の農家とは!!(2022年7月13日)(クリックすると開きます))
7月13日 :「社会科教科書にのせたい東広島市の農家とは!!」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • ファーム・おだでのインタビュー:川本吉太郎,藤井冴佳
  • 豊栄町の渡辺さんへのインタビュー: 國重和海,正出七瀬
  • 学校技術支援担当:大岡慎治,近藤郁実,田中崚斗,玉井慎也,近沢菜々子,永田誠弥,八木謙樹
  • 事務局機器担当①(広島大学ほか):大坂遊,草原聡美,高須明根
  • 事務局機器担当②(下黒瀬小学校):小田原瞭雅,両角遼平,吉田純太郎

 

2022年7月13日,東広島市内小学校7校12学級(寺西,原,吉川,高美が丘,下黒瀬,豊栄,木谷)の5年生(290名)が参加し,「米づくりの盛んな地域」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,教科書に載っている日本の米どころ(=新潟県南魚沼市)と,東広島市の2種類の農家(=大規模な販売農家・小規模な自給的農家)を比較し,日本の農業の特色や課題を捉える発展的な学習が目指されました。

導入部では,まず教科書に登場した南魚沼市の農家の米づくりを,①水の得方,②水田の広さと形,③機械や肥料の使い方,④働いている人の数,⑤品種,収穫した米のゆくえ,⑥ねがいや苦労,という6つの視点で再整理しながら復習していきました。各学級からの発表を通して,教科書に登場した農家の特性(①魚野川の水を利用,②20haほどで区画整理,③機械化・肥料を使用,④家族で毎日耕作,⑤全国へコシヒカリを販売,⑥もっとお米を食べてほしい)を確認します。
次に参加している児童にオンラインアンケートを行い,東広島市の農家に対する子どもたちの素朴な印象を明らかにしました。「(教科書に出てくる南魚沼市の)三輪さんのような農家は,東広島市にもたくさんいるか」という問いに対し,「はい(たくさんいる)」が70%,「いいえ」が16%,「わからない」が14%となりました。授業者はこの結果から「本当にいるのかな?いないのかな?」と子どもたちに問いかけながら,事前に実施したアンケートの結果も共有します。「東広島市は,南魚沼市と同じぐらい米づくりがさかんだと思いますか」という問いに対し51%の子どもたちが「そう思わない」と答えたことを受けて,「東広島はやっぱり南魚沼に敵わないのかな?」と畳みかけました。これらのやり取りから,本時の学習課題である「東広島には,教科書に出てくる三輪さんのような米づくり農家はいるだろうか?」が導かれました。

続く展開部は,この課題に答えていくために,2つのパートで構成されました。
第一は,1時間目の農家の見学パートです。2つの農家へのインタビュー動画を視聴することにより,各農家の実態や性格を観察します。視聴の際には,導入部で示した6つの視点を意識させることで,自然条件,生産・分配・消費,労働,持続可能性といった社会科ならではの切り口で農家を捉えさせようとしました。
最初に視聴したのは,河内町のファーム・おだです。100haを超える耕地を有する大規模な販売農家(組合)です。広大な土地を管理するために,耕作の機械化,作業の組織化・データ管理化,作物の多角化,販売の広域化・インターネット化が行われていることがインタビューで示されました。これらの情報をもとに,「ファームおだは,南魚沼の農家と似ているか」というアンケートが行われ,57%の子どもたちが「やや似ている」と答えました。子どもたちからは,「他の作物を育てているからやや似ている」,「水の得方が違うから似ていない」といった理由も示されました。南魚沼市との比較を通じて,ファーム・おだの特徴が徐々に浮かび上がってきました。
次に視聴した農家は,豊栄町の渡辺さんです。先祖代々受け継ぐ0.5haの土地を,家族で管理している自給的な農家として取り上げました。機械の老朽化,他の仕事との兼業,収支上の赤字といった課題目白押しの中で,農業を続けていくことの苦労と意義が語られました。これらの情報をもとに,再度,南魚沼の農家と比較するアンケートが行われました。ファーム・おだの調査結果とは対照的に,「似ていない」と回答した児童が56%と過半数に達しました。インタビューそしてアンケートに対する回答傾向から,子どもたちはファーム・おだ,渡辺さんの対照性に気づき始めました。

第二は,2時間目前半の「販売農家」「自給的農家」の概念化パートです。まず,6つの視点×3つの農家(三輪さん,ファーム・おだ,渡辺さん)=18セルから成るワークシートに,各農家の特徴を記入させました。そして,この表を縦・横に眺めながら,各農家の特色を一言で表現させました。例えば,「ファーム・おだは広い土地で作った米を全国に販売する農家」,「渡辺さんは家族完結型の農家」のように,それぞれの農家の特徴と違いがキャッチフレーズ風に表現され,「販売農家」「自給的農家」の意味が子どもたちなりのことばで概念化されていきました。

第三は,2時間目後半の教科書に載せるべき農家を選択するパートです。まず「日本全体では販売農家と自給的農家のどちらが多いか」という問いを与え,統計資料(平均農地面積,農家別割合の年次推移)の読み取りからこれに応えさせます。読解を通して,子どもたちは,南魚沼の農家が決して「普通ではない(=一般的ではない)」ことを認識します。それを受けて,南魚沼の農家の代わりに「社会科教科書にのせたい東広島の農家」を選ぼう!という新たな学習課題が合意されました。
ファーム・おだと渡辺さん,どちらを載せたいかというアンケートを行ったのですが,子どもの65%が「両方とも載せたい」と答えました。その理由として,「比較できるから両方載せたい」「両方載せることで,それぞれの良さや苦労が伝わる」といった意見が示されました。これらの発言から,農業のバリエーションだけでなく,全国の子どもに日本の米づくりの実態として何を伝えるべきかという視点も意識されていたことがうかがえます。

終結部は,2時間の授業のまとめです。社会科教科書執筆者もされている本学の木村博一教授から,子どもの提案に対してフィードバックが行われました。木村教授は,子どもたちの主張に賛意を示しつつも,教科書の掲載量には限りがあることを指摘しました。その上で,デジタル教科書やタブレット端末の普及に伴って,子どもたちのアイデアが実現する可能性が高まっているとし,子どもたちに具体的な提案に期待を寄せました。

本プロジェクトでは,はじめて小学校5年生を対象に実施しました。一般に5年生の社会科は全国規模で産業を学びます。しかし今回は,教科書に掲載された南魚沼市の農家と東広島市の農家を比較することで,さらに東広島市の2つの農家を比較することで,日本の農業の実態や課題により深く迫ることができました。地域の課題に向き合いつつ,深く洗練された概念的見方を育てる高学年社会科(産業学習)の遠隔授業を提案・実装できた点に,本実践の意義が認められます。

 


東広島市の水は,なぜ高い,なぜ遠くから?(2022年9月13日)(クリックすると開きます))
9月13日 :「東広島市の水は,なぜ高い,なぜ遠くから?」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 水道局からの中継:田中崚斗,山下弘洋
  • 三永水源地からの中継: 岩佐佳哉,大坂遊
  • 学校技術支援担当:永田誠弥,  森本敬仁, 藤原瑞希
  • 事務局機器担当①(広島大学ほか):草原聡美,藤井冴佳, 守谷富士彦
  • 事務局機器担当②(入野小学校):川本吉太郎,正出七瀬,吉田純太郎

 

2022年9月13日,東広島市内小学校5校9学級(寺西,原,高美が丘,豊栄,入野)の4年生(286名)が参加し,「命とくらしを支える水」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,東広島市の水道料金が高い理由を,①外部依存,②広域性,③供給の小ささ,④需要の大きさから説明することを通して,安全安心な水の安定供給のあり方とその意義について学習することが目指されました。

導入部では,「水道水とは何か」を問い,本授業全体の問いを導きます。授業冒頭ではまず,事前アンケートの結果が示されました。「あなたの家の水は有料ですか」という問いに対し,36.3%の児童が有料,57.8%の子どもたちは「わからない」と回答しました。すなわち,残りの5.9%の児童は無料であると答えたことになります。参加校の1つである豊栄小学校の子どもたちは,ほとんどの家で井戸水を利用しており,水に料金がかかっていません。そのことが他の小学校に共有されることによって,東広島市の水の供給状況の多様性が確認され,私たちの水利用を見つめなおすきっかけとしました。
続いて,参加している児童にリアルタイムでのオンラインアンケートを行い,東広島市の人口19万人に占める有料の水道水の利用状況を予想しました。6万人,12万人,16万人,19万人のそれぞれの選択肢に対し,6万人が7.1%,12万人が36%,16万人が49.4%,19万人が7.6%という回答が寄せられました。正解である16万人と予想した児童が約半数となりました。授業者は,3万人程度は水道水ではない井戸水や山水を利用していること,水道水を利用している割合が全国平均や県平均よりも低いことも確認しました。
その上で,県内の水道料金の一覧表と地図を提示します。子どもたちは,島嶼部や山間部などの人口が少ない地域で基本料金が高いことを読み取ったほか,東広島市の基本料金は「どちらかというと高いから,もっと安くなってほしい」という意見が寄せられました。これらの声を踏まえ,本時の学習課題である「東広島市の水道料金は,なぜ高いのはなぜだろう?」が設定されました。

続く展開部は,この課題に答えていくための,2つのパートで構成されました。
第1パートの主要な問いは,「なぜ東広島市は水道料金が高いのかな?」です。まずは,その理由を各クラスで自由に予想していきます。子どもたちからは「他の市から買っているから」「山が多く水が取りにくいから」「浄水場が少ないから」「動物や人間がたくさん水を使うから」「色々なことにお金が必要だから」といった多様な予想が挙げられました。
続いてこれらの仮説を市水道局担当者へのインタビューをもとに検証していきます。担当者からは,まず東広島市内のほとんどの地域で県用水の水が利用されていることが示されました。特に5つの参加校の校区は,いずれも東広島市内の水を(ほとんど)利用していない地域にあること。市全体で見ても市内の浄水場で作っている水は全体の1/10程度で,ほとんどの地域は市外からくる水(県用水)が配られているという事情が話されました。授業者の「県用水は無料でもらえるんですよね?」という問いかけに,「県用水は有料であり,東広島市の水道料金の約半分が県用水の購入費用に充てられている」と応答があり,みんなでがっかりします。担当者は,市外から水を運んだり,市内の配水施設を設備したりする過程で費用が膨らんでいくカラクリを開示しました。これらを踏まえ,東広島市の水道料金が高い理由は,市外から足りない水を買ったり,市内で水をつくったり送ったりするのに,お金がかかるためである(=①外部依存,②広域性)という第1時のまとめが行われました。子どもからは,「東広島市内の浄水場だけでどうにか賄うことはできないのか?」などの質問が提示され,水道局の担当者からは,水利権というルールがあって,たとえ水があっても自由に使えない事情が解説されました。

展開部の後半は,前半の学びを受けて「なぜ東広島市では水が足りないのだろう(高い県用水を買わなくてもいいのに)?」の問いを探究していきました。この問いについても,まず子どもたちがたくさんの予想を上げていきます。川の流れと東広島市の位置を示す地図と給水人口に関わるグラフを手がかりに,「東広島市では人口が増えているから」「山の中で川の水か少ないのではないか」「施設を作るお金がないから」などの仮説がどんどん提起されました。
予想の後は,専門家へのインタビューを通して,これらの子どもたちの予想を確かめていきます。本学の地理学者・熊原康博准教授からは,「みんなの仮説の中に結構答えがあった」とコメントしたうえで,雨水を貯める範囲が少なかったり,上流部に大きなダムがなかったりする黒瀬川の特徴や地域の人口増加からその理由(=③供給の小ささ)を説明していきました。それに対し,授業者からは,事前にドローン撮影した三永水源地の映像を見せながら,「でも市内には大きなダムがあります。あそこの水を使えばいいのではないか?」と反論を加え,熊原准教授に揺さぶりをかけます。それに対し,熊原准教授からは,同水源地は戦時中に呉に水を送るために作られた「呉市の施設」であることを,「立ち入り禁止 呉市上下水道局」の看板が掲げられた水源地付近からのライブ中継で解説を加えました。さらに水道局の担当者からは,1982年の広島大学の移転や工場・団地の増加にともなう水需要の高まりも理由であること(=④需要の大きさ)が説明されました。

終結部は,2時間の授業のまとめです。展開部までの学びに加えて,2本の動画を視聴し,空間・時間の比較を通して,安全安心な水の安定供給の意義について考えを深めていきます。具体的には,厳しい衛生状態にあり,水汲みに時間を割かれるブルンジの子どもの動画と,井戸水に頼っていた40-50年前の東広島の水事情に関する幼稚園理事長のインタビュー動画を視聴したうえで,「もしも【水道・県用水】がなかったら,私たちは…」の続きを考える最終課題が示されました。子どもからは,その続きとして「汚い水を飲まないといけない」「安全な水が届けられず,困ってしまう」「清潔にできず,もしかしたら授業も受けられないかもしれない」などの文章が提起されました。本活動を通して,決して「当たり前」とはいえないライフラインとしての上水道の意義を,子どもなりに意識化・言語化することができました。

今回の授業では,子どもにとっては身近ながらも,実態はよく見えていない水をテーマに,水道料金に着目することで,水道の安定供給を支える社会システムを探究しました。その過程では,水道の通っている町と通っていない町,水道料金の安い市と高い市の比較,県全体の水供給のネットワークの俯瞰,そして過去や外国の水事情との対話を通して,「安心して飲める水がいつでも得られる」システムが構築される背景と意味を多面的・多角的に考えることができました。EVRIでは今後も,「広域交流」「オンライン」「社会科」の特性を活かして,より良い授業を開発,提案していきます。

 


海からはなれた東広島市に自動車工場はできるだろうか??(2022年10月19日)(クリックすると開きます)
10月19日 :「海からはなれた東広島市に自動車工場はできるだろうか??」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • マツダからの中継:大岡慎治,藤井冴佳, 両角遼平
  • 学校技術支援担当:小田原瞭雅,神田颯, 國重和海,佐藤莉沙,田中崚斗,近沢菜々子,永田誠弥,藤原瑞希,森俊輔,森本敬仁
  • 事務局機器担当①(広島大学):大坂遊,草原聡美,八木謙樹
  • 事務局機器担当②(龍王小学校):川本吉太郎,正出七瀬,山下弘洋,吉田純太郎

 

2022年10月19日,東広島市内小学校4校11学級(寺西,原,高美が丘,龍王)の5年生(341名)が参加し,「未来を作り出す工業生産」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,自動車工場の立地と,部品・完成品の輸送に注目しながら,「海からはなれた東広島市に自動車工場はできるだろうか??」という問いをめぐって,児童らが活発な議論を行いました。

導入部では,自動車工場の立地に関する一般的な傾向性を協働して確認しました。「地元の自動車会社:マツダの自動車は,どんなところで作っているのか」の問いの下,広島市と山口県防府市の2つの航空写真から,現在のマツダの自動車工場立地の特徴を見つけさせます。児童らは,写真をじっくりと見比べながら「海の近くに工場があること」「近くに高速道路などの高速道路が整備されていること」に気付きました。これらの発見を踏まえて,1時限目のめあてを「自動車工場は,なぜ海の近くにあるの?」に設定しました。児童らは,この問いに対して次々に予想を立てました。例えば,「海外への輸出に船を使うからではないか」「もし工場が山の中にあると,運搬にたくさんお金がかかるからではないか」などの仮説が提示されました。

続く展開部は,2つのパートで展開していきました。
第1パートでは,マツダの物流担当者へのインタビューを通じて,自分たちの立てた仮説を検証することを目指します。具体的には,①自動車工場から完成車はどのように運び出されるか,②自動車工場に部品はどのように運び込まれるのか,を確かめることで,臨海部立地の有利さを探究していきました。例えば,国内工場での生産約97万台のうち,およそ82%は海外向けであること。輸出には一度に5000台が載る自動車専用の運搬船が使われていること。逆に工場には,1日に2000台ものトラックが部品を運び込んでいること,その大半は広島県や山口県の関連工場から届いていることなどが,担当者から説明されました。時にはタブレットを用いたクイズも織り交ぜつつ,自動車の生産と流通のしくみを学ぶことができました。児童からは「船は一度にたくさんの車が運べて効率的だ!」「山の中に自動車工場があると港まで運ぶのが大変だ!」といった声があがり,「海岸の近くに工場を置くと,海(船)を使って自動車や部品を運ぶのにも,陸(トラック・鉄道)を使って自動車や部品を運ぶにも便利」というまとめが導かれました。
第2パートでは,他の自動車会社の立地を調べることで,臨海立地型の自動車工場という概念を批判的に吟味することを目指します。そこで本パートは,「(本当に)自動車工場は,海の近くでないといけないのか?」というアンケートからスタートしました。児童らはタブレットを介してこの問いに答えました。その結果は,「絶対にそうだ」が約24%,「そうだ」が約34%,「そうでない」が約17%,「絶対にそうでない」が約25%で,例えば「そうでない」理由として,「自動車工場には広い土地が必要だから」「運搬にはトラックが使えるから港以外でもできるのではないか」などの見解が示されました。この結果を踏まえ,更なるめあてとして,「(本当に)自動車工場は,海の近くでないといけないのか?」が設定されました。そして,実際に海から離れた内陸部に作られた自動車工場として2つの例を調べました。1つは,トヨタの元町工場(愛知県)です。海からは遠く離れているものの,キャリアカー(=車両運搬用トラック)を使って完成品を運び出していることを確認しました。もう1つは,フォルクスワーゲンのドレスデン工場(ドイツ)です。児童らは,工場から「CarGoTram」と記された電車が出てくる様子を視聴しました。電車で部品を運ぶことで,事故や渋滞を防ぎつつ,環境を汚さない輸送が行われていることを確かめました。

以上の学習を踏まえて,終結部では「海からはなれた東広島市に,しょうらい自動車工場はできるだろうか?」の最終課題に取り組みました。東広島市の地勢図と交通図,そして自動車関連工場の分布図などを手がかりに,東広島市は自動車づくりに向いているか,向いていないかを判断します。正答はありません。児童らの結論とその理由づけは,Zoomのブレイクアウト機能を用いて交流しました。今回は11学級が参加したので,5つのブレイクアウトルームを設定し,学級間で相互に発表していきました。
各ルームからは,以下のような主な意見が報告されました。
・海の近くの安芸津には広い土地がないから,自動車工場を作るのは難しいのではないか。
・平らな土地が少ないから,自動車工場を作るのは難しいのではないか。
・広い土地も働き手もいるから,自動車工場は作れるのではないか。
・市内には関連工場がたくさんあるから,自動車工場は作れるのではないか。
・市内には鉄道も高速道路も海もあるから。自動車工場は作れるのではないか。

最後に,各ルームの活動と発表に対して専門家からコメントをいただきました。広島大学の人文地理学者・由井義通教授は,東広島市は交通の条件がよいが,自動車工場建設に必要な安い土地に乏しいこと,近年の自動車工場は働き手の賃金に左右されやすく,どんどん賃金の安い地方や外国に移っていること,日本のようにやや賃金が高いところでは,(ポルシェがやっているように)高級車をつくる工場に徹すれば東広島市にできる可能性も高まること,などの見通しが示しました。

5年生対象の取り組みとしては,今回が2回目となりました(初回は本年7月)。好奇心旺盛な5年生であることも幸いして,①概念の構築とその再構築をはかる学習と,②概念を不確定な未来予測に活かす学習に取り組むことができました。保護者が自動車の関連企業に働いている児童は一定数おり,授業は当事者性のある学びとして展開していました。また,初めてブレイクアウト機能を使うことで,初対面の児童が教室を越境して直接対話する学習空間を生み出すことができました。EVRIでは,引き続き広域性を活かした社会科らしい授業を開発,提案してまいります。

 


東広島市に新しく交番か駐在所をおくならば,どこ?(2022年11月16日)(クリックすると開きます)
11月16日 :「東広島市に新しく交番か駐在所をおくならば,どこ?」
実施体制(敬称略)
  • 授業実施者:草原和博
  • 授業補助者:各小学校での授業担当教員
  • 東広島警察署からの中継:近沢菜々子,両角遼平,山下弘洋
  • 学校技術支援担当:宮本勇一,大岡慎治,神田颯,佐藤莉沙,玉井慎也,永田誠弥,森俊輔,森本敬仁,八木謙樹
  • 事務局機器担当①(広島大学):大坂遊,草原聡美,藤井冴佳
  • 事務局機器担当②(郷田小学校):川本吉太郎,正出七瀬,吉田純太郎

 

2022年11月16日,東広島市内小学校8校16学級(郷田,高屋西,御薗宇,高美が丘,福富,豊栄,木谷,風早)の3年生(399名)が参加し,「事故や事件からまちを守る」をテーマとするオンライン授業を実施しました。今回の授業では,警察署・交番・駐在所の機能や分布の違いを踏まえ,東広島市における交番・駐在所の配置案を児童らが議論し,提案しました。

導入部では,児童らの警察に関する素朴な認識(=警察官は警察署にいる)を揺さぶりました。授業はまず「財布を拾ったけど,どこへ届けたらいい?」という発問からスタートしました。ある児童は「広大前交番に持っていけばよいのではないか」と提案します。これを受けて,児童らは「あそこは警察署だったっけ?」「交番かな?」といった疑問を口々にしました。警察署と交番の違いがよく分からないことが確認できたところで,授業者は「約40%の児童は学校の近くに警察官がいることを知らない」という事前アンケートの結果を共有しました。これらのやりとりを受けて,1時限目のめあてとして「東広島市内で,警察官はどこにいる?(警察署だけか?)」が設定されました。

続く展開部は,2つのパートで展開していきました。
第1パートでは,警察機関の機能と分布について確認しました。初めに,授業者から東広島市における警察関係施設の分布図が示されます。「地図を見て『気づき』を探そう」との指示を受けて,児童らはこれをじっくりと読み解きました。読み取りの結果,「地図の真ん中(=市内中心部)あたりに交番がたくさん集まっている」「交番が市内の色々なところにあるのに,警察署は1つしかない」「交番や駐在所が全くない地域がある」といったことを発見していきました。これを受けて,次に警察署・交番・駐在所それぞれの仕事の違いについて学習します。タブレットを用いた○×クイズ(=東広島警察署に刑事はいるか,交番は24時間空いているか,駐在所に警官は住んでいるか,等)によって,各施設の役割についてある程度の見当を付けたのち,警察官へのインタビューを通じてこの見当を具体的に検証していきます。聞き取りを通じて,児童らは次のような認識を得ました。
・警察署は,地域全体を統括している。事件を捜査したり,交通の取り締まりをしたり している。
・交番は,個々の地域を担当している。警察官は交代制で働いており,(昼夜を問わず)住民からの相談や事故・事件に対応している。
・駐在所は,個々の地域を担当している。警察官は駐在所に家族と住み込んで(昼間をメインに)働くことで,地域の安全を見守っている。

第2パートでは,東広島市における交番・駐在所の数の変化について確認しました。先の学習を踏まえて,授業者はあらためて警察関係施設の分布図を示し,児童らに「変だな」「おかしいな」と感じるところを出すように促しました。児童らからは「交番が地図の真ん中(=市内中心部)にばかり集まっているのは変だな」,「警察署が1つなのに,交番がたくさんあるのは変だな」といった数や分布に関する疑問が示されました。中には,地図の空白地帯(=山間部)を指差しながら「今はないけれども,昔はここにも交番や駐在所があったのではないか」という仮説を唱える児童もいました。こうした児童の疑問を受けて,警察関係施設の増減を確かめることにしました。警察官へのインタビューから,1999年に1つの交番が増設されたものの,2002年には市街地のパトロールを充実させるために7つの駐在所が廃止されたことが説明されました(先の児童の仮説は正しかったことが分かりました)。

これらの学習を踏まえて,最終課題の「東広島市の交番や駐在所をていあんしよう」に取り組みました。児童らは,東広島市内における刑法犯認知件数(過去15年の変化,交番・駐在所別の件数の違い)のデータを読み取りながら,課題に答えていきました。
具体的には,交番や駐在所を増やすべきか,減らすべきか。あるいは既存の交番・駐在所を移設したほうが良いか。これらを論点に議論は大いに白熱しました。それぞれの学級の主張は大きく次の3つに類型化できます。第1に周辺部の増設パターン。自分たちの住んでいる町には交番・駐在所は1つしかないので,もう1つ増やしたいというものです。木谷小が提案しました。第2に都市部増設パターン。西条駅前や広島大学の周りは市内でも特に事件がたくさん起こっているので,ここに交番や駐在所を作るべきだというものです。豊栄小や高美が丘小,高屋西小が提案しました。第3に,都市部への移設パターン。自分たちの住んでいる町では年間を通じて数件しか事件が発生していない。つまり自分たちの住んでいる町は安全だから,広島大学や西条駅の周辺に引っ越したほうがよいというものです。郷田小や風早小が提案しました。もちろん正答はありません。この提案活動を通じて,治安を守る施設の空間的な偏りや,それを是正する視点,またその利害の対立にも気づいたものと解されます。

以上のとおり,本授業は,単に「警察官の仕事を知る」ことに留まりません。児童らは警察署・交番・駐在所の異同を調べることで,組織的・広域的な治安維持のシステムを探究できました。また,効率と公正(事件・事故の多発地域に重点配置するVS市内どの地域にも隈なく配置する)の社会的な見方・考え方をうまく働かせながら,意見を集約し,社会に提案することができました。
今回は実現できませんでしたが,本授業は,さらに学校間・学級間で意見を集約したり,県警に意見を提案したりする活動へ発展する可能性も秘められています。

なお,本実践は,東広島警察署の全面的な協力を得て実施することができました。データの提供や中継では格段の便宜を図っていただきましたことに深く感謝申し上げます。



[新聞]
2021年6月23日(水) 中国新聞朝刊 24面

*紙面のウェブサイトへの転載申請を行い、中国新聞社の許諾を2021年7月2日に得ました。(2021年7月6日掲載)

2021年6月23日(水)の中国新聞朝刊(24ページ)教育長官特集にて、草原和博教授の授業実践記事が掲載されました。「中国新聞PLUS日経テレコン21」会員の方はログインして内容をご確認頂くことができます。また、広島大学の図書館のPCもしくは学内サーバーから広島大学図書館のデータベースページを経由して「中国新聞PLUS日経テレコン21」にアクセスすることで、どなたでも無料で記事を閲覧することができます。


[新聞] 2021年7月1日 The weekly PressNet Vol.1056 2面
「見学の代わりに大学生が中継 東広島市5つの小学校オンラインで一緒に地域学習」にて、草原和博教授の授業実践記事が掲載されました。

[Web] 2021年3月7日(月) Town & Gown Office
コモンプロジェクト : 広域交流型オンライン社会科地域学習(広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI))」

 

Town & Gown Office(タウン・アンド・ガウンオフィス,TGO)は,広島大学・東広島市が推進するTown&Gown構想に基づき,地域の発展と大学の進化を目指して活動しています。このたび,広域交流型オンライン社会科地域学習がTGOの「コモンプロジェクト」に認定されました。社会課題と学術研究の2つが正しくマッチングしたテーマとして高く評価いただいております。併せて,「もしも東広島に「大学」がなかったら」(2022年2月9日実施)の授業の取り組みをTGOのホームページにてご紹介いただきました。本企画の授業と運営の魅力に溢れた記事です。どうぞご一読ください。

TGOのホームページより紹介記事をご覧いただけます。▶︎こちら
広島大学全学のホームページでも当該記事をご紹介いただきました。▶︎こちら


[TV] 2022年8月28日(10時05分~10時50分)NHK総合
「明日をまもるナビ」にて、2021年9月期「防災」の授業実践が放送されました。


 

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