カンボジア教育省で社会科教科書開発に関する研修を行いました
広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,ひろしま平和貢献ネットワーク協議会が受託したJICA草の根技術協力事業「カンボジアにおける持続可能な社会構築のための社会科カリキュラム・教科書開発支援」に,専門家の派遣で協力しています。9月17-19日には,拠点リーダーの草原,EVRIメンバーの桑山,教育研究推進員の守谷が,教育省の会議室で現地研修を実施しました。今回の目的は,6月本邦研修で学んだ教科書づくりの理論をカリキュラム開発局のスタッフで共有するとともに,当初考案した教科書デザイン原則をカンボジアの文脈に合わせて見直すことです。
9月17日-19日に教育省大会議室にて研修を実施
9月17日は「ヒロシマ型・新しい教科書のデザインを知ろう,学ぼう」と題し,本邦研修(6月実施)の経験者が,自分たちで制作した教科書モデル(「カンボジア経済」「民主カンプチア時代」など)を,自らが講師役になって現地スタッフに解説しました。午後には,新規に制作した教科書モデル(「民主主義の認識」や「失業と勤務」など)が提案されました。
9月18日は「デザイン原則をカンボジアの文脈で見直そう」と題し,前日に提案されたデザイン原則(レイアウト案)について協議するワークショップを開催しました。夕方までに修正版のデザイン原則が提起されました。
9月19日は,国語・数学・理科などの他教科のスタッフと学びを共有し,教科横断的にデザイン原則を協議しました。専門家より,教科書のデザインは期待する授業の目標・内容・方法と連動すること,そして子どもにとって学びやすく,教師にとって使いやすいレイアウトを追究してほしいとの助言がありました。白熱した議論の結果,多くの基本的なコンセプトが共有され,社会科と他教科が協力して教科書の改革に取り組む体制ができました。
今後は,広島県教育委員会の指導主事と協力して,教科書モデルの有効性の検証と,授業づくりの研究を進めて参ります。
教科書の内容と印刷に関わる関係機関との打ち合わせ会議を実施
9月20日は,Publishing and Distribution House(印刷配給所,PDH)を訪問しました。PDHは半官半民の出版会社であり,教育省の方針と予算に基づいて国定教科書を作成しています。PDHの局長,前局長,副局長と会議を行い,本機関の組織構成や教科書執筆者との連携について聞き取りを行うとともに,印刷所の見学や今後の協力依頼を行いました。なお,PDHは編集局とレイアウト局で構成されますが,これらの組織に教育の専門家は正規スタッフとしては参画していません。そこでPDHのスタッフにも研修への参加を呼びかけ,新しい教科書モデルを共同で調査・研究していくことを確認しました。
9月21日は,資料収集とトゥールスレン虐殺博物館館長への聞き取り調査を行いました。資料収集では,カンボジアで過去に出版された教科書を系統的に収集し,過去の改訂の経緯をたどることができました。聞き取り調査では,平和に対する思いや,虐殺に関する歴史叙述や社会科見学との連携のあり方についてお話を伺うことができました。
今後とも関連機関と協力をしながら,教科書の開発支援を進めて参ります。
EVRIは、今後も社会科教科書の改善を支援してまいります。
【詳細】は活動報告書をご覧ください。(クリックするとPDFファイルが開きます)
【HUGLIレター(成果報告書)】
教育学研究科HPにも掲載されております。