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【2019.5.30】第22回定例セミナー「新しい教育実践研究を語り合おうー『J .ロックランに学ぶ教師教育とセルフスタディ:教師を教育する人のために』読書会ー」を開催しました

公開日:2019年06月13日 カテゴリー:開催報告

[第22回定例セミナー:集合写真]

 

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、教育の専門家ユニットの教育学研究者クラスタと教師教育者クラスタに関連し、2019年5月30日(木)に第22回定例セミナー「新しい教師教育実践研究を語り合おう-『J.ロックランに学ぶ教師教育とセルフスタディ:教師を教育する人のために』読書会-」を開催しました。

本セミナーは、第20回定例セミナーアイスランドの教師教育とセルフスタディ」(6月4日)の開催に先立ち、そもそもセルフスタディとは何なのか、教師教育にとってのセルフスタデイをどのように考えればよいのか、といった点について分担翻訳を行った本学の4名の先生を交えて語り合い、理解を深めることを目的として、EVRIでの初めての読書会として開催されました。

 

読書会
『J. ロックランに学ぶ教師教育とセルフスタディ:教師を教育する人のために』

【分担翻訳者】
川口 広美(社会認識教育学講座)
草原 和博(社会認識教育学講座)
渡邉 巧(初等カリキュラム開発講座)
岡村 美由規(教育人間科学専攻・博士課程後期)

 

Ⅰ.趣旨及び読書会の方法の説明:川口広美 准教授


まずはじめに、主催者の川口先生より本セミナーの目的及び本書の説明がありました。
【目的について…】
本書には、近年注目されている「セルフスタディ」という研究方法論(メソドロジー)についてのエッセンスがこめられており、6月にセルフスタディに関する大きなイベントの開催に向けて、我々としてもできるかぎりこの概念の重要性を共有したいと考えて、広島大学で急きょ読書会を開催することにしたとの説明がありました。また、今回の読書会を通して、これまでの教師教育研究のあり方を振り返り、これからのあり方を考え、教師教育研究に関心ある方のコミュニティつくりのきっかけにしたいという主催者らのねらいを述べられました。

【本書について…】
本書の趣旨を理解してもらうために、監修者である武蔵大学・武田信子先生による『まえがき』の説明がありました。ここには、『従来の教師教育に対して,海外で数十年もかかってなされた問題提起がこの一冊に詰まっている。国際的に教師教育をリードしてきたジョン・ロックランの業績を日本の文脈に合わせた解説をつけたうえで、できるだけわかりやすく紹介し、日本の教師教育の現状とここに書かれたことを比較しつつ考えることができるように試みた。』『しかし、腑に落ちないと思われる部分もこれから議論しなければならないと思われる部分もあるに違いない。良かれ悪しかれ教師教育に対する議論が起き,変化がおき、学校教育が変わることを何よりも優先して本書を出版する。』と書かれていることを説明されました。

次に、本読書会のスタイルである「Active Book Dialogue(ABD)」の紹介がありました。
ADBとは、1冊の本を分割して全員で分担して読み込んで共有するというスタイルの読書会であり、以下のように展開します。
・担当した本の一部を読み込んで、要約して紙にまとめる
・壁に貼り出して、本の流れに沿って順にプレゼンする
・本全体について、気になったところや感想や意見を交わ
※ABDについては、https://heart-quake.com/article.php?p=3420 を参照して下さい。

 

Ⅱ.読書会


本読書会は、(1)同じグループの人どうしで簡単な自己紹介、(2)練習のためのABD:本書「序」をみんなで読む、(3) ペアで担当する箇所の要約づくり、(4)要約を壁に貼り出し、みんなで閲覧し、付箋でフィードバック、(5)各パートごとに発表、(6)残り時間で疑問点や感想などを話し合う、の順番で進められました。

(1)同じグループの人どうしで簡単な自己紹介
まず、グループ内での自己紹介では、所属や名前だけでなく、どのような経緯で読書会に参加しようと思ったのか、教師教育やセルフスタディに関してどのようなイメージを持っているのか、といった話題で交流が行われました。

(2)練習のためのABD:本書「序」をみんなで読む
次に、問題意識と本書の趣旨を理解してもらうため、みんなで「序:本書を読み進める前に」を読む時間となりました。読書会の進め方を理解してもらう意味もあります。翻訳者の問題意識は…。本書が問題意識にどう答えるのか…。何に気をつけて読んでほしいと言っているか…。これらの点を意識して、各自で内容をA4の紙に自由にまとめていきます。そして、グループ内で自分なりにまとめた成果の共有しました。同じものを読んだのに、まとめた内容や感じとったことが違うことを確認し、新たな気づきを得ることができました。

(3) ペアで担当する箇所の要約づくり、(4)要約を壁に貼り出し,みんなで閲覧し,付箋でフィードバック
いよいよ本番です。今回は、第1章「教えることを教えるとは」と第4章「教師教育者になる」を分担して読んでまとめていくことになりました。本をしっかりと読み込み、内容を咀嚼し、わかりやすく紙にまとめるのは簡単なことではないようで、当初は30分程度でまとめる予定でしたが、結局まとめ終えるのに1時間以上かかりました。しかし、みなさん集中力を切らすことなく、真剣に取り組んでいました。大学院生と教員、留学生と日本人学生などのペアも多く作られ、初対面の人同士でも積極的に対話を進めていました
 内容をまとめ終えると、今度はボードに成果を貼り出していきます。どのように貼り出すか、どのように発表するかについても打ち合わせが行われました。貼り方にも工夫をこらそうとする方も多くいらっしゃいました。

(5)各パートごとに発表、(6)残り時間で疑問点や感想などを話し合う
残り時間で担当した章・節について発表し合いました。本当は全員でぐるぐるとポスターを見て回るツアーを実施したかったそうですが、時間の都合でできませんでした。かわりに、1章担当組と4章担当組に分かれて発表をし、自分たちが担当していた章全体がどのような趣旨で書かれていたのかを理解するという形で共有することになりました。
章全体の趣旨を理解した上で、ディスカッションをしながらロックランの主張を読み解きました。具体的には「教えること」と「教えることを教えること」の違い、教師教育者の専門性はいかにして成長するか、効果的なセルフスタディのあり方などについて、活発に意見を交わしました。

最後に、草原先生に本読書会のまとめをいただきました。
「今日は20人もの人に集まって頂き、セルフスタディについてともに学び・議論する場ができた。このような試みは日本でもまだ全くといってよいほど行われていないだろう。セルフスタディの概念とその重要性を感じ、日本に取り入れようとしてきた立場として、このような読書会を広島で実施できたことは大変感慨深い。私の願望は、広島大学が日本のセルフスタディ研究・実践の拠点になること。そのために、今日ここに集まってくださった皆さんは、セルフスタディを理解し、実践する第一人者となるかもしれない。ぜひ10年後や20年後、セルフスタディ研究が成熟した時、このコミュニティのメンバーが研究の中核となっていくことを期待したい。今後、できればEVRIの部屋に月一回くらいのペースで集まって、日々の教師教育実践の“もやもや”を共有できる(セルフスタディができる)場を作りたい。ここには大学教員、附属学校教員、指導主事、大学院生、学部生といったいろんな人たちがいるが、みんな教師教育者としてのアイデンティティを持ち(あるいはこれから持ち)、悩んでいる人だろう。また呼びかけるので、ぜひ集まって欲しい。」

 

こうして、予想を超える大勢の方に参加していただいた本読書会は終了いたしました。この読書会が広島大学の、日本のセルフスタディの発展に、そして教師教育、教育の発展につながることを期待します。


今後ともEVRIは、関連するユニット・クラスタの発展に取り組んで行きます。

詳細はレターをご覧ください。
【EVRIレターNo.52】

EVRI Letter no.52.pptx(mac)のサムネイル


教育学研究科HPにも掲載されています。


*第22回定例セミナーの告知ポスターはコチラです。

20190530のサムネイル

告知HPはコチラ!

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