【2026.02.12-13】Exhibition「CHAIN REACTIONS: Hiroshima, U.S. Universities, and the Future of Peace Education」を開催しました。

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」の協力のもと,2026年2月12日(木)および13日(金),ハーバード大学 Tozzer Anthropology Atriumにおいて,Exhibition“CHAIN REACTIONS: Hiroshima, U.S. Universities, and the Future of Peace Education“が開催されました。本展示は,ハーバード大学文化人類学部およびReischauer Institute of Japanese Studiesとの連携のもとで、実施されたものです。
本展示は,戦後,原爆投下から立ち上がった広島大学が世界各地の大学から書籍や樹木の寄贈を受け再建されたという歴史を踏まえ,広島と米国の大学間のつながりを再確認し,平和教育の意義とその未来を問い直すことを目的として企画されました。
展示では,参加者との交流を行うための対話空間になるように重視され、広島の元安川河床から学生が回収した被爆瓦を中心に据え,写真資料や調査結果とともに提示しました。来館者は瓦を囲みながら対話を行い,「平和とは何か」「平和教育は何を目指すのか」という問いについて,立場や文化背景を越えて意見を交わしました。
本プロジェクトは、森本涼氏(元プリンストン大学、現ハーバード大学)の呼びかけにより開始されました。プリンストン大学の学生に加えて、広島大学・東京大学の学生計7名が参加し、企画立案、事前調査、展示制作、当日の対話運営に至るまで主体的に関与しました。
展示構成および空間デザインには、広島出身のアーティスト菊田真奈氏が参画しました。企画・調査では、広島大学より池尻良平准教授、川口広美准教授、嘉陽礼文研究員が協力しました。
以下に,参加した広島大学の学生の振り返りを掲載いたします。
【学生の感想】
このプロジェクトを通して、「戦争と現在の課題、それらをどう伝えるべきか」や「平和のために必要なこと」について真逆に聞こえる意見や、思いもよらない方向からの意見に出会った。その中で、自分と違う意見が興味深い時、怖いと感じるとき、逆に相手に上手く自分の意見が伝わらなくて悔しく感じるときもあった。一人一人自分と同じように、しかし自分とは違う考えや行動の意図を持つ人間であるということを認識し、お互いに思っていることを受け止めあえる場を設けることが、今回の場面だけでなくお互いを尊重しあえる平和な世界を作るためにも大切なのではないかと思った。
過去にあった争いや、それに伴う人々の悲しみから学ぶ平和教育も大切にしながら、他者と信頼関係を作り、お互いの幸せを尊重しながら生きられる社会をつくる人格の形成という方面からの平和教育の方法をもっと調べてみたい。
また、今回多くの人に協力していただいて集めたデータを改めて分析、考察して、他の発見をしたいと思った。
(教育学部・初等教育教員養成コース・福原優果)
私は、このプロジェクトにおいて、「多様な人々がいる社会が平和に向かっていく中で、共通認識、合意を持つ所とそれぞれの考え方を受け入れる所との境目」ということについて主に考えが深まりました。原爆瓦を展示している中で、言葉を介さなくても何かが伝わっている様子があり、原爆瓦の持つ力の強さを感じると同時に、それぞれがもつ思いを深める、また新たな気づきを得られることができる機能についても感じられました。平和という抽象的にも感じられる概念が共通認識としてある中で、それぞれそのために何を思うかは自由に存在して良いと思いました。
これから実際に教員になるにあたって、その視点を活かした指導、物がもつ力を活かした、誰にでも伝わる教育ということを考えて実践していきたいです。
(教育学部・特別支援教育教員養成コース・澤田優里)
来館者の語りと日米両国の教科書との類似性から、教育がナラティブ形成に及ぼす影響の大きさを実感した。それは平和を方向づける可能性であると同時に、制度的に共有された特定の歴史観を再生産しうる側面も持つ。また、来館者と言葉を交わす中で、積極的な発話によってのみ意見の存在が承認されるアメリカのコミュニケーション様式に触れた。その経験から、展示を単に研究成果を提示する場としてではなく、相互作用の中で問いを深める場として捉える必要性があると感じた。今後は、自らの考えを主体的に言語化し発信しながら、教育と平和の関係を問い続けていきたい。
(教育学部・第五類 教育学系コース・東 美佑)
今回の展示では、国や地域ごとの平和教育に関する比較調査の結果を発表しました。ハーバード大学の学生や教授との対話を通して、平和教育というテーマは想像以上に複雑で唯一の正解が存在しない課題であることを痛感しました。平和教育は各地、各国の文化や政治的背景に大きく左右されるため、教育内容は地域ごとに異なり、当初目指していた「全員が納得する教育方法」を見つけることは現実的ではないのではないかという考えへと変化しました。そこで、多角的な視点から物事を捉え、差異そのものを理解する姿勢が重要であると考えるようになりました。
今後は、平和教育が世界の中でどのような意味を持ち続けていくのかについて、より具体的な角度から理解を深めていきたいと思っています。展示期間中には、実際の世界で平和教育がどのように機能しているのかについて、ハーバード大学の教授からさまざまなご指摘をいただきました。これらの意見を踏まえ、平和教育が現在どのような立ち位置にあり、今後どのような役割を果たすべきなのかについて、引き続き調査を重ねていきたいと考えています。
(教育学部・初等教育教員養成コース・北薗いろは)
また,本プロジェクトは,広島大学の嘉陽礼文研究員による,広島大学とプリンストン大学の交流史や原爆瓦の解説,展示会までの複数回のフィールドワークなど,様々な学習機会を提供いただいて実現できました。この場で感謝申し上げます。
本展示会、及び準備を通して学生にとっても貴重な学修機会となったようです。参加学生の振り返りからは,平和教育に関する多層的な学びが確認されました。
今後ともEVRIとして,本プロジェクトは,大学間国際連携のもとで展開される平和教育研究の実践について検討してまいりたいと思います。





