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▶2024年12月26日 公開  ▶2026年1月29日 最終更新

プログラムの詳細や受講のお申込みは,

下記のページからお願いいたします。

(申込期限:2025年2月28日(金)まで)

https://www.hiroshima-u.ac.jp/gshs/risyu_syomei

※申込みは終了しました。ご応募いただきありがとうございました。

Introductionはじめに

 

プロジェクトの概要

本ページでは,広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)が主催する履修証明プログラムである「教師教育者のためのプロフェッショナルディベロップメント講座」について紹介します。

事業概要
●事業テーマ  :教師教育者のためのプロフェッショナルディベロップメント講座
●事業目的・内容:教師教育の実践に携わっている先生方=教師教育者を対象に,1年間(計80時間)をかけて教員養成・研修の改善と研究能力の向上,そして教師教育者のコミュニティづくりを支援すること。

以下,トピックごとに記載しています。
関心のある項目をクリックしてご覧ください。


講座開設の経緯(クリックすると閉じます)

近年,教師教育や教員養成の世界では,「教師教育者(Teacher Educator)」という概念が注目されています。「教師教育者」には,教員養成に携わる大学教員のみならず,教育委員会の指導主事や学校現場の管理職,同僚教師など,教師の成長に影響を与える幅広い立場の人も含まれています。「教師教育者」は,「教師を育てる研究者」や「元(ベテランの)教師」といった単なる職歴や専門領域を備えているだけではなく,教師の力量形成を支援する存在としての特別な専門性(professionality)や信念(identity)が必要であるとされています。このことから,世界中で教師教育者についての研究が行われ,教師教育者の専門性開発のあり方が議論されています。

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)は,設立当初から教師教育者に関する研究を行っています。これまで,日本国内外の学校や機関と連携しながら,「教師教育者とは誰なのか」「教師教育者とはどのような専門性をもつ存在なのか」「教師教育者が専門性を高めるためには何をすればよいのか」といったテーマについて,教師教育者の専門性に関する研究や実践を重ねてきました(「教師教育・授業研究」ユニットの特設ページもご参照ください)。

これまでのEVRIが行ってきた取り組みをさらに発展させるべく,2021年度4月より,EVRIは広島大学が社会人向けに開講している「履修証明プログラム※」の1つとして,「教師教育者のためのプロフェッショナル・ディベロップメント講座」を開設しています。

※「履修証明プログラム」…学校教育法施行規則で定められた,体系的な知識・技術等の習得を目指した社会人向け教育プログラムのこと。制度についての詳細は,文部科学省のこちらのページを参照。広島大学で開講されているプログラムについては,こちらのページを参照。


講座の概要(クリックすると閉じます)

若手教員や教育実習生の指導,および校内研修の企画・運営などに関わっている先生方を対象とした有料の講座です。1年間(計80時間)をかけて,EVRIが受講者の教員養成・研修の改善と研究能力の向上,そして教師教育者のコミュニティづくりを支援していきます。修了者には,学校教育法に基づく「履修証明書」を発行します。

受講をお勧めしたいのは,次のようなニーズをお持ちの先生方です。

  • (現職の教員として)実習生の指導や若手教員の育て方について学び,研究したい。
  • (研修担当者として)実習指導・授業研究の理念や方法について学び,研究したい。
  • (大学教員として)教職志望学生のためのカリキュラムや指導法について研究したい。
  • 教師教育の研究者として必要な,学術論文の読み解き方や資料の探し方を実践的に学びたい。
  • 教師教育に関する研究業績を積み重ねたい!そのために,学術論文の執筆に携わりたい。
  • 将来大学院に進学して教育学に関する最新の研究成果を学びたい!その準備をしたい。

プログラムの詳細や申し込み方法についてはこちらのリンク先,ならびに以下の案内用チラシ(PDF)をご参照下さい。

 

講座全体で,「オンライン講習」「共同研究・論文執筆」の2つが連動する形で進行していきます。
希望者には,任意で草原教授の提供する教師教育に関する大学院授業の情報提供も行います。
実施計画は,以下のようなイメージとなっています。


オンライン講座の実施計画(クリックすると閉じます)

オンライン講習の実施日程

実施日程は調整中ですが,5月から翌1月まで,毎月1回を原則として計10回実施予定です。
講習は1回2時間で,休日や祝日など受講者が参加しやすい日程で開催します。
講習終了後,2週間を目処に,その講習回に応じた課題を提出していただきます。

【実施日程(2025-07-03時点)】※都合により変更となる場合があります。
第1回:2025年5月17日(土)14:00~16:00
第2回:2025年6月22日(日)14:00~16:00
第3回:2025年7月19日(土)14:00~16:00
第4回:2025年8月3日(日)14:00~16:00
第5回:2025年8月30日(土)20:00~22:00 ※変更となりました
第6回:2025年9月27日(土)14:00~16:00
第7回:2025年10月18日(土)14:00~16:00
第8回:2025年11月29日(土)14:00~16:00
第9回:2025年12月20日(土)14:00~16:00
第10回:2026年1月10日(土)14:00~16:00

 


2025年度広島大学の授業カレンダー(クリックすると閉じます)

画像をクリックすると,広島大学の学年暦(授業スケジュール)掲載ページに遷移します。

 


オンライン講習の実施報告(クリックする閉じます)

受講者が聴講している,草原担当の大学院授業科目「教職課程・現職研修カリキュラムデザイン基礎研究」「教職課程・現職研修カリキュラムデザイン発展研究」の実施報告については,草原教授の個人HPにて公開する予定です。

基本的にはZoomによるオンラインの形で講習を行っていきます。以下,各回の講習の概要を報告していきます(随時更新)。

【第1回:2025年5月17日(土)14:00~16:00】

本年度も月に一度行われる講座が始まり,5月17日に第1回目の講座を実施しました。全国各地からオンライン上で6名の受講者が集まりました。

はじめに,本講習の趣旨説明と自己紹介が行われました。受講者は,初等教育機関や中等教育機関,高等教育機関,そして教育行政といった,様々な機関に所属されています。受講者に加え,ともに講習を作り上げていくスタッフも参加し,全員で講座進めていくことが確認されました。

次に,大坂教育研究推進員より講座全体についてのオリエンテーションが行われました。Microsoft Teamsをはじめとしたアプリケーションの使用方法,毎月のオンライン講座の流れ,各回の学習課題などの基本事項を確認しました。特にこの講座は,履修証明プログラムとして,オンラインで完結しつつも,共同研究グループを組織し,学術論文の執筆を行うことや,学術論文での学びをアウトプットすることを中心とした学びの中にインプットがあるという特徴を持つ全国でも大変珍しい特質を持つ講座であるということが強調されました。

休憩を挟み,後半ではアイスブレイクと自己紹介を兼ねた,教師教育者としての専門性開発研修に関わるアクティビティを行いました。アクティビティのテーマは,「“教師教育者としての”自己紹介」でした。受講者とスタッフ全員が,教師教育者としてどのような道を歩んできたのか,その「転機」と「契機」について,絵を描き,自己紹介をしてもらいました。受講者はグラフや階段,フローチャートといった様々な表し方で,それぞれの多様な経歴,教師教育者となった(あるいは”なってしまった”)経緯について語り,どのような問題意識があって受講を決めたのかを共有しました。参加者はZoomのチャット機能を活用して,自己紹介に対して気になったことや詳しく知りたいことを投稿し,それに回答を重ねるといった形で交流を深めていました。スタッフも同様に全員が自己紹介を行い,教師教育者としての思いや歩み,関心を開示しあいました。

自己紹介をふまえ,草原教授よりワークのまとめ(意図開示)がありました。教師教育者としての自己開示.書くことで自己の来歴をメタ認知することを企図していたことが伝えられました。このことが伝えられた背景には,教師教育者は,教師教育者としてのコア・リフレクションが必要不可欠であり,コア・リフレクションには相互対話・相互構築が求められるため,コミュニティとしての成立,ヴィジョンの共有に向けて,このような取り組みを実施したことが伝えられました。

今年度の講習では、6名の受講者が集まり,スタッフも含め,互いの話を行いやすい雰囲気の中で,全員の関心の在り所を知ることができました。次回以降,学術的対話を通じて,互いの問題意識のすり合わせを行っていきたいと思います。

(大村・大坂)

【第2回:2025年6月22日(日)14:00~16:00】

6月22日に第2回目の講座を実施しました。(今回は1名欠席のため,5名が参加)。

今回からは,①本日の講習の目標確認や大学院科目での学びを共有する「導入パート」,②教師教育に関する理論や研究方法について学習する「演習パート1」,③グループに分かれて教師教育に関するワークショップや共同研究を推進する「演習パート2」,の3本柱で講習を展開していきます。

「導入パート」では,近況報告や大学院科目に関する感想などが参加者間で共有されました。草原教授の担当する大学院科目「教職課程・現職研修カリキュラムデザイン基礎研究」に参加している受講者のお話を伺ってみると,教師教育者として活躍されている(過去のPD講座修了生である)大学教員の葛藤に関する経験を踏まえ,自身の経験と概念を擦り合わせることができているという語りが共有されました。この点について,草原教授はPD講座を通じ,概念や現象についての理論的枠組みを策定する,様々な概念を学び,自身の経験や日常的な現象について説明できる喜び,言葉に触れ合う機会となることを期待している旨が説明されました。

「演習パート1」では,あらかじめ課題として提示された教師教育に関する3つの論文(岩田ほか2018草原2017:281-290大坂ほか2020)を参照し,受講者が「教師教育者」「移行」「同型性」という概念について自身が理解した内容を報告しました。発表とその後のディスカッションを通して,教師教育者は,「職位,制度として教師を育てることを目的としている人」と定義された上で,6つの役割が設定されていることを確認しました。受講者の発表を通じ,6つの役割について整理していく中で,受講者の方々は,「ゲートキーパー」,「ブローカー」としての役割について,疑問を持たれているようでしたが,草原教授の解説を通じ,教師教育者という概念への理解が深まった様子でした。他にも,教師教育者になる,あるいはなってしまうといった「移行」について,松本教育研究推進員によって,二次的職業的社会化といった関連する概念を踏まえて説明が行われたことで,受講者に新たな見方・考え方が促されたり,教師教育者は学習者にこれまでの被教育体験を通じて形成された当たり前と思われる前提を問い直す必要性があり,その上で,教師教育者が伝えたいことと,教師教育者の伝え方を一致させる必要があるという共通認識が得られたことが確認されました。そして,PD講座も「移行」支援のあり方の一つに位置づけられるとともに,教師教育者が教師にとって望ましい教師のヴィジョンと指導を体現したロールモデルとしての役割を期待されることが示されました。

「演習パート2」では,昨年度のPD講座成果論文()を題材に,学術論文の読み解き方の修得と読み取った結果の共有,そして自らの研究関心についてメタ認知するアクティビティを行いました。活動を通して,学術論文には「研究上の主要な問いは何か?」「データはどのように集めたのか?」といった学術的な読み方と,「納得したところ、不満なところは?」「結果や示唆に共感できるか否か?」といった鑑賞的な読み方などがあり,論文は目的に応じた読み解き方が必要であることを確認しました。今年度の受講者は,論文を読み解くのが非常に早く,各論文の主要な問いについて,受講者の経験を踏まえて,議論が行われていたことが印象的でした。最後に,草原教授より,これまでのPD講座成果論文の傾向として,調査研究やインタビューなどの質的研究が多く,その理由としては,時間的制約もあるものの,多様な受講者の特性を活かした研究が行われていることに特徴があり,論文執筆の際の参考になることが述べられました。

「演習パート1」での議論は昨年度とは異なり,受講者による3つの概念についての発表に加え,草原教授,大坂・松本教育研究推進員による説明が行われたことで,非常に充実したものとなりました。一方で,「演習パート2」の活動に割く時間が限られてしまったことや,批判的に論文を読むことを促すことが難しいことが運営上の反省点として挙げられます。課題となる読むべき文献に加えて参考文献などもあわせて紹介するなど,講習外でも受講者の方々に学術論文に触れていただき,自らの問題意識や関心の所在がクリアになるよう支援していきたいと思います。

(大村)

 

【第3回:2025年7月19日(土)14:00~16:00】

7月19日に第3回目の講座を実施しました。(今回は2名欠席のため、4名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より,本日の講習の流れが説明されました。本日の講習では,①関連文献をもとに「(教師教育者の)アイデンティティと専門性開発」についての理解を深めること,②次回以降の共同研究に向けて課題意識のすり合わせを行い緩やかに共同研究のグループを作っていくこと,という2つの目的が説明されました。

今回も前回に引き続き,①本日の講習の目標確認や大学院科目での学びを共有する「導入パート」,②教師教育に関する理論や研究方法について学習する「演習パート①」,③グループに分かれて共同研究を推進する「演習パート②」の順に講習を進めていきました。

導入パートでは,大学院科目の振り返りとして,本講座のスタッフである小笠原教育研究推進員より感想が共有されました。小笠原氏からは,大学や学術コミュニティを問うような内容や,民主的な授業研究においてどのような位置付けで教師教育者はどのように関与することができるのかについての対話が印象的であったことが述べられました。また,前期授業科目全体を通して,教師教育者をめぐる議論を行う中で,教師教育者の奥深さを知ることができる機会であったことが共有されました。

演習パート①では,あらかじめ課題として提示された教師教育に関する4つの論文(大坂ほか2022草原2019松本・白石2025岩田2023)やその他関連する文献を参照し,「(教師教育者の)アイデンティティ」「(教師教育者の)専門性開発」という二つの観点から論点や学びをまとめた成果が受講者から共有されました。

まず,「(教師教育者の)アイデンティティ」については,課題文献の1つの著者でもある松本助教からは,仕事に埋め込まれた状況において,自己の認識,解釈,行動を導く個人的な枠組みである「教師教育者のプロフェッショナル・アイデンティティ」を枠組みとして松本・白石(2025)の研究を行ったことを基に,概念に基づいた研究の枠組みを策定する重要性が語られました。また,草原教授からは,大坂ほか(2022)の研究が「教師教育者への移行」と「教師教育者アイデンティティの形成」がセットであるという視点に着目されていることに注目し,教師教育者になることや教師教育者であることに違和感を抱く,すなわち,異業種・異文化からの参入,未熟者としての参入によって,教師教育者としてのアイデンティティに揺らぎが生じることが語られました。

次に,「(教師教育者の)専門性開発」について,大坂教育研究推進員は,看護教育者(大学や専門学校等で看護師を養成する専門職)の専門性開発プロセスと対比させながら,その特徴や課題について情報提供しました。大坂氏は,看護教育者の専門性開発は制度的に厳格に整備がなされており,専任教員や教務主任(専任教員を統括する職)といった役職に就くためには,制度化された研修などを受ける必要がある一方で,教師教育者にはそのような制度がない現状にあることが紹介されました。このような違いが生じる背景には,養成課程の複雑さと養成する専門職が担当する職務の質的な違いがある可能性が共有されました。

演習パート②では,共同研究グループづくりのためのテーマ設定の議論を行いました。最初に,ホワイトボードアプリであるCanvaを用いて受講者の教師教育に関わる研究や実践上の問題関心を「問い(疑問)」の形で複数提起してもらい,それらをスタッフが中心となって2つのグループに整理・共有しました。その後,整理をもとに受講者とスタッフが関心の異なる2つのグループにゆるやかに分かれて,各グループの共同研究のテーマや問い(RQ)を検討しました。

1つ目のグループでは,教師同士の関係性や教師教育者の役割,そして教師同士が学び合う環境・文化といったテーマが提示されました。グループ活動では,「信頼関係」と「権力性」の2つのキーワードが挙げられ,教師教育者(研修実施者)と被教育者(受講者)という立場の違いや,知識の多寡によって生じる発言力の差,研修テーマに対する関心の有無によって生じる熱意の差などによって,権力性が生じるのではないかといった点が議論されていました。議論を踏まえ,”open classroom climate”(開かれた学級環境)の概念を視点に学校現場における研修などの学びの空間を捉えていくことや,小学校や高等学校といった,校種間の同僚性の差異に着目することで,異なる文化や土壌でも運営を可能にしていく新たな知見が得られる可能性があることが共有されました。

2つ目のグループでは,「研修観」というキーワードが研究の手がかりになるのではないかという示唆が提示されました。具体的には,研修に何を求めているのか,また教師教育者がどのような研修を「良い」と考えているのかといった,研修に対する考え方に焦点が当てられました。そして,教師教育者としても活動している参加者を含め,さまざまな立場の人がどのような研修観を持ち,それがどのように変容してきたのかを明らかにする研究が可能ではないか,という議論が展開されました。このように,「研修観」という視点から,どのようなRQを立てられるのか,またどのような研究が構想できるのかについて,活発な意見交換が行われていました。

今回は参加者が少なかったこともあり,あくまで緩やかなグループ分けの中で,課題意識の共有やRQの設定を行いました。ただし,議論の内容はまだ抽象的であり,今後も継続的に議論と検討を重ねながら,研究テーマを具体化していく必要があると感じられました。研究グループや研究テーマについては,今後の議論を踏まえて柔軟に変更していくことを想定しています。次回の講習では,今回欠席した受講者の方々も交えた議論のもと,グループの確定および研究テーマの深化を図れるような環境を整えたいと考えています。

(大村・大坂)

 

【第4回:2025年8月3日(土)14:00~16:00】

今回は,8月3日に第4回目の講座を実施しました。(今回は1名欠席のため,5名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より本日の講習の流れが説明されました。本日の講習では,①関連文献をもとに,教師教育の研究と実践における重要な概念である「成人教育論とメンタリング」について,文献を参照した成果を発表し,議論を通して理解を深めること,②PD講座で実施する共同研究について,研究グループを確定させ,リサーチクエスチョンやデータ収集の方法といった具体的な研究の枠組みや手続きについて協議すること,の2つの目的が共有されました。

今回もこれまでと同様に,①本日の講習の目標確認や大学院科目での学びを共有する「導入パート」,②教師教育に関する理論や研究方法について学習する「演習パート①」,③グループに分かれて共同研究を推進する「演習パート②」の順に講習を進めていきました。

演習パート①では,受講者が課題文献に関する学びを共有しました。あらかじめ課題として提示された教師教育に関する3つの論文(赤尾編2004:141-169濱本ほか2019中川2022)と1本の動画(草原教授作成の広島大学内の新任教員研修用教材 ※非公開),その他関連する文献を参照し,「成人教育論」「メンタリング」という二つの観点から論点や学びをまとめた成果が受講者から共有されました。

まず,「成人教育論」をテーマに,受講者から発表が行われました。発表では,経験学習サイクルや経験学習プロセスを基軸として,成人学習者の経験をどのように捉えるのか,成人の学習を促すためにはどのようなことが求められるのかについて,受講者自身の経験を踏まえて論じられました。受講者の発表を受け,大坂教育研究推進員は,理想的なリフレクションのプロセスを示したALACTモデルを提示しました。大坂氏からは,教師の成長には,教育実践を行ったのち振り返りが行われることが不可欠であること,また実践者の経験的な知見と学術的な知見の擦り合わしていくことの重要性が語られました。

続いて,「メンタリング」をテーマに,受講者が発表を行いました。発表では,メンタリングの概念やメンタリングを行うメンターに求められる資質・能力について,参加者自身の経験を踏まえた報告が行われました。参加者の発表を受け,松本助教からは,メンタリングは企業や大学でも用いられる概念であり,優れた業績をもつ教師が優れたメンタリングを行うことができるわけではなく,異なる能力が必要となることが語られました。また,松本氏は,教育実習のような学校での実践があってこそ教師教育は成立するため,大学と学校の教師教育者がいかに連携するかが課題となる可能性が示唆されました。

演習パート②では,共同研究の具体的な手続きについて協議しました。受講者はまず前回の議論を振り返った上で,2つの共同研究グループに分かれ,リサーチクエスチョン(RQ)の精緻化やデータ収集の方法を検討しました。結果として,研究テーマは前回と同様に「権力性を生じさせない学校文化の醸成」と「校内研修の実施者が有する信念と受講者が有するニーズの差異」の2点となりましたが,前回とは異なるメンバー構成で研究を進めることで合意しました。

1つ目のグループでは,「学びあいが成立する文化をいかに構築するか」という問題意識を共有しました。メンバーは,学びあう場をどのように設定するのか,先行研究を読み解く中で,関連する概念についての理解を深めていくことといった前提条件の整理を行っていくことで,共同研究の基盤を形成していくことが確認されました。

2つ目のグループでは,「研修の実施者と研修の参加者は,研修を通じた学びをどのように捉えるのか」が主たる問いになっていくのではないかという共通認識が形成されました。このグループのメンバーは,全員何らかの形で研修を実施したことがあるという共通点があり,研修の実施者という立場で,研修の参加者に対し,どのような願いを持っているのかについて調査することが可能ではないかという議論が行われました。その後,データを収集する対象者や方法について活発な意見交換が行われ,次回のミーティングに向けた役割分担が行われました。

なお,PD講座では毎年,各グループの共同研究の成果を,広島大学人間社会科学研究科附属教育実践総合センターが刊行する『学校教育実践学研究』に投稿しています。そのため,このパートでは論文掲載に至るまでの具体的なスケジュールが確認されました。また,今後は講習外でもグループ毎に定期的に集まり研究を進める必要があることも共有され,次回の講習までに行うミーティングの日程調整も行われました。

今回の講座では,チャットでも校内研修を題材とした活発な議論が見られました。共同研究グループは確定したものの,グループ内での概念や課題意識のズレ,RQの精緻化など,依然として課題は残っています。今後は各グループで夏休み期間を利用して打ち合わせを重ね,次回8月30日の講習での有意義な報告を目指していきます。

(大村)

 

【第5回:2025年8月30日(土)20:00~22:00】

今回の講座は,8月30日に第5回目の講座を実施しました。(今回は1名欠席のため,5名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より本日の講習の流れが説明されました。本講座では,「導入パート」「演習パート①」「演習パート②」を通じて,①研究を遂行する上で必要となる質的研究の枠組みや質的分析法の基本的な考え方を理解し共同研究に活用すること,②共同研究の進捗や成果を報告・共有し,全体での協議を通して研究を発展させること,という2つの目的が共有されました。

「導入パート」では,2グループに分かれて進めている共同研究の進捗報告と,今後の研究の進展に向けた意見交換が行われました。各グループのメンバーは,このオンライン講習以外にも,オンライン上で定期的に集まり共同研究に必要な作業を進めています。各グループから,研究の進捗状況が報告され,その後,参加者全員で活発な意見交換が行われました。
第一グループは,「民主主義を実践するための場としてのレッスン・スタディと権力性の関係性」に着目しています。具体的には,協議を繰り返す中で,「レッスン・スタディを実施している当事者が持つ,あるいは行使している権力性の実態はどのようなものなのか」,「それはどのような問題を生み出しているのか」,「問題を解消するにはどうすれば良いのか」の3点を現時点のリサーチクエスチョン(RQ)として設定した経緯が報告されました。進捗報告では,協働的セルフスタディの手法の検討や,Kim 2021を主要参考論文に据える点などが共有されました。そして,今後の課題として3点が示されました。これまでの権力性や権威性に関する議論を踏まえ,①権力性・権威性という概念の整理,②セルフスタディを通した,先行研究(文献)を拠り所とした自身の研修経験の省察,③権力性の位置付け直しです。この報告について,草原教授は2つの点を提案しました。1つは,「概念整理と並行して,自身の実体験に基づく感覚的な権力性の存在を記述してはどうか」です。もう1つは,「有益な権力性は維持し,そうでないものは解消するという視点で,様々な職業的立場から権力性を整理することも有効ではないか」という提案がありました。
第二グループでは,「校内研修の企画者と受講者が持つ認識の差異」に着目し,その差異を明らかにすることを研究目的としています。この目的を達成するため,「企画者は研修にどのような認識を持っているのか」,「企画者と参加者の認識にはどのような差異があるのか」という2つのRQを設定しました。進捗として,インタビューガイドと質問紙の作成が進んでおり,次回の講座までにデータ収集を行う予定であることが共有されました。また,草原和博教授からは,この研究の方向性について,草原教授から以下のコメントがありました。まず,草原氏は,「校内研修をPLC(Professional Learning Community)として機能させることが,研修をより良くする」という仮説を指摘しました。その上で,企画者と参加者の認識の差異を明らかにすることが重要になる。なぜなら,両者の認識のズレが大きければ大きいほど,その研修はPLCとして十分に機能していないと考えられるからです。そのため,企画者と参加者の認識を一致させていくことがPLCを成立させる重要な条件である,という問題意識をより強調してはどうか,と提案がなされました。

「演習パート①」では,大坂氏が,質的研究の基本的な考え方とコーディング作業について概説しました。これは,例年,共同研究で質的研究法が採用される可能性が高いことを踏まえたものです。大坂氏は,サトウタツヤほか編(2019)『質的研究法マッピング』に依拠し,「実存-理念」と「過程-構造」の2軸・4象限で分類・説明をしました。また,同氏はそれぞれの象限の代表的な研究法として,「TEA(複線径路・等至性モデリング)」「SCAT(Steps for Coding And Theorization)」「GTA(Grounded Theory Approach)」「ライフヒストリー」などを,参考文献とともに簡単に紹介しました。

「演習パート②」では,導入パートでの議論をふまえ,グループ毎のブレイクアウトセッションが行われました。その後,今後の研究の方向性などが全体で共有されました。
第一グループの今後の研究の方向性として,これまでの共同研究を進める過程で議論されてきた権力性や権威性をどのように位置付けていくかを中心的に議論が行われました。権力性そのものではなく,「どうすれば民主主義的なレッスン・スタディが実現できるか」という視点に研究の軸足を移すことを確認しました。これにより,RQもより実践的なものへと変化していく可能性が示唆されました
第二グループでは,グループのメンバーが研修企画者の立場で相互にインタビューを行うという方向性を固めました。また,当初予定していたアンケート調査を質問紙調査に切り替えることも共有されました。今後はインタビュー手法や質問紙の妥当性を検討し,データ収集の準備を進めていきます。ただし,草原氏から倫理的配慮に関する助言がなされました。それは,回答を強制せず,短い時間で収集できるような,簡素かつ現実的な方法を検討してはどうかという点です。これは,今後の検討課題となりました。

多くの学校では夏期休暇が終わる時期ですが,大学はまだ休暇期間中です。そのため,研究と分析に時間を確保できる受講者もいます。9月中に先行研究の整理やインタビューの実施・分析を進め,10月からの論文執筆に向けた準備を行う予定です。

(大村)

 

【第6回:2025年9月27日(土)14:00~16:00】

今回の講座は,9月27日に第6回目の講座を実施しました。6名全員が参加し,オンライン上で集合しました。

はじめに,大坂教育研究推進員より本日の講習の流れが説明されました。本講座では,「共有パート」「演習パート①」「演習パート②」を通じて,①共同研究の進捗や成果を共有し協議すること,②研究の分析や論文執筆に関する情報提供を行うこと,という2つの目的が共有されました。

「共有パート」では,2つの共同研究グループから,前回の講座以降の進捗状況や具体的な成果物について報告し,意見交換が行われました。

第一グループは,「どうすれば授業研究(レッスン・スタディ)を民主的な場にできるか」というリサーチクエスチョンを軸に研究を進めています。前回の講座後は,木村・岸野(2019)『授業研究』の文献購読を通して議論を深め,リサーチクエスチョンの再整理を行っていることが報告されました。また,9月下旬には「授業研究が民主的な場になっていない要因は何か」をテーマにフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施し,その中で「ベテラン教員と若手教員といった立場の問題」が大きな要因として浮かび上がったことが報告されました。さらに議論を深める中で,医療カンファレンスには存在する「グランドルール(議論の作法やゴールについての合意形成)」が授業研究にはなく,弱い立場の人々の声を汲み取る「アドボカシー」として機能する仕組みが不在である点が,本質的な課題ではないかという意見が出されました。第一グループは,これらの議論を「氷山モデル」として整理できたことを共有しました。この報告に対し,草原氏や松本助教からは,本研究がセルフスタディという手法を採用していることから,「研究参加者である著者自身がなぜそのように要因を認識しているのか」,「それぞれの固有の学校文脈を踏まえることで研究の価値がより明確になるのではないか」といった,研究の意義をさらに高めるための提案がなされました。

第二グループは,「校内研修の企画・実施者と参加者が持つ認識の差異」に着目しています。研究の背景として,先行研究では両者の差異に着目したものが少ないことを挙げています。研究方法は,グループのメンバー3名への半構造化インタビューと,自由記述式質問紙調査を組み合わせることを予定しています。分析手法としては,質的データ分析法の一つであるSCAT(Steps for Coding and Theorization)を採用し,すでに各メンバーが分析を進めていることが報告されました。この報告に対し,草原教授からは研究デザインに関する問いかけがありました。それは,インタビュー対象者が「校内研修」「校外での専門研修」「県の研修」とそれぞれ異なるタイプの研修企画者である点に着目し,「日々共に働く『同僚』を対象とする研修と,そうではない『非同僚』を対象とする研修とでは,企画者の問題意識にどのような違いが生まれるのか」です。この問いを踏まえ,草原氏からは,この視点を研究の前面に押し出すことで,研究の独創性や価値がより明確になるのではないか,という提案がありました。

続く「演習パート①」では,研究の分析と論文執筆に関する情報提供が行われました。

まず,大坂氏が,オープンコーディングの基本的な考え方と,WordやExcelを用いた具体的な分析手順を紹介しました。続いて,松本氏が,第二グループも採用している分析手法「SCAT」について解説しました。SCATは,①注目すべき語句の抽出,②語句の言い換え,③テキスト外の概念の発見,④テーマ構成概念の生成,という4つのステップで分析を進める手法であり,その具体的な手順や留意点について情報提供が行われました。解説を受け,草原氏からは,特にステップ③「テキスト外の概念」を見出すには先行研究の知見が不可欠であり,研究の要となる部分である点が補足されました。また,研究の透明性・妥当性を担保する上で,分析プロセスを記録・管理する「データマネジメントプラン」の重要性についても情報提供が行われました。

最後の「演習パート②」では,共有パートでの議論をふまえ,グループ毎のブレイクアウトセッションが行われました。その後,今後の研究の方向性などが全体で共有されました。

第一グループでは,論文の構成について議論が行われました。共有パートでの議論を踏まえ,本研究は,分析によって得られた「氷山モデル」という成果物だけでなく,そこに到達するまでの研究プロセスそのものにも価値があるという認識が共有されました。学校内外の多様な立場(教員,外部専門家,別領域の専門職育成者)のメンバーが,協働的セルフスタディを通して授業研究の課題を探究するプロセス自体が,他の学校組織にとっても示唆に富むモデルとなりうるからです。今後は,この「成果」と「プロセス」双方の価値を明確に示す論文構成を検討していくことが今後の課題として共有されました。

第二グループでは,論文題目,著者順,今後のスケジュール,そして分析上の課題について議論が行われました。著者順については合意に至りましたが,論文題目については,2つのリサーチクエスチョンを8ページという限られた紙幅で論理的に繋ぐことの難しさから,結論は持ち越しとなりました。今後は,最終締め切りから逆算して設定したスケジュールに沿ってSCAT分析を進めるとともに,分析の妥当性を高めるため複数人で分析を行うことなどを検討しつつ,次回の打ち合わせで論文題目を最終決定する予定です。

最後に,大坂氏より今後の進め方について説明されました。最大の課題は,10月中旬の論文投稿申込みの期限までに論文題目を確定させ,提出することです。論文執筆が本格化するこの時期,スタッフとしても,各グループが分析や考察を深められるよう,積極的に支援していきたいと考えています。今後は,各グループとの個別打ち合わせの機会を設けるなど,執筆プロセスそのものがより一層参加者の学びにつながるよう,講座として伴走していく予定です。

(大村)

【第7回:2025年10月18日(土)14:00~16:00】

今回の講座は,10月18日に第7回目の講座を実施しました。(今回は1名欠席のため,5名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より,本日の講習の流れが確認されました。12月上旬論文の完成原稿の提出まで残り一ヶ月半を切ったことを受け,本講座では講義形式のパートは設けず,各グループでの研究の進捗共有と協議に全ての時間を充てることが確認されました。

「共有パート」では,論文題目の提出を終えた2つの共同研究グループによって,論文の構成案や執筆状況について報告が行われました。

第一グループは,論文題目を「異職種協働による協働的セルフスタディの意義と可能性の探究―授業研究の民主化を阻む要因の分析を通して―」として提出したことを報告しました。これは,当初の主題であった「授業研究の民主化」というテーマを探究する「プロセス」そのものに本研究の価値があるという議論の進展を踏まえ,主題と副題を入れ替えたものです。進捗として,論文執筆を進める中で分析ツールである「氷山モデル」を修正したことが共有されました。具体的には,①各層の名称を「顕在的要因」「潜在的要因」「構造的要因」へと変更,②各要因間の相互作用的な関係性を矢印で表現,③「構造的要因」をさらに階層化し,学校組織の問題とその背景にある社会・政策的要因を区別する,といった点が更新されました。また,論文構成案も提示され,特に第四章では,研究成果を多様な立場(学校内部者,外部者,異職種の専門職教育者など)のメンバーがどのように受け止め,次なる実践へと繋げようとしているのかを記述することで,本研究のプロセスが持つ意義を明らかにすることが確認されました。

第二グループは,論文題目を「校内研修に対する企画運営者の認識に関する事例研究―参加者及び教員研修の企画運営者との比較から―」として提出したことを報告しました。研究の背景として,先行研究では企画運営者と参加者の認識の差異に着目したものが少ない点を挙げ,本研究の意義を説明しました。章立てについても,「はじめに」「方法」「結果」「考察」「おわりに」という構成案が示されました。現在,各メンバーが分担してインタビューを通じて得られたテクストデータの分析を進めており,ストーリーラインや理論記述がまとまりつつあることが共有されました。また,研修参加者への質問紙調査からも,「研修で得たいもの」について企画運営者と参加者の間に認識のズレがあるという暫定的な結果が報告されました。この報告に対し,草原教授からは,「論文として示唆を述べる段階では,単にズレを指摘するだけでなく,そのズレをどうすれば乗り越えられるのか,という前向きな提案へと繋げることが重要ではないか」という提言がありました。

「演習パート」では,各グループに分かれて今後の研究の方向性を協議し,その内容を全体で共有しました。

第一グループでは,共有パートでの議論を踏まえ,「氷山モデル」をさらに精緻化したことが報告されました。特に,授業研究が民主化されていないという「顕在的要因」が,「構造的要因」に対して負のフィードバックを与えているという循環構造を矢印で加筆し,モデルの解像度を高めました。また,第4章の執筆に向けて,メンバーそれぞれがどの要因にアプローチしようと考えているかを具体的に議論し,各々の立場性を活かした省察を記述していくことが確認されました。

第二グループでは,メンバー全員で一人の参加者のインタビューから得られたテクストデータについて,協働的にSCAT分析を行ったことが報告されました。この協働的な分析を通して,一人では見出すことが難しかった「テクスト外の概念」について多様な視点からアイデアを出し合うなど,解釈を深めることができました。今後の作業として,各メンバーが自身の分析を進めると同時に,メンバー間での相互チェック(メンバーチェック)も行い,分析の妥当性を高めていくことが確認されました。

最後に,大坂教育研究推進員より,今後の進め方が確認されました。次回11月29日の講座が最終原稿提出前の最後の集まりとなるため,それまでに論文のフォーマットに流し込んだドラフトを準備し,相互に読み合える状態にしておくことが課題として提示されました。論文執筆が本格化するこの時期,スタッフとしても,各グループが分析や考察を深められるよう,積極的に支援していきたいと考えています。今後は,論文の完成という共通のゴールに向け,スタッフと参加者が一丸となって研究を推進していきます。

(大村)

 

【第8回:2025年11月29日(土)14:00~16:00】

今回の講座は,11月29日に第8回目の講座を実施しました。(今回は6名全員が参加)。
はじめに,大坂遊教育研究推進員より,本日の講習の流れが確認されました。論文の完成原稿の提出間近になったことを受け,本講座では,完成間近の論文をグループ間で相互に読み合い,コメントし合うことで,論文の質をより高めることにあると共有されました。

演習パート①では,各グループに分かれて相手グループの論文原稿を熟読し,改善点や疑問点について議論しました。その後,全体共有の時間を設け,各グループからフィードバックが行われました。松本佑介助教が,第二グループでの議論を集約して報告しました。全体として「非常に読み応えがあり,興味深い」と評価した上で,以下の改善点を提案しました。まず,論文中でリサーチクエスチョンが変化していくプロセスについて,初読者にはその意図や変遷のニュアンスが伝わりにくい可能性があるため,記述を工夫する必要があるのではないかという意見が共有されました。また,「パターン・ランゲージ」や「アドボカシー」といった用語の扱いについても,削除や補足説明が必要ではないかという提案がなされました。さらに,本研究の独自性である「異職種協働」が具体的にどのような結果につながったのか,その必然性をより強調すべきではないかという意見も共有されました。

続いて,大坂教育研究推進員が,第一グループでの議論を集約し,その結果を報告しました。「校内研修の企画運営者と参加者の認識のズレに着目した点については,重要性が高く興味深い」と評価した上で,以下の改善点が提案されました。まず,研究目的とタイトルの整合性について,企画者の比較が目的なのか,認識のズレが目的なのかを再考する余地があるのではないかという疑問が投げかけられました。また,考察の節構成とリサーチクエスチョンとの対応関係が読み取りにくいため,整理が必要ではないかという意見も共有されました。加えて,理論的枠組みであるPLC(Professional Learning Community)と分析結果の対応関係を具体化することや,「メタ校内研修」という示唆をより実践的な内容に練り上げる必要があるのではないかという提案もなされました。

演習パート②では,フィードバックを受け,各グループは提出までの残り期間でどのような修正作業を行うのかを確認しました。第一グループは,指摘を受けた「パターン・ランゲージ」に関する記述を削除し,用語の不統一やリサーチクエスチョンの記述を修正することが確認されました。また,異職種協働の意義について記述を強化し,シンプルかつ筋の通った論文になるようまとめていく方針が共有されました。第二グループは,リサーチクエスチョンと考察の対応関係を整理し,PLC概念を用いた分析の記述を具体化していくことが確認されました。また,示唆の部分をより実践的な内容へと修正し,論文の完成度を高めていくことが確認されました。

最後に,草原和博教授より講評がありました。草原教授は,今回の相互査読を「論文査読の入門編」と位置づけ,自分たちにとっては自明なことでも他者には伝わらない点があることを自覚し,批判的意見を受け入れて修正するプロセスの重要性を強調しました。そして,第一グループには,最終的な示唆として,研究成果(氷山モデル等)だけでなく,自分たちが持っている権力構造をメタ認知するために用いた「セルフスタディ」や「プロセスの可視化」といった方法論的な価値を,他の現場でも転用可能な知見として前面に押し出す提案がなされました。第二グループには,示唆で触れられている「メタ校内研修」について,概念の定義(何のために,どのようなビジョンの下で行うのかという共通理解の形成など)をより具体化することで,多くの読者にとって有益な示唆になるのでなはないかと提案がなされました。

論文の提出締め切りまで,論文の修正と提出までの作業を各グループで進めることになります。次回の講習時には,受講生とスタッフが一丸となって取り組んできた共同研究の成果として,納得のいく論文が完成できるよう,準備を進めていきたいと思います。

(大村)

 

【第9回:2025年12月20日(土)14:00~16:00】

今回の講座は,12月20日に第9回目の講座を実施しました。(今回は1名欠席のため,5名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より,本日の講習の流れが説明されました。12月5日に無事論文提出を終えたことを受け,本講座の前半では論文執筆プロセスの振り返りを行うこと,後半では研究活動を経て改めて「教師教育者としてのあり方」を見つめ直すための新たな活動として,ストーリー法に取り組むことが共有されました。

今回は,「共有パート」,「演習パート①」,「演習パート②」の3つのパートで講習を展開しました。

共有パートでは,論文提出を終えた各グループおよび個人が,執筆プロセスを通して得た学びや感想を共有しました。第一グループの参加者からは,共同執筆への不安がありつつも,自身が抱えていた「権力性」の問題意識をメンバーが真剣に受け止めてくれたことへの喜びが語られました。また,普段の医療現場とは異なる視点での議論が良い経験になったとの振り返りもありました。さらに,自分たちで「氷山モデル」を作り出せた意義や,大学教員としての視点の獲得についても言及がありました。大坂教育研究推進員は,セルフスタディの手法において当事者の受け止めを記述するという新しいアプローチへの挑戦が,自身の成長につながったと述べました。第二グループの参加者からは,学校現場にいながら研究として論文をまとめられた達成感と,企画運営者と参加者の認識のズレという今後の課題が見つかったことが報告されました。また,役割分担やSCAT分析などの手法を学べたことを成果として挙げる声や,中学校の校内研修文化の違いに興味を持ち,過去のデータを新しい手法で見直す可能性を感じたとの意見もありました。さらに,現職教員との共同研究により視点が広がったことも語られました。松本助教は,明確な役割分担によるスムーズな進行を評価し,このスタイルでの共同研究の可能性を示しました。

「演習パート①」では,論文執筆を通して形成された関係性を基盤に,自身のアイデンティティや規範,価値観をメタ認知し,再構築するための活動として「ストーリー法」が導入されました。草原教授より趣旨説明があり,人は自身の価値観や信念といった「レンズ」を通して世界を見ているというメタファーが紹介されました。レンズを完全に捨てることはできないものの,葛藤の物語(ストーリー)を読み書きし,話し合うことを通して,その特性を自覚(メタ認知)し,別の見方や行動の可能性を探ることは可能であると説明されました。

「演習パート②」では,既存のストーリー(A,B,C)を題材に,グループワークを行いました。「ストーリーにタイトルをつけるとしたら」,「主人公が直面した葛藤は何か」,「同僚としてどう声をかけるか」といった視点で分析し,議論を行いました。ストーリーA(初任者指導の葛藤)では,「スキル重視」対「信念重視」の狭間で揺れる主人公に対し,校長の意図を想像することの重要性や,同僚として校長の真意を共に考えたり初任者の思いを聞くアプローチが提案されました。ストーリーB(大学授業での葛藤)では,理想とする民主的な対話と学生の反応とのギャップに苦しむ主人公に対し,背景にある恐怖心やコントロール欲求が指摘され,学生自身に対話の是非を考えさせる等の対応案が示されました。ストーリーC(後継者育成の葛藤)では,自身の経験に基づいた指導が相手を追い詰めてしまった事例に対し,「自分ができるのだから相手もできるはず」というレンズの存在が指摘され,思考のリフレクションを促す支援などが提案されました。次回の課題として,自身の教師教育実践に基づき,直面した葛藤(テンション,コンフリクト)にまつわるストーリーを作成することが課題として提示されました。フィクション・ノンフィクションを問わず,必ず主人公を登場させ,互いのレンズの違いやすれ違いによって生じる葛藤を描くことが求められました。

次回は1月10日(金)に最終回として開催され,作成したストーリーを参加者・スタッフ間で共有し,読み合いを行う予定です。最終回となる次回の講座では,互いのレンズについて理解を深めながら,これまでのPD講座で得た学びの総まとめができるようにしたいと考えています。

(大村)

 

【第10回:2026年1月20日(土)14:00~16:00】

今回の講座は,1月10日に最終回である第10回目のPD講座を実施しました。(今回は2名欠席のため,4名が参加)。

はじめに,大坂教育研究推進員より,本日の講習の流れが説明されました。PD講座の最終回となる本日は,事前に参加者が作成した「教師教育者としてのストーリー」を互いに読み合い交流することを通して,自身の教師教育者としての歩みや信念,規範(レンズ)を改めて言語化し,この1年間の成長を振り返ることが目的であると共有されました。

今回は,「演習パート」,「共有パート」の2つのパートで講習を展開しました。

「演習パート」では,まず草原和博教授より活動の趣旨説明が行われました。草原教授は,対人専門職である教師教育者が直面する精神的な葛藤やストレスをナラティブ(物語)として記述することの意義を説明されました。他者のストーリーを読み,自身のストーリーを書くという一連のプロセスを通して,自身が文化や環境の中で形成してきた価値観やこだわりといった「レンズ」を自覚(メタ認知)し,新たな解釈や行動選択の可能性を探ることが本活動の狙いであることが再確認されました。

続いて,受講者は2つのグループに分かれ,事前に作成・提出された互いのストーリーを読み合いました。各グループでは,まず全員のストーリーを概観した後,特定の一つのストーリーを選定し,「タイトルをつけるとしたら」「直面した葛藤は何か」「同僚としてどう声をかけるか」といった視点で深掘りを行いました。その後,全体で分析結果を共有しました。一つ目のグループでは,ある受講者が初任者時代に経験したエピソードが取り上げられました。子どもたちと決めた教室の掲示物を管理職に一方的に撤去された理不尽さに対し,組織の論理と個人の子どもに対する思いといった教育的理想の狭間で葛藤した事例です。分析では,「対話文化は誰が作るべきか」「守りたい自分と従うしかない自分」といったテーマが挙げられました。同僚としての関わりとしては,当事者の怒りや悲しみに共感しつつ,管理職の意図を想像することや,対話の機会を模索する提案がなされました。草原教授からは,この事例を通して,「理不尽なことには抗うべき」「子供第一」という執筆者のレンズ(最上位の価値観)が明確に表れているとの指摘があり,自身のレンズを自覚した上で組織とどうコミュニケーションを取るかが重要であるとコメントがありました。
二つ目のグループでは,指導主事の立場にある受講者が,授業研究の場において「授業の質の保証」と「教師の尊厳の保持」の間で揺れ動く事例が取り上げられました。行政職として指導すべき立場と,元教師として現場の教員に寄り添いたい気持ちの二重構造が葛藤の要因として分析されました。分析では,事前に情報を収集して助言に活かすことや,管理職と連携することなどの具体的な対応策が議論されました。草原教授より,指導主事が「元教師であり,いずれまた同僚になり得る」という特殊なアイデンティティを持っていることが,この葛藤の背景にある日本特有の構造的課題であることが共有されました。

演習パートが終わった後,PD講座に参加している全員から一言ずつ振り返りのコメントを全体で共有しました。教師教育者としての自覚が増してきたこと,論文を書く機会が成長につながったこと,PD講座を通じて出来た関係性をこれからも大事にしていきたいなど,様々な感想・意見が共有されました。草原教授からは,今年度の講習を通して,他にはないPD講座ならではの特徴や利点として,以下の3点があることが確認されたとまとめました。①研究・論文・出版ベースで実施されていること,②省察と気づきを通して自己をメタ認知するプロセスが位置づいていること,③孤立しがちな教師教育者が集い議論する「サードプレイス」としてのコミュニティが形成されていること,です。これら特徴・利点を生かしながら次のステップへつながっていくことが期待されます。
今後は,3月末を目処に修了証明書が発行される予定です。また,修了生同士が継続的に交流できるメーリングリストの作成や,今回作成されたストーリーを今後の教材として活用することなどが案内され,第10回PD講座および今年度の全プログラムが終了しました。

(大村)

 


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「教師教育者のためのプロフェッショナル・ディベロップメント講座」に関するQ&A

  • 自分が受講する資格があるのか,受講しても最後まで継続できるのか不安なのですが,何か目安になるものはありますか?
    こちらのページの「履修資格」を満たしている方であれば,どなたでもご応募いただけます。ただし,R7年度の募集人数は5名程度となっておりますので,応募者多数の場合は選考となる場合がございます。また,学術研究や論文執筆といったアカデミックスキルが要求される専門的なワークが中心となりますので,不安な方は事前に担当者までご相談ください。昨年度のプログラムの活動報告ページも,ぜひご一読ください。
  • 受講希望者が定員を超えた場合などは,どのような基準で選考されるのですか?
    →応募者多数の場合は,教師教育を中心とした研究業績や,教師教育の実務経験等を考慮して履修者を決定します。定員は5名程度としていますが,運営スタッフの確保などの状況によって受け入れ可能な人数は変化します。
  • 受講した場合,必ず研究と学術論文の執筆を行わないといけませんか?研究するのではなく,純粋に教師教育についての理論や知見を吸収したいのですが…。
    はい。教師教育の研究を通して教師教育者としての専門性を開発することに主眼をおいた講座となっておりますので,参加にあたっては,共同研究への参加と学術論文の執筆が必須となります研究と論文執筆にあたっては,講座担当教員とスタッフが共同研究者として全面的にサポートします。これらの活動への参加が難しい,純粋に教師教育についての知見を深めたいという方は,EVRIの提供する教師教育に関連するセミナーに参加したり,科目等履修生として草原教授が担当する大学院科目を受講されるといった方法をご検討ください。
  • 研究活動は,具体的にどのくらいの時間・日数をかけるのですか?
    →研究テーマにもよりますが,過去の経験に基づくと,最低でも50時間~80時間程度,日数にして丸10日程度は研究活動に費やす必要があるとお考えください
    →研究活動の内訳は以下のようなイメージです。土日等の休日に時間的な余裕がない方の受講はおすすめしません
    – 先行研究の整理,RQや方法の確定,分析枠組みの確定・・・10時間以上
    – 聞き取り調査の準備,質問紙項目の作成,データ収集・・・10時間以上
    – データの分析と解釈,示唆についての議論・・・10時間以上
    – 論文の執筆(草稿作成→推敲→提出→校正)・・・20時間以上
  • 2023年度まで必須だった大学院の授業科目は,今年は受講できないのですか?
    受講はできませんが,情報提供は可能です講座の受講者は,草原教授が担当する大学院の前期科目「教職課程・現職研修カリキュラムデザイン基礎研究」と後期科目「教職課程・現職研修カリキュラムデザイン発展研究」を録画映像等を通して学ぶ機会を提供いたします。
  • 講習は,対面で受講する必要がありますか?遠方なので広島大学での受講が難しいのですが…
    講習は原則としてビデオ会議システム(Zoom)を活用し,すべてオンラインで実施する予定です毎月1回のペースで,土曜日または日曜日の午後に実施します。
  • 任意となっている,草原教授の担当する大学院の授業科目を正規に履修(単位修得)したい場合はどうすればいいですか?
    広島大学の科目等履修生に登録する必要があります。その場合,講座受講料とは別に,検定料や入学金や授業料等の追加の費用負担が必要となります(登録は2月末締め切り)もし将来的に広島大学の大学院への進学を検討されている場合,科目等履修生として事前に手続きをされることをお勧めします。科目等履修生として修得した単位は,大学院に入学後に修了単位に含めることができる場合があります。詳しいことは,下記の問い合わせ先にお尋ねください。
    ・広島大学 教育学系総括支援室(大学院課程担当)
    〒739-8524 東広島市鏡山1-1-1  TEL:082-424-3706
    E-mail:kyoiku-in■office.hiroshima-u.ac.jp ※■は半角@に置き換えてください。
  • 講座で参加できなかった回の補講などを受けることはできますか?
    可能ですが,講習には原則としてオンタイム(リアルタイム)での参加をお願いいたします。勤務の都合などでやむを得ず講座に参加できなかった場合は,オンデマンド(非同期オンライン)で欠席回の内容を補完していただきます。
  • 履修申請手続きの中に「履修資格を証明するもの」とありますが,これはどのようなものを提出すればいいのでしょうか?
    →前職を証明する書類(辞令等),あるいは現職を証明する書類(辞令,職員証等)の写しをご提出頂くことになります。
  • 休職などで現職を一時的に離れていても受講可能でしょうか?
    受講可能です申請時には「履修資格を証明するもの」として休職辞令のコピーなどをご提出ください。

 

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