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【2026.9.4】定例オンラインセミナー講演会No.202「『民主的社会をつくるシティズンシップ教育』を読む ―学校はシティズンシップ教育の中で何ができるのか― 」を開催しました。

公開日:2026年09月14日 カテゴリー:開催報告

I.開催報告

 

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2026年9月4日(金)に、定例オンラインセミナー講演会No.202「『民主的社会をつくるシティズンシップ教育』を読む ―学校はシティズンシップ教育の中で何ができるのか― 」を開催しました。大学院生や研究者を中心に74名の皆様にご参加いただきました。

はじめに、司会を務めた玄紀雲さん(広島大学大学院)・中西美里さん(広島大学大学院)より、本セミナーの趣旨が説明されました。本セミナーでは, 昨年刊行された『民主的社会をつくるシティズンシップ教育』では、シティズンシップ教育を学校だけでなく、家庭、地域社会、市民活動、メディアなど、多様なアクターによって担われるものとして捉えています。本セミナーでは、教員をめざす学生・大学院生が本書をどのように読み、どのような可能性や疑問を感じたのかを出発点として、学校はシティズンシップ教育のなかで何ができるのかを、執筆者・参加者とともに考えることが目的として示されました。

 

 

次に、川口広美さん(広島大学)より、編者の立場から本書の刊行背景と特徴が紹介されました。本書は、シティズンシップ教育の実践・研究が多様に広がるなかで、その「現在地」を見渡すとともに、異なる実践や研究が出会う「広場」となることを目指したものであることが説明されました。また、「広がりと出会い」「理論と実践の交差」「萌芽性」「批判性」を重視し、西洋や学校教育を中心としてきた従来のシティズンシップ教育の枠組みを問い直しながら、多様な声と知を結び合わせることを試みた書籍であることが示されました。

 

 

その後、愛媛大学および広島大学の学生・大学院生から、本書を読んで感じた可能性や疑問をもとにリスポンスが行われました。

愛媛大学からは、大石有美香さん(愛媛大学大学院)、宮﨑明野さん・森田諒さん(愛媛大学教育学部)が、子どもを将来社会に参加するための準備段階にある存在としてだけでなく、現在の「社会をつくる主体」として捉えることに着目しました。地域の通学路安全をめぐって子どもが警察などの大人と関わる実践などを手がかりに、学校での学びを実際の社会参加へとつなぐ可能性が示されるとともに、子どもを一人の市民として扱うとは具体的に何を意味するのか、学校だからこそ可能な社会参加とは何かが問いとして提示されました。

 

 

広島大学からは、中西美里さん・張朝鈞さん・玄紀雲さん・井戸浩太さん(いずれも広島大学大学院)が、それぞれの経験や研究関心から本書を読み、二つの論点を提示しました。

中西さんは、第1章を手がかりに、政治や社会科に高い関心をもつ生徒だけでなく、政治に関心をもたない生徒や政治参加の機会を得にくい生徒をどのように包摂するのかを問い、張さんは、第2章から、子どもの個人的な興味・関心と公共的な社会課題をどのようにつなぐのかを問いかけました。そこから、公共的な課題と個人の興味・関心をどのように架橋し、それらに関心をもたない子どもも含めたシティズンシップ教育をどう構想するのかという論点が示されました。

また、玄さんは、「外国人としてではなく、その人自身と出会う」という本書の議論から、他者を特定の属性に固定することも、逆にその人の背景や経験を見えなくすることもない関係のあり方を問いかけました。井戸さんは、自身の主権者教育の経験や外国にルーツをもつ子どもとの出会いから、学校教育が暗黙のうちに「日本人」や「有権者」を前提としていないかを問い直しました。二人の報告からは、多様な背景をもつ人々がともに生きる社会において、暗黙の「日本人らしさ」を前提としてきた学校教育をどのように問い直し、他者との関係をつくるシティズンシップ教育を構想するのかという論点が提示されました。

 

 

こうした学生・大学院生からの問いを受けて、編著者である小貫篤さん(埼玉大学)、斉藤仁一朗さん(横浜国立大学)、孫美幸さん(文教大学)から応答がなされました。

小貫さんからは、シティズンシップ教育に唯一の授業モデルを求めるのではなく、教師が目の前の子どもに応じて授業をつくることの重要性が指摘されました。そのためには、教師自身が、どのような社会を望み、どのような市民を育てたいのかという社会観・社会科観を自覚し、言語化しながら授業を構想する必要があることが示されました。

斉藤さんからは、子どもを「社会をつくる主体」として扱うことについて、実際の社会に関わる「本物の参加」と、学校だからこそ失敗しながら学べる「練習としての参加」の両方を保障することの重要性が示されました。また、身近さや当事者性だけを出発点とするのではなく、自分とは一見関係のない社会の問題や出来事との出会いを子どもに面白いと思わせ、好奇心を抱かせることから、新たな視点を獲得する学びの可能性もあると指摘されました。

孫さんからは、「シティズンシップ」や「市民」という概念自体がもつ両義性を踏まえ、それらを自明のものとせず問い続けることの重要性が示されました。また、学校の外で多様な他者と出会うことや、アートなどを通して他者を多面的に捉えることを手がかりに、互いの「弱さ」を含みながら他者にひらかれた学びや関係をつくる可能性が提起されました。

最後のラウンドテーブルでは、子どもの意見を大人が単に「聞く」のではなく、子どもと大人の異なる立場や論理を調整しながら、ともに社会をつくる経験をどう保障するのかが議論されました。また、「生徒に失敗する余地を残す」という観点から、政治や社会問題への関心、生活背景、進路などが異なる子どもたちをどのように包摂するのかについても意見が交わされました。さらに、「弱さ」を認めることと、何かを目指してよりよくなろうとすることとの関係や、弱さや失敗を抱えながら他者とともに学ぶことのできる場のあり方へと議論が広がりました。

 

 

本セミナーを通して、学校におけるシティズンシップ教育を、多様な背景や関心をもつ子どもたちが、他者や社会と出会い、試行錯誤しながら、ともに社会をつくっていく経験をどのように支えるのかという視点から捉え直す機会となりました。また、学校だけですべてを担うのではなく、地域や社会とのつながりのなかで、学校だからこそ担いうる役割を考えていくことの重要性が示されました。

EVRIでは今後も、学生・大学院生、研究者、実践者など、多様な立場の人々がそれぞれの経験や問いを持ち寄り、対話を通して教育のあり方をともに考える場をつくってまいります。

 

 

 

文責(川口広美


 

Ⅱ.アンケートにご協力ください

多くの皆様にご参加いただきまして,誠にありがとうございました
ご参加の方は,事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。


*第202回定例セミナーのポスターはコチラです。


教育学研究科HPにも掲載されています(準備中)


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