【2020.11.6】第57回定例セミナー 「教科教育を謳う1:言語」を開催しました
Ⅰ.開催報告
2020年11月6日(金),定例オンラインセミナー講演会No.57を開催しました。大学院生や学校教員など32名の皆様にご参加いただきました。
「能力ベイスの教育課程」という言い方に象徴的なように,情報技術の発展などによって知識や技能の性格がかわってきている現代社会において,学校での学びや教科教育の在り方は常に変革を求められます。セミナー「教科教育を謳う」では,教科教育研究の成果の一つである現代的なカリキュラム開発の糸口を見出すことを目的として,多彩な学的背景を持つ研究者らによって教科教育について語り合います。第一回は「言語」がテーマであり,学問・教科で使われる言語と,日常のコミュニケーションで使われる言語との違いに注目しました。
同セミナーはオンライン開催であり,まず主催である影山和也教授(数学教育者)よりテーマや問題意識がプレゼンテーションされました。簡単な教科教育の歴史を振り返った後,学校での学びとは教科に特有の言語と,学習者による日常で使われる言語との狭間で起こりうることが主張されました。すなわち,前者には厳格さ・厳密さが求められ,後者には文脈や相手に応じたわかりやすさが尊重されるのですが,たとえば数学での簡潔・明瞭・的確という規準は必ずしも分かりやすさにはつながらないところに,日常や社会とはまた異なった世界を知る動機があると考えられます。
以上のことをめぐって研究者間ならびに参会者とで語り合うために,中学校数学科授業の動画クリップを視聴しました。これは,図形の作図をテーマとしたもので,作図の手順を記述する活動が仕組まれたものです。学習者による記述は当初,コンパスや定規のような道具の使い方を含んでいたり,その場にいる者にしか分からない言い回しが使われていましたが,記述が冗長であったり,数学ならではの表現になるように工夫しようとすることから,学習者によって自然に記述の見直しがなされました。
クリップの視聴後,関係者間トークのセッションでは,日本語教育・英語教育の研究者を交えて,数学科での記述を厳密にすることの目的と意義,わかりやすさと言語の規準との関係,学習者らはなぜ記述を洗練させようとしたのか,そして学ぶことの多様さについて話し合われました。言語の規準は領域の固有性につながるものであり,文脈に応じて使い方を変えることは学びの成果でありうることから,その都度に作り上げられるカリキュラム開発の視点として認められました。セミナーの中盤以降は,参加者方々からの質問や意見,感想がチャットを通じて寄せられ,オンライン配信となった関係者間トークはそれぞれにとって有用な機会であったと思われました。
今後の本セミナーは,「表記」「インクルーション」がテーマになります。あらかじめ落としどころが定められないがために,互いのトークを通してしか出てこないものが現代にいわれる学びの成果といえるでしょう。このあたりのリアルタイムのコミュニケーションの有様をカリキュラム開発の視点として導くべく,進められることになります。
セミナー後も盛り上がっていました
Ⅱ.アンケートにご協力ください
多くの皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました
ご参加の方は、事後アンケート(アンケートはこちらをクリックしてください)への回答にご協力ください。
*第57回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。
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