カンボジア社会科教科書開発に関する本邦研修を行いました(2019年7月)
広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、ひろしま平和貢献ネットワーク協議会(提案自治体:広島県)が受託したJICA草の根技術協力事業「カンボジアにおける持続可能な社会構築のための社会科カリキュラム・教科書開発支援」に、専門家として協力しています。(詳細は、特設ページをご一読ください。下記バナーをクリックしてください。)
本年度も、カンボジア王国教育省カリキュラム開発局から6名が来日し、東京と広島でカリキュラム・教科書開発マニュアル作成に関わる研修を実施しました。本年度は、カンボジアの教育専門家が社会科のカリキュラム・教科書を自主的自立的に開発できるようになるために、研修成果を次世代に継承するマニュアルを作成し、その支援をしております。
研修名:2019年度「カンボジアにおける持続可能な社会構築のための社会科カリキュラム・教科書開発支援」本邦研修
活動日時:2019年7月4日(木)~7月16日(火)
活動従事者:草原和博、桑山尚司、大坂遊、守谷富士彦
研修全体目標:「マニュアル開発の理論を学び,アクションプランをつくる」
(1)マニュアル開発のデザイン原則(目的やフォーマット)をつくる
(2)マニュアルの章立て・目次,および各章の具体的な内容と構成をつくる
(3)今後のアクション・プラン(いつ,何を,誰がつくるのか)をつくる
(4)普及に向けた,指導書のデザインやアイデアをつくる
【前半】東京で研修を実施
前半の東京研修では、国家カリキュラムの開発プロセスや、教科書検定制度の機能、教科書会社の役割について、これらの業務に携わった経験を持つ方々から学びました。
7月4日の玉川大学では、まず樋口雅夫先生から、指導要領の作成に携わったご経験をもとに、「日本における国家カリキュラムはどのように作成されるのか」をお話しいただきました。また、同大学の宮本英征先生には、「研究開発指定を受けた学校では、どのように先進的なカリキュラムを開発し、それを指導要領に反映させていくのか」について、ご説明いただきました。
7月5日には教科書会社である東京書籍株式会社を訪問し、和田編集長らに「教科書会社は学習指導要領の改訂にどのように対応しているのか」について講義いただきました。また、教科書の編集作業で使用している機器やソフトも見せていただきました。その後、公益財団法人教科書研究センターを訪問し、教科書検定の制度や手続きを解説いただくとともに、教科書図書館で世界各国の教科書を閲覧しました。研修員はカンボジアの古い教科書を手にとり、出版を懐かしんだり、職員に内容を紹介したりしていました。
【後半】広島で研修を実施
後半の広島研修では、カリキュラムの開発・普及に関わる地方行政(教育委員会)や研究開発指定校の役割を学んだ上で、マニュアルの編集方針や完成に向けたアクションプラン、そしてカリキュラムや教科書の普及に向けた仕組みを提案しました。
7月9日には、広島大学附属小学校を訪問し、研究的な取り組みを行う学校現場を視察しました。服部太先生(社会科)の授業を観察と協議では、膨大な教材研究をもとに授業が実践されていることを聞いて研修生は驚いていました。午後には広島県立教育センターを訪問し、迫有香指導主事・徳本光哉指導主事に新カリキュラムを普及する主体としての教育センターや指導主事の役割についての講義を受けました。また、カリキュラム普及のために必要な教育制度のアイデアを出すワークショップも行いました。
研修期間中はこの他にも、広島大学の川口広美先生や、専門家の草原・大坂から、カリキュラムの開発・普及に関わる様々な情報提供が行われました。これらをふまえて、研修後半の演習では、研修員はマニュアルの編集方針づくりに意欲的に取り組みました。
また、広島大学(国際交流担当)副学長の丸山恭司教授や、広島大学大学院教育学研究科長の小山正孝教授を表敬訪問しました。
【演習】マニュアル開発とアクションプラン作成・最終プレゼンテーションで発表
11の研修を通して学んだ後は、マニュアル開発の演習をしました。マニュアルは5章構成とし、この本邦研修では「まえがき」「2章カリキュラムづくり編」「3章教科書づくり編」の3つについて開発を進めました。7月15日と16日には、研修のまとめとしてマニュアルのアウトラインとマニュアルの作成・普及に向けたアクションプランをプレゼンテーションしました。今後は、本邦研修の方針をもとに12月のマニュアル完成を目指します。
【動画】研修生の感想
研修を終えた研修員から感想をお話しいただきました。項目として、「1. 2週間の研修で学んだこと」「2. 帰国して生かしたいこと」の2つを話して頂きました。
Mr. Khim Sarin
カンボジア教育・青年・スポーツ省、カリキュラム開発局副局長のケム・サリンと申します。私はこの2週間の研修で、様々な知識を習得できました。そして、今までのカリキュラム開発局での経験を振り返ると、カリキュラムの3類型である「コンテンツベースカリキュラム」「コンセプトベースカリキュラム」「イシューベースカリキュラム」について、より深く理解することができました。
また教科書開発に関しては、日本の専門家の先生方からの講義を受けて、4つの要素をとても理解できました。深く感謝申し上げます。
Mr. Bun Serey
こんにちは。プノンペン王立大学社会・人文学部副学部長のブン・スレイと申します。研修に参加するため、広島に参りました。
まず、私は本研修のプログラムに興味が湧きました。本研修は、カリキュラムや教科書開発のマニュアル作りに関するもので、非常によいプログラムでした。日本の有名な教科書開発会社や教科書研究センターへの訪問もあり、とても興味深かったです。私にとって、とてもよいプログラムでした。
本研修で習得した知識は、カンボジアに戻ってからカリキュラム開発についてもう一度整理し、マニュアルとして取りまとめるのに活かしていこうと思います。最後に、私に本研修の機会を与えくださったJICA と広島平和貢献プロジェクトに感謝を申し上げます。ありがとうございました。
Mr. Muong Sophat
私は、カリキュラム開発局社会科副部長のムオン・ソパートと申します。
まず、広島の研修を通してカリキュラムや教科書の構造について、明確に理解することができました。私の国カンボジアでも、それらの構造を活用することが出来ます。そして、私に今回の研修機会を与えて下さったJICAと広島プロジェクトに感謝を申し上げます。
Mr. Meas Chutema
こんにちは。私は、カリキュラム開発局社会科副部長のミアス・チュテマと申します。
私はこの14日間の研修で、日本ではどのようにカリキュラムを開発しているのかに関心を持ちました。日本のカリキュラム開発は、明確な目標をもち、体系的に行っていました。教科書開発・出版は民間会社が担当していました。また、学校現場では、各単元のパイロット調査を積極的に行っていました。他にも、教科書研究センターがあったり、様々な工夫を各単元に取り入れたりしていました。全て興味深かったです。
一方で、14日間の研修で学んだことは3つです。1つ目に、世界の教科書はA・B・C単元形式という3種類の傾向があります。それぞれの形式は異なり、子ども中心に学習を推進しています。2つ目に、各単元には目標、リソース、テキスト、アクティビティの4つ要素が入っています。3つ目に、教科書には事実的・説明的・価値的の3つの知識を取り入れることを勉強しました。そして研修の最終日には、教科書をどのように開発すればよいかのマニュアルを開発できました。
ありがとうございました。
Mr. Eng Vath
こんにちは。私は、教育・青年・スポーツ省、カリキュラム開発局社会科副部長のエン・ヴァットと申します。
本日、私は、広島でのカリキュラム・教科書開発マニュアルをテーマとする短期研修に15日間参加できたことを嬉しく思います。このテーマは、私たちにとってとても重要だと思います。マニュアルを開発することはとても妥当であり、教育省もカリキュラムの開発に関する指導を求めています。
15日間で習得したことは、次の2点です。1つ目は、各教育セクターや民間機関による教科書開発についてです。2つ目は、カリキュラムやマニュアル開発についてです。草原先生や大坂先生らがマニュアル作りに関することを私たちに研修してくださいました。
さらに、私はタイラー氏など世界的な理論にしたがって、3種類のカリキュラム開発方法、コンテンツベース・コンセプトベース・イシューベースを理解しました。それらの仕組みを参考にしながら、カンボジア文脈に対応したカリキュラム開発を検討していきます。
最後に、私がカリキュラム・教科書開発の理論をより理解するために、専門の先生方に研修して頂いたことに感謝申し上げます。
Ms. Thor Theary
私は、カリキュラム開発局社会科部職員のトー・ティアリーと申します。
14日間の研修の感想として、私はカリキュラム・教科書開発及び教科書のフォーマットに関する様々な知識を習得できました。プロジェクトマネジャーの桑山先生やEVRIチームによる講義・説明に感謝申し上げます。
今回の研修で、教科書開発・出版に必要な様々なフレームワークの知識を習得できました。3年間プロジェクトで学んだのは、4つの要素と3つの知識を取り入れる教科書、3種類のカリキュラム、カリキュラムと教科書の関係、などです。最後に、先生方、EVRI、JICAによりこの研修の機会をカンボジアカリキュラム開発局社会科部に与えて下さったことに感謝申し上げます。
EVRIは引き続き関係機関と連携しながら、本事業の支援を続けて参ります。
【詳細】は活動報告書(HUGLI Letter)をご覧ください。(クリックするとPDFファイルが開きます)
【HUGLI Letter No.46】
(クリックするとPDFが開きます)
【HUGLI Letter No.47】
(クリックするとPDFが開きます)
教育学研究科HPにも掲載されております。(※準備中)
社会認識教育学講座HPにも掲載されております。(※準備中)