東広島市地域交流型広域ネットワーク学習の取組みを報告します【のんバス】(2021.06.18/25)
2021年7月16日
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)(センター長:草原和博)は,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を実施します。子どもの一人一端末と学校のICT機器を活用しながら,また地域からの中継を交えて,対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。なお,授業の参考コンテンツとして,EVRIが東広島市立図書館の依頼を受けて開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ(通称「のん太の学び場」)」を活用します。(「のん太の学び場」の作成についてはコチラ)
本年度は,2021年6月の試行に基づいて,毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり,交流したりしながら学びを深めることができます。
〇 遠隔授業の全体進行は,大学の担当者が行う。各教室での指導は,各学級の担任等が行う。
〇 遠隔授業では、児童が自分のタブレットから参加できる機会を設ける。
〇 参加校に技術的なサポート要員(大学院生等)を派遣し 授業準備 授業支援 後片付け等を行う。
- 授業実施者:草原和博
- 授業補助者:各小学校での授業担当教員
- 芸陽バスから中継担当:草原和博、大坂遊
- のんバスと東広島市から中継担当:小栗優貴、川上由美
- 学校技術支援担当:池田優子、今井祐介、宇ノ木啓太、川本吉太郎、正出七瀬、吉田純太郎
- 事務局機器担当:守谷富士彦
第1週目は,「のんバス」と民間の路線バスと比較することで,違いを見出すとともに,コミュニティバスの運行に関して「問い」を発見し,解決することを目標としました。
1時間目は,芸陽バスの西条車庫から通常の「路線バス」と「のんバス」のようすを中継で観察しました。それぞれのバスの大きさや行き先・ルート,時刻・運賃設定,乗降口の数などを比較し,のんバスの役割を「公共性」の視点から分析していきました。また乗車証明書を持参して西条駅前のお菓子屋さんで買い物して,割引券をもらう様子を中継しました。買い物や通院・通学だけでなく,地域の活性化にも貢献しようとするコミュニティバスの役割を学びました。
2時間目は,1時間目に学んだ「のんバス」の基本情報を振り返るとともに,運賃収入だけでは維持できず補助金をえて運行している状況を知りました。児童には,のんバスの「なぜ・どうして」をたくさん出してみよう!と指示したところ,「なぜ赤字なのに走らせるのか」「なぜ西条にしか走っていないのか(私たちのまちにはないのか)」などたくさんの疑問が寄せられました(「赤字のバスを走らせるべきか」をめぐって一人ひとりが意見表明もしました)。これらの問いに対して,専門家の市役所やバス会社の担当者が真剣に答えていきました。
一連の課題発見・課題解決を通してコミュニティバスの社会的意義を探究するとともに,西条以外の土地に走るコミュニティバスについても調べてみたいという意欲が高まりました。
2021年6月期第1次第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年6月期第1次第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
- 授業実施者:草原和博
- 授業補助者:各小学校での授業担当教員
- 市役所から中継担当:草原和博、大坂遊
- 海風バスから中継担当:小栗優貴
- 広島大学から中継担当:川上由美
- 学校技術支援担当:池田優子、今井祐介、宇ノ木啓太、河原洸亮、川本吉太郎、吉田純太郎
- 事務局機器担当:守谷富士彦
第2週目は,コミュニティバス運行にともなう「お悩み」を見出し,それの解決策を構想することを目標としました。
1時間目は,参加校が,西条の「のんバス」とともに,豊栄の「そよかぜ号」,河内の「あゆピチふれあい号」,安芸津の「海風バス」の運行時刻や利用状況等について調べ発表しました。これらの地方のコミュニティバスは便数が少なく,あまり知られてもいないことが確認されました。途中「海風バス」の車内から中継をはさみ,乗客の数や乗車区間,乗車目的等についてリポートを受けました。参加した児童は,運転手さんにオンラインで直接質問する機会も得ました。
2時間目は,これらのコミュニティバスのお悩みを出し合いました。どのバスにも共通するお悩みとして「赤字が多いこと」「利用者が少ないこと」が挙げられました。参加した児童は,これらのお悩みの解決策を議論し,提案しました。参加した各校の児童は,これらのコミュニティバスがほとんど知られていない事実に気づき,もっと広く知られるように看板やチラシを作るべきではないかと認知度を上げる方略を提案しました。市役所の担当者も現実的で効果的な提案にたじたじでした。最後に広島大学を走っている自動運転の小型電動バスの様子を観察し,未来のバスの姿にイメージを膨らませました。
2週間の学習を通して,「身近にありながらよく知らない」バスの存在について,参加校5校が互いに理解し交流し合うことで,公共サービスを担うコミュニティバスの機能と課題,そしてその解決策について認識を深めることができました。
2021年6月期第2次第1時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
2021年6月期第2次第2時間目 ▶︎YouTubeはこちらをクリック
「5小参加 広域交流型授業 東広島 中継で地域のバス学ぶ」
2021年6月23日(水)の中国新聞朝刊(24ページ)教育長官特集にて、草原和博教授の授業実践記事が掲載されました。「中国新聞PLUS日経テレコン21」会員の方はログインして内容をご確認頂くことができます。また、広島大学の図書館のPCもしくは学内サーバーから広島大学図書館のデータベースページを経由して「中国新聞PLUS日経テレコン21」にアクセスすることで、どなたでも無料で記事を閲覧することができます。
「見学の代わりに大学生が中継 東広島市5つの小学校オンラインで一緒に地域学習」
*紙面のウェブサイトへの転載申請を行い、The weekly PressNetの許諾を2021年7月1日に得ました。(2021年7月6日掲載)
EVRIは,引き続きICTを活用した新しい地域学習のヴィジョンを提案し,それを教育関係機関と連携しながら企画・実施してまいります。
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